連ちゃんの出す「庶民の証」が気になる私。
第一弾のお財布はとても庶民のものじゃなかった。
「で、次は何を出してくれるの?」
「う~ん…悩む。この鞄の中、そんなに大した物が入ってなくて…」
札束たくさんのお財布が「大した事ない物」? 私はそうは思わない。
もちろん、そういう意味合いじゃないのは分かってるけど…むぅ~。
「えぇっと…えぇっと…あ、あった! ほら、コレ!」
「これ…櫛?」
バッグから出て来たのは櫛。確かに地味いデザインだけど…安物なのかな?
「これ、百均で買ったの!」
「ほほぅ、これはこれは庶民的な…」
「か、楓…」
いきなり会話に入って来て、びっくりするじゃんか、全く…
「それより、どうかな。百均なら庶民的でしょ?」
「ま、それはそうだねぇ」
「お金持ちは利用しないもんねぇ」
という事は、庶民的な部分もあるわけだ。
「ところでれんれん、それ、なんで買ったの?」
「え? みーちゃん、どういう意味?」
ん? みーちゃん?
「だって、その櫛、明らかにれんれんの好みじゃないから。れんれん、
普段ピンクばっかじゃん」
「だって、慌てて出かけて、出先で急に突風が吹いて髪がぐしゃぐしゃになって…」
ど、どういうエピソードなんだ? これ。とにかく分かるのは、
コレが蓮ちゃんの好みじゃないって事だけだ。
「で、急いで百均で買い足したわけだ」
「うん。でもそれがどうしたの? 普通の事じゃないの?」
私もそう思う。いくらなんでも、急に必要になって百均で買うんだったら、
そんなセレブな話でもないと思うけど…
「じゃあさ、こないだ学校に持って来てた櫛、あれはいくらしたの?」
「ほほぅ? そんな物があるわけだ。これは是非聞かねば」
「えぇっと…一万二千円?」
い!
「一万二千円!」
「一万二千円!」
「え? え? そんなに驚かないでよ!」
こ、この価格でもって驚くな? 無理無理。
「だって、そんなセレブ価格…」
「でも、自分で買ったわけじゃないんだよ? 買ってもらったんだから!」
「誰に?」
「うんうん、気になる気になる」
親か、おじいちゃんか、もしいたら彼氏か。他の誰かか!
「お…」
「お?」
「お?」
「お?」
お、て、誰だ?
「お母さん…ふ、普通でしょ?」
確かに、お母さんに買ってもらった、てのは普通かも。だけど、私は納得せん!
「まあねえ」
「それならいいか…」
楓とみーちゃんの言葉で場の流れが変わって来てるけど、問屋はそうは卸させない!
「でも!」
私は声を張り上げた。
~つづく~
蓮ちゃんが普段使ってるのは一万二千円もする櫛。
お母さんに買ってもらったたから金持ちとは別っていうんだけど、
私は異論があった。
「私…お母さんにそんな高いもの買ってもらった事ないよ」
「そういえば、私も…」
そうなんだ。私は一万二千円なんて高価な物、買ってもらった事がない。
「でしょ? みーちゃんは?」
「そりゃあねえ。そんな高いものは…」
よし。
「これで指示を取り付けたよ。やっぱ、蓮ちゃんはお金持ちのお嬢様だ」
「ひ~ん。そんな大した事ないのに~~~!」
どこが何だろう。やっぱり、基準がズレてるって事なのかな。
「あ、じゃあ! 今度うちに遊びに来てよ!」
「いいの? もっと金持ち認定するかもしれないよ?」
「うんうん」
「でも、二人ともあの豪邸に行けるなら、それでいいんじゃない?」
む。
「それは確かに」
「だったら、金持ち認定、しちゃおうよ!」
「え~! 何の為に誘うの? 庶民認定して欲しいのに…」
そんなにいいものか? ここまで行くと中流意識も極端だよ。
「おーい、さっきから俺は会話に加われてないんだが、俺も話に交じっていいのか?」
「え? あぁ、加藤君。別に構わないけど?」
そういえば、加藤君は所在無さげにこっち見てたなぁ。
「加藤君の意見も気になるね」
「大した意見じゃねーけどな」
「ほうほう」
「言ってみんしゃれ」
これで加藤君も金持ちだったら、笑えないよ、うちら。
「この家って、もしかしてすっごい郊外なんじゃネーの?」
「え?」
「郊外?」
「てことは?」
あぁ、あれか。
「不便な場所で土地が安いってこと?」
「そうそう。それなら庶民にも豪邸が買えるんじゃねーの?」
「でも、土地と家は別でしょ」
「なら、やっぱお金がないと…」
「ひ~ん。今度はこっちが付いて行けない! うち、そんなに郊外じゃないし…」
来た!
「やっぱ金持ちか…」
「そ、そんな~。だから、それはうちに遊びに来てくれれば分かるから~!」
結局、それが一番か。
「じゃ、そこでジャッジメントさせてもらうか」
これはこれは、面白い事になって来た。
~つづく~
連ちゃんの庶民度判定は、蓮ちゃんの家に遊びに行って決める事になった。
まだいつにするかは未定だけど、これは楽しみだ!
