No.113191

連載小説116〜120

水希さん

第116回から第120回

2009-12-19 23:40:53 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:420   閲覧ユーザー数:420

連ちゃんの出す「庶民の証」が気になる私。

第一弾のお財布はとても庶民のものじゃなかった。

 

 

「で、次は何を出してくれるの?」

「う~ん…悩む。この鞄の中、そんなに大した物が入ってなくて…」

 札束たくさんのお財布が「大した事ない物」? 私はそうは思わない。

もちろん、そういう意味合いじゃないのは分かってるけど…むぅ~。

「えぇっと…えぇっと…あ、あった! ほら、コレ!」

「これ…櫛?」

 バッグから出て来たのは櫛。確かに地味いデザインだけど…安物なのかな?

「これ、百均で買ったの!」

「ほほぅ、これはこれは庶民的な…」

「か、楓…」

 いきなり会話に入って来て、びっくりするじゃんか、全く…

「それより、どうかな。百均なら庶民的でしょ?」

「ま、それはそうだねぇ」

「お金持ちは利用しないもんねぇ」

 という事は、庶民的な部分もあるわけだ。

「ところでれんれん、それ、なんで買ったの?」

「え? みーちゃん、どういう意味?」

 ん? みーちゃん?

「だって、その櫛、明らかにれんれんの好みじゃないから。れんれん、

普段ピンクばっかじゃん」

「だって、慌てて出かけて、出先で急に突風が吹いて髪がぐしゃぐしゃになって…」

 ど、どういうエピソードなんだ? これ。とにかく分かるのは、

コレが蓮ちゃんの好みじゃないって事だけだ。

「で、急いで百均で買い足したわけだ」

「うん。でもそれがどうしたの? 普通の事じゃないの?」

 私もそう思う。いくらなんでも、急に必要になって百均で買うんだったら、

そんなセレブな話でもないと思うけど…

「じゃあさ、こないだ学校に持って来てた櫛、あれはいくらしたの?」

「ほほぅ? そんな物があるわけだ。これは是非聞かねば」

「えぇっと…一万二千円?」

 い!

「一万二千円!」

「一万二千円!」

「え? え? そんなに驚かないでよ!」

 こ、この価格でもって驚くな? 無理無理。

「だって、そんなセレブ価格…」

「でも、自分で買ったわけじゃないんだよ? 買ってもらったんだから!」

「誰に?」

「うんうん、気になる気になる」

 親か、おじいちゃんか、もしいたら彼氏か。他の誰かか!

「お…」

「お?」

「お?」

「お?」

 お、て、誰だ?

「お母さん…ふ、普通でしょ?」

 確かに、お母さんに買ってもらった、てのは普通かも。だけど、私は納得せん!

「まあねえ」

「それならいいか…」

 楓とみーちゃんの言葉で場の流れが変わって来てるけど、問屋はそうは卸させない!

「でも!」

 私は声を張り上げた。

 

 

~つづく~

蓮ちゃんが普段使ってるのは一万二千円もする櫛。

お母さんに買ってもらったたから金持ちとは別っていうんだけど、

私は異論があった。

 

 

「私…お母さんにそんな高いもの買ってもらった事ないよ」

「そういえば、私も…」

 そうなんだ。私は一万二千円なんて高価な物、買ってもらった事がない。

「でしょ? みーちゃんは?」

「そりゃあねえ。そんな高いものは…」

 よし。

「これで指示を取り付けたよ。やっぱ、蓮ちゃんはお金持ちのお嬢様だ」

「ひ~ん。そんな大した事ないのに~~~!」

 どこが何だろう。やっぱり、基準がズレてるって事なのかな。

「あ、じゃあ! 今度うちに遊びに来てよ!」

「いいの? もっと金持ち認定するかもしれないよ?」

「うんうん」

「でも、二人ともあの豪邸に行けるなら、それでいいんじゃない?」

 む。

「それは確かに」

「だったら、金持ち認定、しちゃおうよ!」

「え~! 何の為に誘うの? 庶民認定して欲しいのに…」

 そんなにいいものか? ここまで行くと中流意識も極端だよ。

「おーい、さっきから俺は会話に加われてないんだが、俺も話に交じっていいのか?」

「え? あぁ、加藤君。別に構わないけど?」

 そういえば、加藤君は所在無さげにこっち見てたなぁ。

「加藤君の意見も気になるね」

「大した意見じゃねーけどな」

「ほうほう」

「言ってみんしゃれ」

 これで加藤君も金持ちだったら、笑えないよ、うちら。

「この家って、もしかしてすっごい郊外なんじゃネーの?」

「え?」

「郊外?」

「てことは?」

 あぁ、あれか。

「不便な場所で土地が安いってこと?」

「そうそう。それなら庶民にも豪邸が買えるんじゃねーの?」

「でも、土地と家は別でしょ」

「なら、やっぱお金がないと…」

「ひ~ん。今度はこっちが付いて行けない! うち、そんなに郊外じゃないし…」

 来た!

「やっぱ金持ちか…」

「そ、そんな~。だから、それはうちに遊びに来てくれれば分かるから~!」

 結局、それが一番か。

「じゃ、そこでジャッジメントさせてもらうか」

 

 

これはこれは、面白い事になって来た。

 

 

~つづく~

連ちゃんの庶民度判定は、蓮ちゃんの家に遊びに行って決める事になった。

まだいつにするかは未定だけど、これは楽しみだ!

