メニューを眺める私達。
さて、何にしようか。
「楓、何がいい? 先に選びなよ」
「いいの? 済まないねえ」
私は過去にも来た事があるから、メニューは大まかにだけど把握してる。
ここは楓に先に見てもらうのが一番だ。
「ふぅむ。多国籍な感じなんだね? どれにしようかな~」
「加藤君は決まった?」
「いや、まだ。色々あるんだな。種類が多いと、かえって選びにくいよな」
その意見はごもっともだ。私だって、最初は迷ったし。
「ま、なんでもいいけど、決まったら教えてね」
「うん」
「おーう」
さて、私はどうしようかな。とりあえず水を一口飲んで…
「…」
脇に置かれた『当店のこだわり』という小冊子を眺める事にした。
「?」
前、こんなのあったっけ。ま、いいか。どれどれ。
「…」
そこには、雰囲気作りに対するこだわりだけじゃなくて、
料理に対するこだわりもたくさん書いてあった。
「ほうほう」
産地直送でコスト削減とか、契約農場で品質管理とか、色々…
今時、こういうのが大事なんだなぁ、としみじみ思うよ。
「えりか~、私決まった~」
「お、ホント? じゃあメニューを見せてくれ」
どうやら、加藤君より楓が先に決めたらしい。
まぁ、それはどっちでもって感じで、先に決まった方にメニューを見せてもらう、
てだけの話だ。
「じゃ、私も選びますかな」
どれどれ。
「ん?」
あれ?
「あれ、メニューって、こんなに多かったっけか…」
「そうなの?」
なんかおかしい。私の知ってるメニューと、なんか違う。
メニューが盛りだくさんになってるじゃん!
こりゃ、選ぶの難航するかも…
船室をイメージした店内だけにね。
~つづく~
メニューを手に何を頼もうか選ぶ私。
でも、前に来た時より大幅にメニューが増えてて、さあ、何を頼もう。
「えっと…」
「ん、えりか、どうしたの?」
「だな。倉橋、顔が変わったけど、どうかしたのか? もしかして、
体調でも悪くなったか?」
え? 体調不良?
「ううん、そういうのじゃないよ」
まさか、体調不良を気遣ってもらえるなんて、意外だわ。
「ちょっとびっくりしただけだから」
メニューの多さにね。
「んー、何にしようかな…悩むなぁ」
「これだけあればねー」
とはいえ、楓も加藤君ももう決めたんだ、早く決めなくちゃ。
「ねえ、二人は何にしたの?」
「え、わたしの意見を?」
「気になるのか…俺は海賊ピザだけど」
海賊ピザ? あぁ、これか。うげ、ボリューム多い!
「で、楓は?」
「私はイカスミリゾット」
く、黒い!
「じゃあ私はそれ以外のにしようかな」
えぇと…決めた!
「楓、決めたから呼び出しボタン押してくれる?」
「いいけど、早いね」
「ああ。びっくりしたぜ」
私の即決、そんなに驚くポイント? 人にはそれぞれきっかけがあるっていうのに。
「二人の選んだメニューを聞いて、これにしようって決めたんだよ」
「ふむ。まぁ、それはそれとして、店員さんは呼んだから」
お、指示通り。よい手際だ。
「じゃ、店員さんが来るのを待とうかね」
~つづく~
なんとかメニューを決めた私。
店員さんを呼んで、さあ頼みましょう!
