No.110548

恋姫ランド26 一姫✝無双・魏~新三国志演義~七話目

さん

桂花「華琳様」
華琳「桂花、しばらく一人にしてくれないかしら?」
桂花「はい……」

扉に手をかけた桂花に華琳が声をかける。

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2009-12-05 01:15:25 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:7521   閲覧ユーザー数:6088

街を襲っていた黄巾党を倒し私達は

 

新しい仲間と共に城に帰って来た。

 

華琳に仕える事になった流琉、

 

そして、文官志願の女性がやって来た。

 

でも、その人は……その人は………

 

 

 

 

 第七話「滅びゆく者ともう一人の王」

 

一姫「はああーーーっ!」

 

ブンッブンッ

 

私は中庭で朝の鍛練をしていた。

 

司馬芝「精が出ますね」

一姫「司馬芝さん」

司馬芝「あら、白花(はくか)という真名は預けた筈ですが?」

一姫「あ、御免なさい。おはようございます、白花さん」

白花「華琳様がお呼びですよ、玉座の間に全員集まるようにとの事です」

一姫「分かりました、すぐに行きます」

 

私は訓練用の槍を置いて歩き出した。

 

白花「あの、一姫さん」

一姫「はい、何でしょうか?」

白花「そんなに堅苦しい話し方ではなくもう少し気楽に話してもらえませんか」

一姫「で、でも、何と言うか…」

(お母さんにそっくりだからとは言いづらいし)

 

そんな私に白花さんは軽く笑って言った。

 

白花「では、私も分をわきまえて御遣い様とお呼びしますね」

一姫「わ、分かったわよ、行きましょ白花さん」

白花「はい、一姫さん。くすくす」

一姫(何か調子が狂うな)

 

私達が玉座の間に入るとすでに皆が集まっていた。

 

一姫「遅れて御免なさい。それで何かあったの?」

華琳「二人とも来たわね、実は凪が黄巾党の拠点の情報を手に入れて来たのよ」

一姫「へえ、お手柄じゃない凪」

 凪「い、いえ、たまたまですよ」

白花「では、遂に」

華琳「ええ、これ以上奴らをのさばらせておく気はないわ。決戦よ」

 

全員『御意!』

 

 

 

 

 

黄巾党の拠点を攻めるために軍を進めていると同じく黄巾党と闘っているという義勇軍を見つけた。

その義勇軍を率いているという人物の名を聞いて驚いた、何しろあの「劉備」なのだから。

 

華琳「貴女がこの義勇軍を率いているのね」

劉備「はい、私は劉備、字を玄徳といいます」

関羽「私は関羽、字は雲長です」

張飛「鈴々は張飛、字は翼徳なのだ」

諸葛亮「はわわ、わ、私は諸葛亮、字を孔明といいましゅ」

鳳統「あわわ、わ、私は鳳統、字を士元といいましゅ」

 

一姫(…もう大抵の事では驚かないつもりだったけどこの時点で蜀の二大軍師が陣営に加わってる

   なんて…私の知識もあまり役には立ちそうにもないわね)

 

華琳「私は曹操、字は孟徳。この軍を率いる者よ」

春蘭「私は夏候惇、字は元譲。華琳様一の忠臣だ」

秋蘭「私は夏候淵、字は妙才だ」

桂花「私は荀彧、字は文若よ」

白花「私は司馬芝、字は子華です」

一姫「私は北郷よ。字はないわ」

 

私の名を聞くと彼女達の顔色が変わった。

 

劉備「あ、貴女が天の御遣い様なんですか?」

一姫「ええ、そうだけど」

関羽(この方が……何故桃香様ではなく曹操殿の所に…)

 

 

真桜「隊長、大変や!」

一姫「あら、どうしたの真桜?」

沙和「そ、それが、あの~」

一姫「?」

 

私が首をかしげていると凪が一人の女の子を連れてきた。

さやちゃんを。

 

一姫「さ、さやちゃん?何でさやちゃんが?」

 

 凪「どうやら荷物の中に紛れ込んでいたようです」

 

さやちゃんは申し訳なさそうな顔をして呟いた。

 

鞘花「あ、あのね、さや、さびしかったからついてきちゃったの。おねえちゃんといっしょに

   いたかったから……」

 

そんなさやちゃんに私は…

 

一姫「馬鹿!!」

 

ビクッ

 

いきなり怒鳴られるとは思ってなかったのかさやちゃんはただ呆然としていた。

 

