陰火を避けるように高度を若干高く取りつつおつのは山頂に接近した。
この術を発動させるために使われた三つ足烏の内、生き延びた数羽が疲れ果て……だが眼下に拡がる陰火の群れの中に降りる事も出来ぬ様子で、力なく羽ばたきながらよろよろと山頂の付近を旋回している。
山頂に接近するおつのに対し、攻撃を仕掛けようとする様子どころか、最前まで感じていた敵意や悪意すら感じられない、おつのが良く知る、山中などで自然の営みを行っている小妖の姿。
三つ足烏を操っていた術者からの制御が外れたか……。
それはつまり、この陰火を送り込む大いなる術で、相手がかなり消耗している事を、恐らくは意味している。
であれば……私たちにも勝機はある。
相手が襲ってこない以上は、こちらから敵対する気はおつのには毛頭ない、遮る物とてない空を舞い、おつのはほどなく山頂を眼下に収める位置に出た。
山頂近くにどっしりと鎮座する注連縄を張られた磐座(いわくら)、そして、その前にしつらえられた祭壇がおつのの眼に捉えられる。
これだ……間違いない。
流石に神の座たる磐座そのものに対して何かをする事はできなかったようだが、磐座の持つ山の要としての力に干渉する為に壇を築いたのだろう。
さほど大きな物ではないが、その配置と置かれた祭具を見ればこれがいかなる代物か、おつの程の術者が見れば一目瞭然。
(五壇の御修法)
かなり強力な祈祷の為に設えられる、密の系統を引く術で用いられる祭壇。
後で鞍馬や天狗と一緒に検分すれば、判ることも多かろう……それにしても確かにこれだけの陰火を離れた場所から送り込むというには必要な事かもしれないが。
「……御大層な物拵えて私たちが大事にするお山の要になんて事をしてくれやがりますかねー、このツケはそりゃもうこの仙人峠くらい高くつくよー、地の果てまで追い詰めて身包み剥いで頭の毛までぶちぶちぶちーーって毟って簀巻きにして、難波堀江か熊野ちゃんの庭先の海に、西方浄土に届けと投げ込んだるさかいなー、震えてねむれー!」
おどけてはいるが、その声に隠しきれない怒りが滲む。
山はあらゆる生に平等に対する、与え、奪い、生み出す、人であれ獣であれ草木であれ、一度山の大いなる懐に抱かれたら、その掟に律せられる。そうして山中には自然な在り様としての生と死が営まれてきた……その巡る輪の大小はあれど、それはこのような峻厳なる高峰でも変わらない。
だが、この陰火の噴出、死穢の汚れで山を覆うというのは、そんな太古より連綿と続いてきた営みを破壊する、醜悪な企てに外ならぬ……山の守護者たる大天狗の一人たるおつのとしては到底許せるものではない。
おつのは、周囲に油断なく気を配りながら、祭壇の中央、通常は祈祷者が座す場所に降り、祭壇の様子を手を触れずに子細に眺めだした。
うかつに手を出せば、神仏の加護が失われ、壇が崩壊しかねない……この壇を自分たちの為に使いたいおつのとしては、慎重にならざるを得ない。
そんなおつのを陰火が遠巻きにしているが、壇を超えて襲ってくる気配はない、行われている祈祷の中身に依らず、定められた法で作られた壇は神仏の加護を得られる物。
のんびり調べている時間こそ無いが、陰火を気にせず集中出来るというのは助かる話ではある。
「ふーん」
感心しないと言った様子の唸りを上げてから、しばし、このおしゃべり天狗には珍しく、無言で壇をにらみつけていたおつのの眉間の皺が徐々に深くなっていく。
もう一度見直し、目を閉じて自分の知識と照合し……間違いない、これは。
