No.1138548 英雄伝説~黎の陽だまりと終焉を超えし英雄達~soranoさん 2024-02-12 20:43:04 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:630 閲覧ユーザー数:567 |
その後フェリを連れたヴァンとアニエスは事務所で詳しい話を聞き始めた。
~アークライド解決事務所~
「”クルガ戦士団”……そういった方々がいるんですね。東のイシュガル山脈の南方―――大陸中東部の北側でしょうか?」
フェリの出身を聞いたアニエスは興味ありげな様子でフェリに確認した。
「はい、わたしたちクルガの民は”焔”と”翼の女神(アルージャ)”を奉じています。山岳地にある里で暮らしていて、”戦士”として戦うのが習わしなんです。」
「ま、部族ぐるみでやっている、大陸中東部を代表する高位猟兵団だ。ただ誇りと伝統を重んじていて、汚れ仕事は受けないことでも知られる。――――――つってもこんな子供を戦わせてるってのはどうかとは思うが。」
フェリの説明を捕捉したヴァンは若干呆れた様子でフェリに視線を向けた。
「えへへ……そんな。わたしなんかまだまだ半人前で。早くお父さん(アブ)たちみたいな一人前の戦士になりたいんですけど。」
(ピュアかよ……)
「(あはは……でも凄く素直な子みたいですね。)それで、フェリちゃんはクルガとは別の猟兵団――――――”アイゼンシルト”の人達を捜しているんでしたか?」
ヴァンの皮肉に対して恥ずかしそうな様子で答えるフェリにヴァンが呆れている中アニエスは微笑ましそうにフェリを見つめて呟いた後フェリに自分達を訊ねた要件を確認した。
「そっちも大陸中部じゃ有名だな。北の自由都市圏を拠点とする、元軍人なんかが多い高位猟兵団だ。こっちも比較的マシな連中で、都市の治安維持を任されてもいる。」
「成程……色々あるんですね。」
ヴァンがフェリの要件が関係する猟兵団の説明をすると、アニエスは興味ありげな様子で相槌を打った。
「えと、その”アイゼンシルト”と戦士団が戦うことは度々あって……半月くらい前もとある代理戦争で交戦しました。その時の決着はついてお互い、故郷に戻ったんですけど……”アイゼンシルト”の中隊の一つが現時点でも、戻ってないそうなんです。」
「へえ……?別のヤマを受けてるわけじゃねえんだよな?」
「はい、先方の連隊長さんから里に直接問い合わせがあって……お父さん(アブ)――――――副頭目も心配して色々当たっているみたいなんですけど……」
「ハン……”アイゼンシルト”の中隊がねぇ。」
「えっと……すみません。”クルガ”と”アイゼンシルト”の方々は半月前、敵対関係にあったんですよね……?」
フェリとヴァンの話を聞いてある事が気になったアニエスがフェリに確認した。
「?はい、そうですけど……」
「あー、猟兵ってのはそんなモンだ。たとえ前日に殺し合いをしてても戦いが終わったら完全に切り替える。前の戦場じゃ敵でも、次の戦場じゃ味方ってことはザラだからな。」
「な、なるほど。」
(私には理解できない感覚ですね……)
アニエスの質問の意味がわからないフェリが首を傾げている中アニエスの質問内容を察したヴァンが説明し、説明を聞いたアニエスが若干戸惑った様子で頷いている中メイヴィスレインは静かな表情で呟いた。
「えっと、すみません……ヘンなこと言っちゃったみたいで。――――――でも、ヴァン様の言う通り、あんまり憎いとかはないんです。それどころか行方不明の中隊の隊長さんには良くしてもらってて……」
「ほう……?」
「どんな方なんですか?」
捜索対象である人物の事について親し気な様子で話すフェリが気になったヴァンは興味ありげな表情を浮かべ、アニエスは興味ありげな様子で訊ねた。