一姫「こんな所に着いて来るなんて何を考えてるの!此処は貴女が来るような所じゃないのよ!」

 凪「か、一姫様、もう少し優しく言われては…」

一姫「貴女は黙ってなさい!!」

 凪「は、はっ、申し訳ありません」

 

そう言って凪は沙和達の所まで下がっていった。

 

真桜「うひゃ~、隊長マジで怒ってるで」

沙和「あんなに怖い隊長初めて見たのー」

 凪「それだけ鞘花ちゃんを心配なさってるのだろう」

 

鞘花「…う、うう、ぐすっ、ひっく」

 

さやちゃんはぐずりながら目から涙をぽろぽろ零していた。

 

一姫「此処はね、人と人が闘う所なの。…人が、…死んでいく所なのよ……

   忘れたわけじゃないでしょ、貴女のお母さんが殺された事を」

鞘花「!!か、かかさま……」

 

さやちゃんにお母さんの事を思い出させる事は身を切るように辛いけど伝えなければいけない。

分かってくれると信じて。

 

白花「・・・・・・」

 

一姫「貴女のお母さんのような人を一人でも無くすために私達は闘ってるの、その為には私達が敵と

   闘わなければならない……敵を、殺さなければならないの……」

鞘花「ひっく、ひっく」

一姫「でもさやちゃんにはそんな人が死んでいく所を見せたくない、人を…殺すところを……

   見られたく…ないの……」

鞘花「お、おねえ…ちゃん……」

 

いつの間にか私の目からも涙が零れていた。

 

一姫「お願いよ…こんな無茶は、しないでよ……こんな所でさやちゃんが傷ついたりしたら…私、

   私は……」

鞘花「ご、ごめんなさい…ひっく、ごめんなさぁい……うわああぁーーーん、あ、あやまるからぁ、

   きらいにならないでぇ…き、きらいになっちゃやだあーーー、うえええーーーーん」

 

泣きだしたさやちゃんを私は優しく抱いた。

 

一姫「馬鹿ね、嫌いになるわけないじゃない。私はさやちゃんが大好きよ、大好きだから怒ったのよ」

鞘花「えーーん、えーーん」

 

鞘花も一姫に抱きついて泣きじゃくっている。

華琳達はそんな二人をじっと見ていた。

 

桂花「華琳様、どうなされますか?」

華琳「一姫には悪いけど鞘花一人を送るために割く兵はいないわ。このまま連れて行くしかないわね」

白花「そうですね、むしろここで帰すより一緒に連れていく方が安全かもしれません」

 

 

 

 

張飛「あんなに怒る事ないと思うのだ」

関羽「それは違うぞ鈴々、大事な存在だからこそ怒る時には怒らねばならないのだ」

劉備「そうだよね、でも大好きな人と一緒に居たいっていう気持ちも分かるかな」

 

そうして劉備達の義勇軍と合流した華琳達は黄巾党の拠点へと向かって行った。

 

 

 

 

一姫「いい、絶対にこの天幕から出ちゃダメよ」

鞘花「うん、わかった」

 

鞘花を天幕に残して一姫は戦場へと向かう。

 

 

 

春蘭「うおおおーーーー!」

季衣「うりゃあーーーー!」

流琉「はああーーーーー!」

春蘭が敵の中に斬り込んで行き、季衣と流琉が周りを取り囲む敵をなぎはらって行く。

 

真桜「ウチの螺旋は悪を砕く螺旋や!」

沙和「貴様ら悪党が息をするなんて一億年早いのーー!」

凪「この大陸の平和の為に貴様らには滅びてもらう!」

 

三羽烏の連携に黄巾の兵達は太刀打ち出来ずに倒されていく。

 

秋蘭「奴らを人と思うな、ただの動く的と思え!」

 

秋蘭は弓隊を率いて敵兵を射抜いていく。

 

 

関羽「さすが噂に聞く曹操殿の軍、いくら我々が義勇軍とはいえここまでの差があるとはな」

張飛「なに弱気な事いってるのだ!鈴々達だって負けてられないのだ!」

劉備「…でもここまでやらなきゃいけないのかな?あの人達だって…」

 

一姫「あの人達だって何?」

 

劉備「え?…あ、御遣い様…」

関羽「北郷殿」

張飛「うにゃ?」

 

黄巾と闘いながら此処まで来たのだろう一姫は肩で息をしていた。その槍はいまだ封印されたままだがひび割れは全体に広がっていた。

 