「悪趣味だよーーー、さいてーーーーなによこれ、どうみても豊穣祈願の壇じゃないのよーーー、何が豊穣よ、命を奪う陰火を送り込む道を作るための祭壇としてこんなもん作るなーーーーーーーーー!」
だが、同時に術者としてのおつのの冷徹な部分は、敵が、その意図を実行する為に用意する祭壇ならば、確かにこれが最適な物である事を認めていた。
基本的に豊穣の力は山から里にもたらされる、それは春に山の神を里にお迎えすると山の神は田の神と化して里で祀られ、その力を田に注ぐ。そして秋には豊穣をもたらしたその神に、豊かな実りを捧げ山にお帰り願う、そして田の神は山の神に戻る。
そんな人の祭りの中に、その在り様は端的に見出される。
そんな、山と里を繋ぐ道を整える祭壇をここに設け、敵はその地に命の力を流し込み、また城に戻す事を可能にする術を完成させたのだ。
命……そう、人の亡魂という、命の成れの果てを流し込む場として。
敵の頭脳が明晰で、危険な物である事は疑いない……相手は呪術を形だけ伝授され、師から受け継いだそれを墨守する凡百の術者ではなく、その本質を理解し、危険を恐れず邪悪な用途に置き換える事すら出来るという事。
そして、良く知られた既存の祈祷の祭壇を応用するというのは、無用の危険を避けるという意味でも正しい、数多作られ、利用されてきた壇法というのは、そういう意味でも安全で堅実な運用が図れる。
だが……それは同時に、私が使えることも意味する。
その意味では自分が山頂に至れたのは幸運だった、紅葉御前も山の民の長として一通りの山の神を祀る祭儀は心得ている事から、今回の作戦の目的は達することは出来ただろうけど、敵の祭壇を逆に奪うような真似は、流石に出来なかったろう。
勝機は、僅かだがこちらに傾いた。
「さぁてとー、それじゃ折角馴染みの祭壇もある事だし、おつのちゃん直々に、この山が、かやちゃん褒めた時位草花がぽんぽんと満ち溢れちゃう豊穣の地になるように、心を込めて祈っちゃいますよー」
私とご主人様とおゆきちゃんで、本物の豊穣の祭儀ってやつを見せてあげるよ……外道。
「蜥蜴丸、修験の道、あの道とこの瘴気の流れ来た道が交わる所までだ」
俺たちが、ここまで登って来る時に使った、あの道に戻る。
距離にしては一町ちょっと(100m少々)でしかない……だが、険阻な山道である事と、何よりその間にひしめく陰火の群れを突っ切ってとなると、平地を十里駆けるより辛い道となる事は間違いない。
そこまで、何とか持たせてくれ、蜥蜴丸。
(人の歩みし道……なるほど)
主は、この陰火をもたらした気の道に抗す術として、人が自然の力と抗して切り開いてきた足跡の結実に賭けたか。
貴方様らしい……そして、おじい様によく似た決断です。
あの方もまた、どこかで人の営みが持つ力を信じて前に進み続けた。
(承知しました……ご主人様、駆け抜けましょう)
「頼む!」
蜥蜴丸の神体を納刀して束頭を押さえ、男は眼前に犇めく陰火の只中に走りこんだ。
即座に、その身に炎の如き姿が犇々と押し寄せ、その身を包み込む。
傍から見れば、その身が青白い炎に包まれ燃え上がったかと見紛う光景、だが、男は、その炎の如き姿とは正反対の感触を、その全身で感じていた。
(……なんだ、こりゃ)
最初に感じたのは冷気。
だが、おゆきがもたらすそれのような、人の身を切り裂くような峻厳さと同時に、意識が研ぎ澄まされていくような、身を清める禊の感覚をもたらす冷気とは違う。
骨身にぞわりと忍び寄り纏い付き、こちらの熱が奪われていく、蛭のように悍ましく粘りつくような冷気。
炎や冷気であれば、いかに危険なそれであれ知見はあるし、この皮膚にも一再ならずそれらがもたらす傷を負った事はある、だが、明らかに未知の感覚に一瞬だが戸惑ってしまった男の気が呑まれそうになる。
