ガラスの指輪……
昔、君に買ってもらった大切な宝物……
今でも時々、眺めては昔を思い出す指輪……
私が挫けそうになった時や、なにかを諦めそうになった時、必ず勇気をくれた指輪…
ねぇ、キャロくん……この指輪覚えてる。
その日、光はキャロに誘われて、小物屋でデートを楽しんでいた。
今日は、ガラス物フェアーらしく、色とりどりと飾られたガラスの装飾品や置物が、所狭しと並べられていた。
だが、お世辞といって、値段のほうはおまけができない価格になっており、二人とも、ただ見て楽しむ程度のデートだが、不思議と悪い気分はしなかった。
いくつもあるガラス製品に光はその大きく綺麗な目をウットリさせ、吐息を漏らしていた。
「キレイ……」
キャロもどこか、嬉しそうに光の横顔を眺め、ニカッと微笑みを浮かべた。
「光は本当にガラス物が好きなんだな?」
「うん。こぅいうのって宝石より、綺麗だと思わない?」
「う~~ん」
一瞬、光の瞳のほうが、ずっと綺麗だと、言いかけてしまい、キャロは口を押さえた。
口説き文句じゃなく、本気でそぅ思ってしまったからだ。
まるで、子供が大好きなおもちゃを見ているような無邪気な瞳は、光の心そのものを表してるようで、キャロも自然と目を離せなくなってしまっていた。
「どうしたの、キャロくん。そんなにジッと見つめて?」
ポッと頬を染める光にキャロも慌てて言い訳を考え、首を横にふった。
「い、いや、なんでもない……それより、光は本当にガラス細工が好きだよな。なにか、キッカケでもあるのか?」
「え……!?」
予期せぬ質問に光は言葉を失い、顔を赤らめてしまった。
少しだけ、俯き、彼に聞こえるか聞こえないか程度の声をつぶやいた。
「だって……君が最後に……」
「ん……?」
光の言葉がよく聞こえず、聞き返そうとするキャロに光は慌てて首を上げ、いった。
「なんでもないよ。それより、どこか違うところに行こうよ! ほら、店員さんも睨んでるし?」
すでに一時間近く、同じ場所にいて買う気配のない二人に怪しげな目を向ける店員に、光は急いでキャロの手を握り、店を後にしようとした。
「おい、引っ張るなよ?」
慌てて引っ張る光に、キャロも呆れたような顔をし、首を少しだけ、明後日の方向へと向けた。
「それじゃあ、映画を観に行こうぜ。今、『世界の中心であなたを愛します』がやってるぜ?」
「え、本当。見たかったんだ?」
嬉しそうに手を合わせる光にキャロも握られてない手の親指で映画館のある方向を指差し、いった。
「じゃあ、早速、行こうぜ。早く行かなきゃ、いい席、取られちまうし?」
「うん!」
握った手を離さないまま、光はキャロを引っ張りながら、走り出した。
キャロも光の歩幅に自分の歩幅を合わせ、走り出し、映画館へと向かった。
不意に光はキャロの顔を見て、先ほど言えなかった言葉を、そっとささやいた。
キャロくん……
本当はね……
ガラスの小物が好きになった原因ね……
君のせいなんだよ……
小さい頃、縁日で君があの指輪を買ってくれたから……
最後に君が私にプレゼントしてくれたのが、ガラスの指輪だから……
私はガラスの小物が好きになったんだよ……
キャロくん……
あの指輪……
覚えてる……
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かなり前に書いた、光ちゃんがガラス物が好きになった原因を書いた小説です。出来は、まぁまぁじゃないかと自負しております。光ちゃんファンなら読むべし!