一姫「もし、奴らに対して可哀想なんて感情を欠片でも持っているんなら今すぐ此処から

   居なくなって」

劉備「え……あ、あの」

関羽「北郷殿!桃香様はそんな軽い気持ちでこの闘いに臨んでいる訳では」

一姫「だったら迷わないで、私達が迷えばそれだけ救える人が減るのよ。

   気持ちはわかるけど奴らが一人生き残れば罪のない人が十人死ぬ、そう考えて闘うしかない。

   少なくとも私はそうしているわ」

 

劉備は何も言えなくなった、一姫の瞳に目には見えない涙を見た気がしたから。

 

一姫「じゃあ私は行くわよ」

 

そう言って一姫は敵の本陣へと走って行った。

 

張飛「あ、ずるい。みんな!鈴々達も行くのだ、突撃・粉砕・勝利なのだーー!」

義勇軍『応ォォォォォーーー!!』

 

劉備「・・・・・・」

関羽「桃香様、貴女の優しさはとても尊いものです。貴女は間違っていません、ですが北郷殿も

   間違ってないのもまた事実です。だから桃香様は桃香様の信じる道を御歩きください、

   我々は何処までも桃香様について行きます。では私も行ってまいります」

 

 

劉備は戦場へと駆けていく関羽の背中を見ながら一姫の言葉を思い出していた。

 

『私達が迷えばそれだけ救える人が減る』

 

劉備(分かってる、分かってるつもり。でもやっぱり……)

 

 

 

 

 

一姫「はああーーー!」

 

ドガアァァッ!

 

黄巾兵「ギャアアーーー!」

 

一姫は敵の真っ只中で闘っていた。そこには確かに以前のような迷いは無かった、そして迷いを捨てた時から一姫の闘い方は変わっていった。

 

関羽「なんと無駄のない動きだ、まるで鳥が空を舞うように動いている」

 

『うおおおおーーー!』

 

関羽「何だ!」

 

張宝「俺の弟を殺した御遣いとやらは何処だーー!」

 

関羽「あれは張三兄弟の一人か、おそらく張宝という奴だな」

 

そして関羽は張宝の前に立ちはだかった。

 

関羽「待て!北郷殿はゴミ掃除で忙しいらしいからな、私が相手をしよう」

張宝「貴様のような小娘が俺の相手をするだと?身の程知らずめが!」

関羽「身の程知らずはどちらか教えてやろう、代金は貴様の命だ!」

 

関羽に斬りかかる張宝だが武と心を併せ持つ関羽相手に力だけに頼る張宝が勝てるはずもなくあえなく敗北することになる。

 

関羽「張三兄弟の一人張宝の首、劉備が家臣関羽が討ち取ったりーー!」

 

黄巾兵『そ、そんな…張宝さまが』『強すぎる、勝てるわけがねえ』

   『張角様は、張角様は何処だーー』

 

春蘭「今まで散々好き勝手に暴れまわって来た貴様らだ。今更助けてもらえるとは思わぬ事だな、

   皆の者――!こ奴らを殺しつくせーー!」

曹操兵『応ォォォォーーーー!』

黄巾兵『ギャアアアーーーーーー!!』『張角様――!助けてーー!』

 

 

 

 

 

阿鼻叫喚の悲鳴の中、曹操軍の兵が黄巾の天幕の中に居た。いや、兵の鎧を着けた男が。

 

張角「糞っ!役立たず共が。まあいい、これさえあればもう一度…」

 

華琳「あら、早いわね。もうこんな所まで探索に来ているなんて、ところで張角は何処かしら?」

 

男が太平要術を持ち去ろうとしていると、華琳と桂花・白花の三人が天幕に入って来た。

 

張角(なっ!こんな時に曹操だと、いや、いかに曹操といえども警護の兵を連れずに女三人だけならどうとでもなる)「これは曹操様、張角の姿は何処にも見えません。おそらくまだ戦場にいるかと。では私も戦線に戻ります」

 

そう言い逃げようとするが当然華琳の目を誤魔化すことは出来なかった。

 

華琳「そんな猿芝居がこの曹孟徳に通じると思っているのか!覚悟を決めろ張角!」

張角「…覚悟を決めろだと、大人しく見逃せばよかったものを。手土産代わりにその首もらっt……」

 

ザシュッ

 

言い終える前に張角の首は絶によって胴体から切り離されていた。

 

ドサッ

 

白花「最後まで愚かな男でしたね。ともかくこれで黄巾党も終わり、たとえ逃げ延びた兵が居たとしても今までのような統率は出来ないでしょう」

桂花「ええ、太平要術のない奴らはただの野盗、駆逐するのに造作もありません」

華琳「さあ、張角の首だけ持ってさっさとこんな所出ていくわよ」

二人『御意!』

 