(これは陰火の纏う黄泉の冷気です!気を張って下さい、己は生者であるという事を強く念じて!気力で負けたら、一気に押し込まれます)
蜥蜴丸の声が切迫する。
「なるほど……これがあの世の空気か」
男は丹田に意識を集中した。
力の流れ、呼吸の要、己の中を巡る生者の気を自覚する事で、外から自分を呑もうとする死者の力を明確に知覚する。
「熱烈なお誘いはありがてぇが、まだ当面そっちに逝く気はねぇ!」
足に力が戻ると同時に蜥蜴丸の力が全身を満たし、男の体が陰火を掻き分け斜面を駆け下り始めた。
(危ないところでした)
(ああ、しかし妙な感触だな、力を奪われていく悍ましい感触だってのに……俺は)
あの中に呑まれる事に、どこか安らぎに似た感情を覚えてしまった。
このまま、こいつらに呑まれてしまうのも悪くは無いと、心のどこかで……。
(俺は、まだまだ未熟ってこったな)
その正直な言葉を、だが蜥蜴丸は否定するように小さく首を振った。
(いえ、それは未熟の故ではありませぬ、黄泉は全ての魂が還る場所でもあります、棺にして揺籃の地からの誘い、主殿が嫌悪と安堵を同時に感じたのは何ら不思議ではありません)
寧ろ、陰火に触れた事で、その本質の粗方を瞬時に感じ取れたというのは、紛れもないこれまでの修行の賜物です。
(次は、相手の事を知ってもなお、揺るがぬ己を保つ修練が必要になったという事ですね、良い事です、何か方法を考えておきましょう)
未だ陰火の中をかき分けて進んでいる最中だというのに、次の修行も無いもんだ……。
いくら気を整えても、端から纏い付いてくる陰火に、蜥蜴丸の守りの力がこそげ取るように奪われていく。
いまや、この山そのものが黄泉平坂へと姿を変えたが如き瘴気の中では、陰火はますます燃え盛り、逆に彼の元には、繋がってはいるものの細く僅かに庭の力が届くだけ。
そんな状況はお互い理解している……だからこそ。
(お手柔らかに頼むぜ、師匠)
(ええ、ますます生きて帰る楽しみが出来ましたね)
(……そうだな)
生にしがみつく時、結局こういう、己の生に直結したささやかな喜びの方が力となるのかもしれない。
やれ、ここで負けたら人間の社会が崩壊するだの、大地の龍が目覚めるだのという大仰な話より、腕前が少し上達した、まだ呑んでない酒が残ってる、来週には蕪が収穫できそうだ……そんな、ごくささやかな人の営みを思い出すときの方が、黄泉平坂を転がり落ちそうになる俺の魂を生へと引き戻してくれる……そんな気がする。
少しずつ、足は前に進む。
だが、彼の周囲の陰火も、その旺盛な命の気に群がるようにさらにその数を増し、もし見る人がいれば、彼の全身はまるで青白い松明となったかのように、隙無く取り囲まれていた。
一歩ごとに、足が重くなるのを感じる。
最前まで感じなかった黄泉の冷気が、再び全身に忍び寄る。
それでも、足を前に進める。
下りが次第に急になってくる。
速度を上げたい……だが、この山道ではしっかり足を踏みしめねば、斜面を滑落し、そのまま崖下へとこの身を投げる事に。
急ぎたい、だが急げない。
蜥蜴丸の力は既に彼の身を陰火から護る方で手一杯、あの超絶の体術を彼に与えられる余裕はない、俺の体で出来る範囲で動かすしかない。
心だけが急く。
先を急ぐ足や腰に、冷気だけではない、あの時と同じ、蛭のように纏い付く感触が忍び寄る。
(主殿!もうひと踏ん張り……す)
蜥蜴丸の声が遠い。
それでも前に踏み出す……その足が、冷気の故に動きが鈍ったか大地を捉えそこなった。
(危ない!)
