No.1118937 5.勝ち組とオフタイムかいらのんこさん 2023-04-21 12:10:49 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:235 閲覧ユーザー数:235 |
~シラナミ~
寝つけずに夜風にあたった帰り。
「まだ寝ないのー?」
「うん、もうちょっと。」
たまたま前を通りかかったメイド部屋から、
……ひそひそと、話し声。
「ミツノがんばるよねえ、そこまで勉強するって。
シラナミ財団の試験通ってここ勤められたら、あとは
仕事のこと覚えていくだけって人もいるけどねー。
メイド以外の仕事したいと思ってる?」
聞こえる内容に、思わず耳をすませる。
この屋敷でないところで、働きたいのか……?
「うーん。……あのね、私……いろんなものを見たいの。
シラナミさまは、いま私なんかが想像もつかないところで
おひとりで考えて、お仕事してらっしゃるでしょう。」
「そりゃあね。トップの仕事はわからない部分も多いわ。」
「……私ね、せめて隣にいて、わかりたいの。
いろんなものが見えるようになりたい。
そうすれば、今と違って、一緒に笑えるのかなって。」
………。
「笑…ってらっしゃるけどねー、今でも。
勝ち組だーって言われる時とか。」
「……おひとりで、自信にあふれた笑い方をされるのも、素敵なんだけどね。
隣に分かち合えるひとがいたら、どんなお顔されるのかなって。」
くすくすと笑いながら話す声。
僕の前ではそんなの表に出さずに、ただ照れるくせに。
「ふさわしくなりたい、ってのもある?」
「そんな大それたことじゃないけど…!
あ、……でもがつがつ勉強してるの、かわいくないかな。」
「んー? 健気だとは思うよー。」
会話に参加していないのに、思わず同意して首を縦に振った。
なんだか頬が熱を持ってきたぞ。
「私、たぶん、思ったよりずっと欲深なの。
いろんなところで、ふたりでいたら、
どんなお顔されるのか、たくさん見たいの。」
……僕は、ずいぶんと果報者だったようだな。
~ミツノ~
屋敷の扉が、いつもより少しだけ大きな音を立てて閉まる。
一見冷静なシラナミさまは、真っ直ぐお部屋へ向かわれる。
以前より少し温厚になられたぶん、表面上わかりづらいけど。屋敷の皆はわかってる。
今日の商談は、滅多にないことに、……まったく成果がなかったのだ。
「ミツノ。」
「……あっ、はい、お呼びですか、メイド長。」
「ぼーっとしない。夜の会食の準備が控えています。
あなたシラナミさまにお茶をお持ちしなさい。
あと休憩がまだだったわね。その後休憩に入って。
会食の準備までにはきちんと動けるように戻っておいでなさい。」
「……あ、あの、……はい。行ってまいります。」
メイド長は、……色々、わかってらっしゃると思う。
お部屋のドアをノックして、お茶をお持ちしましたとお伝えして。
あたたかいお茶をデスクに置いたところで、私は、休憩時間。
「……シラナミさま。あの。」
「……休憩をもらった?」
「……はい。」
「……我が財団の者はほんとうに、仕事が、できすぎて困るな……。」
お茶を口にされているシラナミさまのお顔は、心なしか赤い。
「あの、……私がシラナミさまのことを気にしていたからですよ、きっと。
夜の会食の準備までにきちんと動けるように、と、言われま……!!!」
抱き締められました。
仕事に関してはとても真面目なシラナミさまは、私が仕事中にこんなことはなさらない。
普段なら休憩中でも、私の仕事場である屋敷内では、なさらないけど。
「……お話は、きけますか?」
上ずりそうな声を抑えて聞いてみる。
「……いや、大丈夫。
ミツノがわからないだろうということではないぞ。
こうしているだけで、今日は、大丈夫だ。」
「私でも、わかるお話ですか?」
「口先だけ謙遜めいたことを言わなくてもいい。
普段話していればわかる。かなり勉強しているだろう。
わかってもらえるだろうけど、いいんだ。
こんな合間の時間で、充分すぎるご褒美だ。」
「シラナミさまにばれていたのは、ちょっと恥ずかしいです……。」
「恥ずかしがることなんてない。
勤務のための勉強以上に頑張っているのなら
むしろミツノもご褒美をもらうべきだな。」
「キャンディですか?」
シラナミさまのお祖母さまのお話は少しお聞きしていたから、そう言ってみた。
でも。
なぜか少し離される身体。
さっきより赤い、シラナミさまのお顔。
「ミツノ、ちょっと、……目を閉じて。」
「……!?」
「…………キャンディのかわり。」
かわりに唇に触れたのは、キャンディより、甘い味でした。
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
【ネタバレ】 DQXジューンプライドイベント
【その他】 数字は時系列 各ページ冒頭のキャラ名視点で進行します
つきあってるIFとしてお読みいただければ。
続きを表示