 

 

「予定はどうする?」

 もともと蓮ちゃんと中が良かったみーちゃんが口火を切った。

「う~ん、これからじゃあちょっと時間ないし…蓮ちゃんの都合もあるし…」

「うちはいつでもいいよ? どうせ週末でしょ?」

「じゃ、来週末に早速、どうかな」

 蓮ちゃんは頷く。楓とみーちゃんもそれで良さそうだ。

「じゃ、決定ね。来週末」

「うん、待ってるから」

「おっけー」

「りょーかい」

「で、俺は?」

 あ。

「加藤君。そっか…加藤君もいたんだっけ。えっと、加藤君、予定は?」

 形だけであろうとなんであろうと、訊くだけは訊いておかなきゃね。

「よーやく訊いてくれたか。えっと、予定だよな。一応いいぜ」

「そっか。で、一応って?」

 これは気になる言葉だ。

「予定があるなら無理に参加しなくていいよ?」

「うんうん」

「うちら三人でも十分だし」

「いや、なんていうかな、俺も興味あるんだけど…」

 ん? なんか歯切れが悪い。

「そろそろ彼女の相手をしねーとまずいかなって」

「な!」

「に!」

「ぬ!」

「ね!」

 なんだと? この野郎…

「そんな奴は勝手にデートしてろ!」

「つめてーこと言うなよ。そうじゃなくて、俺の彼女も混ぜさせてもらえない?」

「へ?」

 なんだって?

「俺の彼女も一緒に加えさせて欲しいんだけど」

「そりゃ、蓮ちゃん次第でしょ」

「人数の問題もあるし、知らない人が増えるわけだしねえ」

「れんれん、どう?」

「うちは別にいいけど…その代わり、手狭になるよ?」

 ま、そりゃそうだ。

「そ、それは我慢するから!」

「じゃあ、いいよ」

 あっさり決まったなぁ。

「ていうか、加藤君の彼女ってどんな子なんだろ。気になるなぁ」

「気になるねえ」

「じゃのう」

「独り身には堪えるよ…」

 実際問題、今は彼氏要らないけど、幸せな奴を見てるとどうも…

「なんにせよ助かった! ちょっと、今から連絡するわ」

「うん」

 ぽちぽちとメールを打ちだした加藤君。果たしてどんな風に伝えるのやら。

 

 

~つづく~

彼女にメールを打ちだした加藤君。

一体どんな風に伝えるのか、気になる所だ。

 

「んーと…」

 私達、女の子三人と女の子の家に行くんだから、正直すごい構図だと思う。

それに、そのうち二人は他校の生徒だ。私はクラスメイトだけど、理由としちゃ、ちと希薄。

「ねえ加藤君」

「ん? なんだ?」

 その辺、考えてるのかな。

「私達の事、どう説明するの? このままじゃ、浮気じゃない?」

「んな事はねーよ。物わかりの良さが彼女のウリだしな」

 それって、都合のいい女って事?

「ねえ、加藤君の彼女って、どんな女の子なの?」

「んあ? 物わかりの良さがあるだろ? で、他にもいい女」

「な~にそれ」

「女の子相手に、その説明はちょっとね~」

「うんうん」

 一同、総スカンを食らわす。

「ちょ! じゃあどう説明すりゃいいんだよ」

「まずは外見から」

「あ、それ思った」

「見たい!」

「おしゃれな子?」

 女の子だからって、相手の外見は気にするのだ。もちろん、男の子とは、

全然目線は違うだろうけど。

「おしゃれかどうかは、よく分からんぞ」

「じゃあ写メ見せて」

「うんうん」

「それは興味津々じゃわ」

「期待しちゃうよ~」

 一同、余計な期待を煽る。

「ちょっと待て。そんなに持ち上げるなよ。それに、見せるかどうかは

あいつの許可もいるし」

「うん。だから、許可をよろしく」

 やっぱ、ここはぜひとも許可してもらわないとね。後はあれか、まかり間違っても、知り合いじゃない事は確認せねば。

「あ、もし私の知ってる女の子だったら、こっちから頼もうか?」

「お前らの知らない女だよ。同中だぜ?」

 なーんだ。

「じゃ、早く許可よろしく」

 私達は、加藤君の行動を見守った(監視した)。

 

 

~つづく~

加藤君の彼女の写メが見たいと要求した私たち女子連。

加藤君は「見せてもいいか」というお伺いメールを打っている。

 

 

「どう?」

「どうってなぁ。そんなに早く返事はこねーよ」

 そりゃそうか。

「でも、さっきから普通にやりとりしてるって事は、それなりに暇なの?」

「さあな。それなりに、じゃねーかな」

 と言ってるそばから加藤君のケータイが震えた。

「お、また来たね?」

「ああ。どれどれ…! や、やばい…」

 ん? 加藤君の顔が青ざめたような…

「どした?」

「いや…事情を説明したら、今からここに来るって!」

 なんと!

「やべーよ! いくらなんでも浮気だと思われる!」

「おお、楽しみだねぇ」

 一体どんな修羅場が待っているのか。楽しみだ。

 

 

~つづく~


 
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