咄嗟に腕が動いたのは生き物としての生への渇仰か、それとも蜥蜴丸の加護か……。
道を外れ、急な斜面に転がり落ちそうになる、だが何とか手近な岩に手を掛け、彼は滑落を免れた。
だが、転び、動けなくなった体に坂など物ともしない陰火が群がる。
彼の身を護る力が奪われ、全身の感覚が怪しくなっていく。
(ちくしょう……あと少し)
この坂を下った所……あと少しだってのに。
もう、蜥蜴丸の声も聞こえねぇ。
視界がぼやける。
俺は……。
「大将!こっちだ!」
声?
声が聞こえる。
炎のような声。
その声によく似た、炎のような赤毛をした……俺の吞み友達の。
「陰火のせいで動けねぇか……なら、あたしが受け止めてやる!こっちだ、飛べ!」
手足が利かねぇってのに無茶苦茶言いやがる。
だが、彼女の炎の如き気勢が、彼の気力にも熱を与えたか。それまで感覚が怪しかった手足に、少なくとも己の意思が通ることを男は感じた。
飛ぶのは無理だが。
(まさか、修行僧でもねぇのに、お山で捨身をする羽目になるとは思わなかったぜ)
まぁ、俺が身を投げるのは、山の神さんじゃなくて、山の姫さんにだが。
(頼んだぜ、紅葉の姐ちゃん)
男は岩にかろうじて引っかかっていた指を放し、なんとか動かした足で、弱々しく大地を押した。
声と、確かに感じる、彼と式姫との繋がりだけを頼りに、虚空に体を投げ出す。
急斜面を僅かに蹴って、計ったように真っ直ぐこちらに落ちてくる主を見上げ、紅葉は大きく手を広げた。
「上出来!」
広げた手の中に、ズシリと落ちてきた重みを、確かに受け止める。
「助かったぜ……後で……隠しておいた酒奢るわ」
こちらに向けてくる、辛そうだが確かな眼気を宿した目を見返し、紅葉はにやりと笑った。
「そんだけ言えりゃ上等だよ、で、逞しい腕に受け止められた気分はどうだいお姫様」
「……中々悪くねぇ……その辺の男じゃ一生経験できねぇだろうしな。さて、姫ならぬむさい男で悪いが……もうちょっとこのままで居てもらって……良いか?」
とぎれとぎれに、何とか紡がれる減らず口。
立てもしない程に、陰火に命の気をぎりぎりまで吸い取られて、まだあんたはこんな顔をして、己の責務を果たそうってのかい。
全く……これだから命張ってでも、あんたの戦に付き合うのは止めらんねぇんだよ。
「……任せときな、何ならこの先ずっと抱っこしててやるから、存分にやりな大将!」
紅葉の腕の温み、彼女の鼓動が暖かい。
いや、それだけではない、彼女が踏みしめた足元の修験の道を通り、男は確かにこの山の瘴気を貫き、庭の力が自分に流れ込もうとしているのを感じた。
(あるんだな……そこに)
細いそれを、掴む。
それと同時に、その道の始まりと終わり、麓と山頂に待機する二人の式姫の力が、全て一つの線で繋がった事を男は感じた。
二人とも、見つけてくれたか。
ならば、俺も為すべきことを。
掠れそうな声を振り絞る。
「我は式姫の庭なる天柱樹と命と魂と宿命を共にするものなり」
「……来た!」
低くそうつぶやいて、おゆきがその顔に喜色を浮かべる。
「捉えたか?」
あの男へと通じる気の流れ、この全山を覆う瘴気の流れを貫いてそこに至るそれを。
「ええ、流石よ仙狸、貴女の読み通り、あの人も、そしておつのもこの流れの上にいる」
仙狸に笑みを向け、おゆきは集中に入った。
庭からあの人に通じる気の流れを確かに感じる。細いそれを捕まえ、私がここで受けて増幅し、あの人に送る。
「流石だよ、おゆきちゃん、そして」
信じてたよ、ご主人様。
彼女が前にした壇の上に炎が灯る。
陰火のそれではない、おつのが呼んだ、明王の炎。
オン、バサラ、クシャ、アランジャ……。