「えっと…海賊ピザと、イカスミパスタと、ドルチェリゾット、
後は生ハムサラダを。後は…」
私は二人の顔を見て、
「ドリンクバー、どうする?」
「俺はどっちでもいいけど?」
「私も」
ふむ。
「じゃあドリンクバー三人分」
「はい。では、メニューを確認させて頂きますね…」
********
メニューの確認が終わって、店員さんが去って行く。
「ドリンクバー、頼んだんだな」
「うん。ま、そんな大した額でもないしね。さ、みんな好きに飲んでくれい」
「おう」
私は荷物の番をする。楓と加藤君には、先に飲んでもらおう。
「じゃ、楓と加藤君、先に行って来てね。私は荷物番するから」
「悪いな」
「じゃ、行って来るね。あ、それか、えりかの分も持ってこようか?」
ふうむ、私の分か。
「じゃあコーラ持って来て。海賊コーラ」
「海賊コーラ? 何それ」
ふっふっふ、楓は知らなくても良いのだ。ふっふっふ。
「ま、行けば分かるから、よろしく」
「ういー」
「悪いな」
はっはっは。なんて心のの広い女なんでしょ、私ってば。
「さて、何をどうしよう。このわずかな時間が暇なんだよな」
経験上、楓はここで迷う。迷ったあげく、毎回同じものを頼む。それが楓。
「ふむ…」
ま、こういう時はケータイを見るわけだけど。
「なんか面白いニュースでもないかな…」
とケータイを開いてみるも、面白いニュースはない。
「ううむ…」
さて、どうしようか。ちらり、とドリンクバーの辺りに視線を送った。
「あ、楓の奴!」
視線の先では、楓が…楓が!
~つづく~
暇を持て余してドリンクバーの辺りを見た私。
そこでは、楓が驚くべき行動に出ていた。
「楓! なんでジュースをミックスしてるのさ!」
分からない。楓の行動が分からない。
「???」
しかも、加藤君を連れて笑顔で戻って来る。
「お待たせ~♪」
「い、いや、大して待ってないけど…」
はい、と渡されたジュースはコーラ色をしてるけど、妙に濁ってる。
「??? 楓、これ、何?」
「何って、ご所望の品じゃが?」
所望?
「海賊コーラ。よもや頼んだものを忘れたわけじゃないよね?」
「いや、忘れてないけど…これ、明らかに謎の液体じゃん」
「お、俺は悪くないからな? 俺は止めたんだから…」
ほう、加藤君には要らない苦労をかけたのか。
「いやいや、説明不足の私が悪かったよ。楓、海賊コーラっていうのは…」
「ミックスコーラでしょ?」
なんて間髪を入れない言葉。
「いや、そうなんだけど…作り方、見た?」
「作り方? ただミックスするとしかあそこにはなかったけど…」
「そんなのあったのか…」
げ、見てなかったの? なんて事!
「じゃあ、これは?」
「んー、フィーリングで適当に…」
て、適当って、そんな! なんて危険な!
「楓~!」
「まぁまぁ」
「お、俺は止めたんだ! 俺は!」
ぐぐぐ…私は拳を握りしめた。
「と、とりあえず、この謎のジュースには罪はないからね、飲まなきゃ…」
飲まなきゃ次のジュースがいられない…
「っ!」
ぐぐいっと! 飲み干してやる!
「!」
こ、これは!
~つづく~
謎のドリンクを飲んだ私。
その味たるや!
「っ! ~~~っ!」
「ごくり。…どう?」
「ど、どうだ?」
こ、これは…
「意外と美味しい!」
「え? 本当?」
「まじかよ…」
見た目はコーラ+濁り気。でも、味はコーラベースのさわやか風味。
「これは意外。まさか意外と美味しいだなんて…」
「作った私も意外だったよ~」
「作った本人も、て。それを言うのかよ…」
でも、「意外と」てレベルなのも事実なんだけどね…
「一応、美味しそうな物を選んで混ぜたんだけどねー」
「そこ、自慢げに言わない」
本当の海賊コーラはもうちょっと美味しいんだ。
「いや~、結果よければ全てよし、じゃだめ?」
「上手くまとめようとしないでくれる~?」
「いや、でもまぁ、激マズじゃなくて良かったよな」
加藤君のフォローが、妙に心強い。
「ま、ちょっと変な飲み物だろうけど、一件落着って事で…いいじゃねえか」
「うーん…」
私は軽く腕組みをしたけど、確かにそうかも。
「じゃ、意外と美味しかった事でお手打ちにするよ」
「ホント? やった~!」
楓の声は、お店中に響き渡った。
~つづく~
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