「……アイーダさんっていう女猟兵でアイゼンシルトでも指折りの実力者です。わたしが2年前に戦士となってから何度か敵味方として付き合いがあって……休戦日や、合同訓練の時に色々なことを教えてくれたんです。わたし、妹に弟、歳の離れたお兄ちゃんはいるんですけど……本当のお姉ちゃんみたいな感じで、年下だけど友達って言ってくれて……――――――大切な人、なんです。でも……クルガからの捜索隊への参加を希望しても認めてもらえませんでした。まだ13歳だし、里と戦場しか知らないからってお父さん(アブ)が……」
「……なるほどな。」
「そう……だから心配で北カルバードまで捜しに来たんですね?」
フェリの事情を知ったヴァンは納得した様子で頷き、アニエスは相槌を打った後フェリに確認した。
「……はい、初めて一人で里を出てバスと鉄道を乗り継いで。アイーダさんの中隊が北カルバード経由で帰還したのはわかっていますから……行方不明になったとすればこの国の可能性が高いと思うんです。その――――――ヴァン様の噂は以前、里の戦士の人から聞きました。北カルバードの旧首都に、”裏解決屋”っていう猟兵の相談にも乗ってくれる人がいるって。銀耀石(アルジェム)の塊です。これでアイーダさんたちの行方を捜してもらえないでしょうか……?あっ、一応戦士としての報酬で受け取ったものです……!」
アニエスの確認に頷いて答えたフェリはヴァンに対する報酬である銀耀石の塊を机に置いてヴァンに依頼を請けてもらえるかどうかを訊ねた。
「フェリちゃん……」
「ハン……その大きさだと10万ミラくらいになるか。――――――そういうのは後でいい。ちなみにウチの基本料は1時間1000ミラで諸経費だ。百時間も拘束されるつもりはねえぜ?」
「え、え……?」
「ふふ、素直じゃないんですから。――――――フェリちゃんの力になってあげるんですよね?」
説明の後に苦笑しながら指摘したヴァンの念押しにフェリが困惑している中ヴァンの答えを察していたアニエスは微笑みながらヴァンを見つめてヴァンに確認した。
「決めつけるんじゃねえ。正直、手に余りそうな案件だ。高位猟兵団の部隊が消息不明……ヤバイ匂いがプンプンしやがる。お前の曾祖父さんの件もある以上、旧首都を離れるわけにも――――――」
アニエスの確認を否定したヴァンは依頼を請ける事に対して消極的である事を答えかけたが、その時突如何かの音が鳴った後アニエスが常に身に着けているゲネシスを保管している小さなポーチ越しにゲネシスが光を放っていた。
「え……」
「……?それって……」
「おいおい……」
突然の出来事にアニエスが呆け、フェリが戸惑っている中、ヴァンは疲れた表情を浮かべた。
「……曾祖父の手記によれば、8つの”ゲネシス”はお互い惹かれ合うそうです。今まで何の反応もなくて、フェリちゃんの話を聞いたら光り出したということは……」
「チッ、オカルト――――――ともあながち言えねぇか。」
(会話を聞いてから反応するということは、信じ難いですが恐らく”ゲネシス”とやらは何らかの装置でありながら”会話を理解する事ができる”ようですね……)
「???あの……その綺麗な装置が一体……?」
アニエスとヴァンが会話している中メイヴィスレインは目を細めてゲネシスの事について考え、フェリは戸惑いの表情で二人を見つめて声をかけた。
「ふふ、私のひいお祖父ちゃんの遺品でちょっと不思議な力を持っているんです。ひょっとしたらアイーダさんたちを捜す手がかりになるかもしれません。」
「!ほ、本当ですか……!?」
「だから先走んじゃねえ!――――――引き受けるかはともかく、まずは状況整理する。もう少し詳しく話せや、”依頼人”。」
アニエスの話にフェリが血相を変えている中二人にそれぞれ注意したヴァンは頭をかいた後表情を引き締めてフェリに依頼についての詳しい説明を求め
「あ――――――はいっ、ありがとうございます!