真言を唱えるおつのの姿を、もし見る人がいれば、そこに炎に包まれ諸悪を滅する明王の姿を見た事だろう。
「この山に太古よりいます磐座に再び豊穣の力を宿さん事を」
力を奪われた山の神は里人にもてなされ、力を取り戻し、山へと還る。
古来よりの習わしに従い、里より導く我らが力を受け、その力を取り戻したまえ、磐座よ。
「見事……これは私の予想以上の物を見せてもらえたな」
遠方から戦場を俯瞰する鞍馬の眼には、それがさながら碁盤のようにはっきり見えた。
敵が構築した、盤石とも見える堅城を中心とした仙人峠まで続く山脈の陣。
だが。
「君の陣を構築するのは、骸骨兵団や陰火の群れ、そして峩々たる山並みのような派手で堅固そうな見た目を取り払ってしまえば、堅城と山頂の二目のみ……よく計算され、効率よく上手に作られた物だが」
複雑さを欠くそれは、案外と脆いのだよ。
「君は有能であり、反面私は今回の戦に於いて幾つかの見込み違いや誤りを犯した……だがね」
それは彼女が信じて送り出した現場の皆が、各々の力に応じて修正、対応してくれた。
大筋での敵の手筋の読みと、それに対するこちらの策を皆に共有し、現場は信じて任せた人たちに完全に委ねた今回のやり方……長く、複雑で、広範囲に及ぶ戦いになるだろう主の今後を占うに、十分な成果。
「その大枠さえ見切ってしまえば、その陣の切りようはある」
敵が構築した気脈の道に、今交差するように一つの力が麓から山頂へと駆け上る。
ぱちり。
鞍馬には、今、盤面に置かれ、敵の陣を切り裂く一目の響きが確かに聞こえた。
「今回は我々の勝ちだ」
君の誇る鉄壁の防壁の一翼、もぎ取らせてもらう。
紅葉御前の周囲に迫ろうとしていた陰火が、さながら水をかけられたそれの如く苦悶に身をよじるように弱々しく揺らめく。
「こいつぁ……」
紅葉は足下の道を通して彼女に、そして彼女の腕の中の主に力が流れ込むのを感じていた。
足の傷は、既に痛みもない。
「全部、あの軍師先生の読み通りだったって事かい」
敵が堅城から流れる地脈を利して陣を作っているなら、その急所を見切り、それを断つ事で、この山の支配権を奪う。
そのために現地に赴く必要があるのは、式姫の庭が持つ絶大な力を山に導くために必要な主、それを麓で補助する山神のおゆき、そして山頂でその力を使って全山を敵の影響から解放する祭儀を行いうる、山の民の長たる紅葉か、修験者の開祖たるおつの。
君たちに任せる。
その布石は、全てがぴたりと機能したのだ。
なるほど、大将が自分の起こした神も大妖怪も人も式姫も全部巻き込んだ馬鹿騒ぎの軍師にと望んだだけはある。
認めざるを得ないね。
紅葉の腕の中で、男は目を閉ざし、低く呪を唱え続けている。
「故に、我ある処はすなわち式姫の庭なり……大いなる力秘める地となるなり」
男を通して、さらに山頂にいるおつのへと、凄まじい力が流れていく。
祭壇で祈り続けるおつのには、彼女たちに導かれた奔流が、この山に至ろうとする堅城からの力の流れを完全に断ち切った事を明確に感じた。
そして、磐座が再び神の座としての力を取り戻して来た事を。
今なら、この壇から、全山に私の力を及ぼせる筈。
最後の仕上げ。
(……解放してあげるよ、彷徨う亡魂達)
「我、三昧の真火を以って、この地の穢れの全てを焼き清めん!」
仙人峠が再び炎に包まれた。
■おつの
本業というか、その神格のベースになった人物考えれば、おつのちゃん、祈祷と祭儀はお手の物だろうなぁ、と。
とはいえ、五壇の御修法は後世の純密系の産物だから、おつのんの姿になってから修行した物でしょう。
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仙人峠の攻防、ようやく決着です