No.113976

ポインセチア

星 倫吾さん

アイドルマスター、四条貴音のクリスマスSS。Pの営業周りに随伴する貴音に、Pからプレゼントが……?

ちなみに本作品は、貴音はIUで雪歩に負けて、961プロから765プロに移籍した……という設定です。

2009-12-24 01:13:57 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1821   閲覧ユーザー数:1784

「また一つ、雪歩殿のお仕事が決まりましたね。さすがプロデューサー殿です」

「イヤ、9割方決まっていたような仕事だし、今日はスケジュールの調整みたいなもんだ」

「でも、雪歩殿ほどの人気であれば、仕事が向こうからやってきて、

 むしろこちらが選り好み出来る立場ですのに、こちらから出向くなんてと、

 当初は思っていたのですが……」

「雪歩がデビューして間もない無名な頃からお世話になっているクライアントだし、

 時間が許す限り会って顔を繋いでおかないと。雪歩だけじゃなく、765プロとしてな」

「765プロとして……」

「そう。そして今日わざわざ貴音を連れてきたのもね。何故だと思う?」

「何故とおしゃられても……私はただ、プロデューサー殿が私に随伴を所望されたゆえ……」

「俺としては、向こうに貴音の顔も覚えてもらいたいワケよ。

 961プロじゃなく、765プロの『四条貴音』をね。

 本格的なデビューまで至らないのは、俺の不徳の致すところだがな……」

「左様ですか……」

 

アイドル・アルティメイト決勝で雪歩に負け、961プロを放逐された貴音は、

高木社長の温情によってなのか、765プロ預りとなった。

雪歩と同時期にデビューし、「銀色の王女」と言わしめた圧倒的な存在感は、

今でも衰えておらず、再デビューするに申し分ない。

 

「でも私はまだ答えを見つけておりません、あなた様に言われた……くしゅん!」

「あぁ、スマン。いつまでも外にいないで、早くクルマに戻ろう」

 

貴音にとってアイドル活動をする意義とは?

亡き故国を再建するため?

民に自分の存在を知らしめて勇気づけるため?

じゃあ、貴音自身はどうなんだ?

使命や義務、自己犠牲で歌っているのかい?

 

「しかし、次の仕事が買い出しなんて……貴音、スマンな。荷物持ちなんてさせて。

 立場逆だろ、常識で考えて。事務員に携帯一本でパシリに使われるプロデューサーなんて」

「良いではありませんか。プロデューサー殿の人徳の為せる技です。

 信用がおけない者に用事など頼みはしないでしょう……」

「事務所のクリスマスパーティーの買い出しが、か?」

「えぇ。皆が楽しめる楽しき時を提供するのが、プロデューサー殿の務めゆえ」

「なるほど……モノは言い様だな。

 俺がアイドルをプロデュースするのも、ファンのみんなに楽しんで欲しいから、だし。

 ところで貴音、上着なしで寒くないか?」

「えぇ、今は、店内の暖房が効いていますので、外よりは」

「そうか……ちょっと待ってろ」

プロデューサーは貴音に荷物を預けて、姿を消した。

 

10分ほど経ち、プロデューサーは貴音の元へ戻ってきた。

「待たせたな。貴音へ、メリークリスマス!」

「めりぃ……?」

「ちょっと屈んでもらっていいかな?」

「こう、ですか……?」

貴音の肩に掛けられたのは、緑色のストールとえんじ色のバンダナ。

2枚重ねると……丁度緑地に赤のクリスマスカラー。

「さっき通りがかりに見つけてね。えんじ色のストールもあったんだけど、クリスマスだしね。

 これで少しは寒さがしのげるだろ? それともラーメンでもおごった方が良かったか?」

「いいえ、ありがたき幸せ……。あなた様はいけず、です……」

貴音の胸の奥底が、小さく痛んだ。


 
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