ヴァンの答えを聞いたフェリは嬉しそうな表情で頷いた後説明を始めた。
その後モンマルトで3人で夕食を取り、事務所に戻るとヴァンはディンゴやベルモッティに連絡を取って情報収集をした。
「―――――有力な情報が幾つか入ってきましたけど……どれも断片的すぎて決め手にはならなさそうですね?」
「……はい……その、北カルバードってこんなに大きい国なんですね。地図ではわかっていましたけど組織とか勢力も色々ありすぎて……」
「正確に言えば国じゃなくて、国――――――”クロスベル帝国に所属している州の一つ”だがな。ま、つっても腐ってもかつての三大国の一つ――――北と南に分かれたとはいえ、それでも広大な土地の州だ。クルガやアイゼンシルト以外にも入り込んでいる猟兵団は多い。もちろんシンジゲートにマフィア、他国のスパイなんかもな。」
決め手となる情報がない事に悩んでいるアニエスや北カルバード州の広大さに不安を感じているフェリにヴァンはそれらについての指摘をした。
「……多分、アイーダさんたちも身分を偽装して移動したと思います。だとしたら簡単に足取りは……」
「だ、大丈夫ですよ、ヴァンさんなら!色々と怪しげなコネもありますし、……ですよね?」
不安そうな表情を浮かべているフェリを元気づけたアニエスはヴァンに確認した。
「ったく、遠慮が無くなってきたな。まあ否定はしないけどよ――――――」
アニエスの遠慮の無さに溜息を吐いたヴァンはザイファを取り出してある人物の番号にかけて通信を始めた。
「――――――ヴァンか。そろそろかけてくると思ったぞ。」
「……?」
(この声って……)
ザイファから聞こえて来た青年の声にフェリが首を傾げている中、心当たりがあるアニエスは目を丸くした。するとヴァンのザイファの映像にキンケイドが映った。
「チッ、五分五分かと思ったが。――――――どうやらウチの依頼人についても掴んでるみたいだな?」
「ああ、”クルガ戦士団”ハサン副頭目の娘、フェリーダ・アルファイド。”アイゼンシルト”中隊の捜索依頼だな?」
「っ……!?」
「ど、どうして……」
キンケイドがフェリのヴァンへの依頼内容を知っている事にフェリは驚き、アニエスは困惑の表情を浮かべた。
「旧首都に来た時点で捕捉されたんだろう。あとはGIDのデータベースってな。しかし依頼まで具体的に把握してるってことは――――――アイゼンシルト中隊の消息不明。GID(オマエら)も噛んでやがるな?」
「……あ……」
「そ、そういう事ですか……」
ヴァンのキンケイドへの指摘を聞いたフェリは呆けた声を出し、アニエスは複雑そうな表情を浮かべた。
「ああ――――――10日程前の話だ。北カルバード州内を経由して、自由都市圏に帰還するアイゼンシルト中隊を捕捉した。知っての通り猟兵団の立入については両カルバード州では原則、禁じられてはいない。だが当然、GIDは全ての団の動向を捕捉・把握できるように努めている。そして稀に――――――特に有能な部隊には特務部隊の訓練相手を務めてもらっていてな。」
「!?それって……!」
「と、特務部隊……?」
「GIDの特務部隊――――――”ハーキュリーズ”か。去年の”ヘイムダル決起”の件でエレボニア相手にヘマをやらかした挙句”中央”の連中にそのヘマに対する”尻拭い”までされた事でテコ入れされてるって話だが。」
キンケイドの話を聞いてある事を察したフェリが真剣な表情を浮かべている中初めて聞く言葉に困惑しているアニエスに説明をしたヴァンはキンケイドにある指摘をした。
「正直、練度は部隊ごとにピンキリだ。それなりに見込みのある部隊を、”火喰鳥(ひくいどり)”アイーダの中隊にぶつけた。といっても交戦抜きの捕捉包囲作戦――――――良い所までは持って行けたが最後は突破されてロストに終わった。流石は”火喰鳥”――――――かの団出身のエースといった所か。」
「ハン……噂は聞いていたが。」
「少し混乱しましたけど……それが10日程前の話、ですか。」
「そ、それじゃあアイーダさんたち、捕まったわけじゃないんですねっ……?」
ヴァンの指摘に苦笑しながら答えた後説明を続けたキンケイドの話にヴァンは鼻を鳴らし、アニエスは真剣な表情で呟き、フェリは安堵の表情でキンケイドに確認した。
「ああ、私が掴んでいるのはここまでだ。捕捉地点のデータも送ってやろう。――――――先日の借りの代わりだ。あとは自分達で突き止めるがいい。」
「あ、おいコラ!クソ、てめえの所が間接的な原因だったんじゃねーか!」
そしてキンケイドはヴァンの文句を予測したのか伝えるべき事を伝えた後すぐに通信を切り、通信を切られたヴァンはキンケイドに文句を言っていた。
「……やっぱりそういう事、ですよね。」