「予定はどうする?」
もともと蓮ちゃんと中が良かったみーちゃんが口火を切った。
「う~ん、これからじゃあちょっと時間ないし…蓮ちゃんの都合もあるし…」
「うちはいつでもいいよ? どうせ週末でしょ?」
「じゃ、来週末に早速、どうかな」
蓮ちゃんは頷く。楓とみーちゃんもそれで良さそうだ。
「じゃ、決定ね。来週末」
「うん、待ってるから」
「おっけー」
「りょーかい」
「で、俺は?」
あ。
「加藤君。そっか…加藤君もいたんだっけ。えっと、加藤君、予定は?」
形だけであろうとなんであろうと、訊くだけは訊いておかなきゃね。
「よーやく訊いてくれたか。えっと、予定だよな。一応いいぜ」
「そっか。で、一応って?」
これは気になる言葉だ。
「予定があるなら無理に参加しなくていいよ?」
「うんうん」
「うちら三人でも十分だし」
「いや、なんていうかな、俺も興味あるんだけど…」
ん? なんか歯切れが悪い。
「そろそろ彼女の相手をしねーとまずいかなって」
「な!」
「に!」
「ぬ!」
「ね!」
なんだと? この野郎…
「そんな奴は勝手にデートしてろ!」
「つめてーこと言うなよ。そうじゃなくて、俺の彼女も混ぜさせてもらえない?」
「へ?」
なんだって?
「俺の彼女も一緒に加えさせて欲しいんだけど」
「そりゃ、蓮ちゃん次第でしょ」
「人数の問題もあるし、知らない人が増えるわけだしねえ」
「れんれん、どう?」
「うちは別にいいけど…その代わり、手狭になるよ?」
ま、そりゃそうだ。
「そ、それは我慢するから!」
「じゃあ、いいよ」
あっさり決まったなぁ。
「ていうか、加藤君の彼女ってどんな子なんだろ。気になるなぁ」
「気になるねえ」
「じゃのう」
「独り身には堪えるよ…」
実際問題、今は彼氏要らないけど、幸せな奴を見てるとどうも…
「なんにせよ助かった! ちょっと、今から連絡するわ」
「うん」
ぽちぽちとメールを打ちだした加藤君。果たしてどんな風に伝えるのやら。
~つづく~
彼女にメールを打ちだした加藤君。
一体どんな風に伝えるのか、気になる所だ。
「んーと…」
私達、女の子三人と女の子の家に行くんだから、正直すごい構図だと思う。
それに、そのうち二人は他校の生徒だ。私はクラスメイトだけど、理由としちゃ、ちと希薄。
「ねえ加藤君」
「ん? なんだ?」
その辺、考えてるのかな。
「私達の事、どう説明するの? このままじゃ、浮気じゃない?」
「んな事はねーよ。物わかりの良さが彼女のウリだしな」
それって、都合のいい女って事?
「ねえ、加藤君の彼女って、どんな女の子なの?」
「んあ? 物わかりの良さがあるだろ? で、他にもいい女」
「な~にそれ」
「女の子相手に、その説明はちょっとね~」
「うんうん」
一同、総スカンを食らわす。
「ちょ! じゃあどう説明すりゃいいんだよ」
「まずは外見から」
「あ、それ思った」
「見たい!」
「おしゃれな子?」
女の子だからって、相手の外見は気にするのだ。もちろん、男の子とは、
全然目線は違うだろうけど。
「おしゃれかどうかは、よく分からんぞ」
「じゃあ写メ見せて」
「うんうん」
「それは興味津々じゃわ」
「期待しちゃうよ~」
一同、余計な期待を煽る。
「ちょっと待て。そんなに持ち上げるなよ。それに、見せるかどうかは
あいつの許可もいるし」
「うん。だから、許可をよろしく」
やっぱ、ここはぜひとも許可してもらわないとね。後はあれか、まかり間違っても、知り合いじゃない事は確認せねば。
「あ、もし私の知ってる女の子だったら、こっちから頼もうか?」
「お前らの知らない女だよ。同中だぜ?」
なーんだ。
「じゃ、早く許可よろしく」
私達は、加藤君の行動を見守った(監視した)。
~つづく~
加藤君の彼女の写メが見たいと要求した私たち女子連。
加藤君は「見せてもいいか」というお伺いメールを打っている。
「どう?」
「どうってなぁ。そんなに早く返事はこねーよ」
そりゃそうか。
「でも、さっきから普通にやりとりしてるって事は、それなりに暇なの?」
「さあな。それなりに、じゃねーかな」
と言ってるそばから加藤君のケータイが震えた。
「お、また来たね?」
「ああ。どれどれ…! や、やばい…」
ん? 加藤君の顔が青ざめたような…
「どした?」
「いや…事情を説明したら、今からここに来るって!」
なんと!
「やべーよ! いくらなんでも浮気だと思われる!」
「おお、楽しみだねぇ」
一体どんな修羅場が待っているのか。楽しみだ。
~つづく~
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第116回から第120回