 

 

 

一姫「華琳――!」

華琳「一姫、そっちは終わったの?」

一姫「ええ、張角は?」

華琳「これよ」

 

そういって包みを見せた。

 

一姫「そう、これで黄巾の乱もようやく終わりね」

華琳「そうね」

 

 

関羽「曹操殿、張角を打ち取られたそうですね」

華琳「そういう貴女は?」

 

華琳は関羽のもっている包みを見ながら聞いた。

 

関羽「はい、私も張宝を打ち取りました」

張飛「愛紗のずるっこーー!張宝は鈴々が討ち取る予定だったのだ!」

関羽「な、ずるはないだろう、ずるは」

劉備「あはは」

 

 

諸葛亮「あ、あの、曹操さん。その、太平要術は…」

 

華琳「太平要術?白花」

白花「はい、此処に」

 

白花は数冊の本を取りだした。

 

鳳統「あわわ、これが太平要術…」

 

華琳「白花、解るわね?」

白花「御意」

 

一礼すると白花は太平要術を燃え盛る火の中へと放り込んだ。

 

諸葛亮「はわーーー!な、何を…」

 

華琳「何をと言われても奴らに利用され汚れきった書物など私には必要ないわ。それとも貴女達には

   必要だったのかしら?だったら悪い事をしたわね」

 

諸葛亮「い、いえ、しょんなことは…」

 

華琳「じゃあ、私達は帰るわね。また何時か会う事もあるでしょう」

 

 

劉備「あ、あの、御遣い様」

一姫「その御遣い様っていうのやめてくれない。なんか柄じゃないから」

劉備「じゃあ、北郷様。不躾なお願いですけど私達の力になってはもらえませんでしょうか?」

一姫「たしかに不躾ね。私は華琳に仕えてる身よ、軽々しく主を変えられると思う?」

劉備「そ、そうですよね、勝手な事を言ってすみません」

関羽「しかし、何故北郷殿は曹操殿の下に?」

一姫「最初に華琳に保護されたというのもあるけど今は私自身の意思で華琳の所に居るわ。もし私が

   本当の意味での天の御遣いだというのなら天が選んだのは華琳ということになるわね」

劉備「!!・・・・・」

一姫「じゃあね」

 

そうして一姫は曹操軍の陣へと帰って行った。

 

 

鞘花『おねえちゃーーん』

一姫『さやちゃん、お城に帰ったらお尻ペンペンだからね』

鞘花『え~~、やだーー!』

一姫『ダメよ、いい子でお留守番する約束を破ったんだからね』

鞘花『う~、かりんさま~』

華琳『あきらめなさい』

鞘花『え~ん、え~ん』

 

 

 

関羽「桃香様…」

劉備「大丈夫だよ…私、頑張るから」

張飛「その意気なのだ、お姉ちゃんには鈴々達がついてるのだ!」

諸葛亮「はい、桃香様は私達がお支えします」

鳳統「わ、私達も頑張りましゅ!」

劉備「有り難う、皆」(北郷様、私は諦めません。必ず築いて見せます、私…いえ、私達の理想の世界を)

 

 

 

こうして黄巾の乱は終結した。そして一姫ともう一人の王との邂逅はこの乱世に何をもたらすのか?

それは今は誰にも解らない。

 

 

続く

 

 

 あとがき

 

はあ~~、ひどい難産だった。二カ月かけてようやく更新です。

黄巾党編もこれで終結、物語は反董卓連合編へと進みます。

蜀√と違い桃香達は義勇軍を率いてますがこれはやはり桃香達は一刀(一姫)が居ないと

ダメダメだという描写のつもりです。

そして司馬芝(白花)ですが彼女の謎は物語の中で明かされて行きます。

董√ですが、ラウンジでジョン五郎さんが聞いてますが一姫と一刀はそれぞれ別外史の存在です。

そして別々の勢力に属して一刀もけっこう強くなります。

まあ、先に呉√を書くことになりますが。

 

次回は何と…一姫が……

 

 

 

 《次回予告》

 

黄巾の乱も収まり私達は新たに徴兵をする事になった。

 

「私に良い案があります」

 

「どんな案かしら?」

 

「ゴニョゴニョ」

 

「お姉さまが!素敵」

 

「いいわ、許可します」

 

「では彼女達を呼び寄せます。彼女達と合わせて四人なら」

 

 

 次回・第八話「乱世に響く歌姫達の歌声に」

 

「ちょっと待って、四人?」

 

 

みんな見てねーー!愛してるよーー!

 

 

 


 
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