「GID……えっとたしか北カルバード州の諜報組織、ですよね?えへへ、流石はアイーダさん、そんな人たちを躱(かわ)しちゃうなんて……!」
「まあ、前向きなのは結構だ。――――――色々と絞り込めてきたな。もう一度整理して俯瞰(ふかん)してみるぞ。」
その後ヴァン達はキンケイドが送ってきた情報を元にアイーダの中隊のルートを絞り込み、補給の為に寄ったと思われる場所――――――クレイユ村へと絞り込むとゲネシスが再び反応をした。
「―――――決まりだな、依頼人。明日の朝、クレイユ村に向かう。何か手掛かりがある筈だ。大家とは話をつけておく。今夜は3階の部屋に泊まっていけ――――――」
こうして目的地が決まったヴァン達は明日に向けてそれぞれ体を休めた。
9月7日 6:04――――――
翌朝、事務所で集合した3人は裏にあるガレージに向かい、ヴァンがガレージを開けると車が姿を現した。
「わぁ……!」
「大きな車、ですね……!」
「まあ、な。」
自分の車――――――インゲルト社製ピックアップ”ナイトブレイカー”1204年モデルを目にしてそれぞれ目を輝かせているフェリとアニエスの様子にヴァンは自慢げな表情を浮かべた。
「四大導力車ライセンシーの中でもスポーツを得意とする”インゲルト”――――――その傑作ピックアップトラックを俺なりにカスタムチェーンしててな。特にフロントと足回りを……」
「えっと……」
(たかが移動手段の道具に何故あんなに自慢げになるのでしょう、ヴァンは……)
「……?すごい車なんですねっ……!」
自慢げに車の事について語り始めたヴァンの様子にアニエスは苦笑しながら言葉を濁し、メイヴィスレインは呆れた表情を浮かべ、フェリは首を傾げた後無邪気な笑顔を浮かべ
「……いいもんいいもん。男のロマンが理解されなくたって。大体女っつーのは、車がマストのクセに車軸や馬力には見向きもしねぇしよ……」
二人の芳しくない反応にヴァンは肩を落として愚痴を呟き
「えっと、そういう女性だけじゃないとは思いますけど……(でも確かにどうでもいいけど……)」
「あの、カッコイイとは思いますっ!チェーン?はよくわかりませんけど……!」
ヴァンの様子を見たアニエスは冷や汗をかいて内心を隠しながら指摘し、フェリはヴァンに慰めの言葉をかけた。
「グッ……もういい、二人ともとっとと乗りやがれ!」
「――――――朝っぱらから何をグチグチ言ってやがる。」
そして気を取り直したヴァンが二人に車に乗るように指示したその時、ポーレットとユメを連れたモンマルトの店主――――――ビクトルがヴァンに声をかけた。
「あ、昨日御馳走になった……」
「おやっさん……ポーレットにユメも。」
「ひょ、ひょっとして見送りに来て下さったんですか……!?」
ビクトル達の登場にフェリとヴァンが目を丸くしている中、アニエスは驚きの表情を浮かべた。
「……むにゅ~……そ~だよアニエスちゃあん……フェリちゃんも……アニエスちゃんの中にいるメイちゃんも……ヴァンはついでに~……」
「あ……」
「ってオイ。」
(…………”メイちゃん”………まあ、幼い子供が私の若干長い名前を覚えるのは厳しいでしょうが……まさか、この私が”ちゃん”付けで呼ばれる日が来るとは……)
早朝の見送りの為まだ眠そうな様子で呟いたユメの言葉にフェリは呆け、”ついで”扱いされたヴァンはジト目で指摘し、メイヴィスレインは冷や汗をかいた後静かな表情で呟いた。
「ふふっ、それとこれ、持って行ってちょうだい。サンドイッチにミルクにコーヒー。モーニング代わりにどうぞ。」
「ハハ、そいつはすまねぇな。」
「あ、ありがとうございます!わざわざこんな――――――」
「え、えと……その、御馳走になりますっ……!昨日もお世話になって……なんてお礼を言ったらいいか。」
ポーレットにモーニング代わりの弁当を受け取ったヴァン達はそれぞれ感謝の言葉を口にした。
「ふふ、いいのよ。お客さんをもてなすのは当然だから。貴女の故郷だってそうでしょう?」
「あ………」
微笑みながら答えた後訊ねたポーレットの言葉にフェリは頷いた。
「ハン、お前さんみたいなチビっ子はよく寝て食べるのが一番だ。――――――ヴァン、お嬢ちゃんたちにくれぐれも危ないことが無いようにな。」
「わーってるっての。ユメも見送りありがとうな。」
「えへへ~……いってりゃっしゃ~い……!」
そしてヴァン達はビクトルに見送られながら車でクレイユ村へと出発した―――――
ちなみにメイヴィスレインはフェリと共にポーレット達に紹介されているので、ポーレット達もメイヴィスレインの事を知っています
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第9話