No.110188

真・恋姫†無双 金属の歯車 第十七話

真・恋姫†無双をベースにとある作品の設定を使用しています。クロスオーバーが苦手な方には本当におすすめできない。
・俺の◯GSを汚すんじゃねぇって方もリアルにお勧めできない。
・ちなみにその設定は知っていれば、にやりとできる程度のものです。
・この作品は随分と厨作品です
・過度な期待どころか、普通の期待もしないでください。

続きを表示

2009-12-03 00:21:38 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:3298   閲覧ユーザー数:2995

「戻ったぞ、華琳」

 魏軍は彭城に駐屯していた。

見事なまでに書類や備蓄されていた物資は何一つ残っていない。まさに立つ鳥跡を濁さずだ。

その彭城に魏の御遣い、ケイン・ウェルナーが帰還する。

「仕留めたの?」

 彭城を査察していた華琳がケインの無事を確かめた。

正史の服装である黒スーツはどこも焦げていなかった。

「豪快な引き際だったよ。まさか川に飛び込むとはな」

「私はそんなことを聞いているのではないわ」

 端から見れば怒っているように見えるが当人は至って普通だった。

ケインはそれをわかっているのか飄々と返した。

「生きているさ。おそらくどこかに筏を隠して・・・今頃川を下るなりしているだろう」

「あら、じゃあ都合が良いわ」

「ほう、劉備を取り逃がしたからには・・・面白くしてくれるのだろう、覇王?」

 

 第十七話 御遣交錯 ~Be Ultramundane~

 

 

「こんの、ど阿呆!!」

 所変わって呉では玲二の怒声と共に一刀の頭に拳が降りかかっていた。

一応悪いことをしたという自覚があるのか、それを甘んじて頭で受け止める。

「お前な!たまたま呉の水軍が通りかかって蓮華・・・じゃない孫権が乗ってなかったらどうするつもりだったんだ!」

「お前がいるだろう」

 頭をさすりながら玲二に顔を向ける。

「俺がいなかったらどうするつもりだったんだよ!」

「幸い孫策殿と周瑜殿とは顔見知りだし黄蓋殿とも面識はある。それに周泰殿とは一緒に戦った仲だ」

「ああいえばこういう・・・お父さんはそんな子に育てた覚えはないぞ!」

「そんな義理はないが、正史で私が貸した昼飯代十三回返してくれれば少しぐらい恩義を感じてやろう」

 随分と的確な数で痛いところを突かれたのか、小さなうなり声を上げて部屋を退出する。だが少し肩が怒り肩だ。

「はははっ、本当に仲が良いんだな」

 横で顛末を観察していた孫権が笑い声を出す。

「私はこんな性格だが・・・あいつの人柄だよ」

 ケインとの死闘から数日、長江を筏で下り呉にたどり着いた。

たまたま呉の水軍と遭遇し、その船には孫権が乗っていた。そこから本拠地である建業に案内された。

一刀の怪我で酷いものはなく、顔には右目を隠すように包帯が巻かれているが、右目の上を少し斬っただけだった。

自分の無事を桃香達に知らせるための伝令を送って欲しいと玲二を呼び出したのだ。

結論として怒らせてしまったのだが。

「確かに私も・・・最初にあいつにあったときは飄々としてつかみ所がないと思っていたが・・・」

「そう見えて思慮深くて判断力に長ける。それでいて周りへの気遣いを忘れない・・・ってところか?」

「よくわかっている」

「そりゃ、貴女達よりつきあいが長いからな」

 そう小さく笑った。

目の前の孫権を初め、呉の将は皆優しく出迎えてくれた。同盟国君主のお目付役だからかもしれない。しかし呉の軍全体がいい雰囲気を醸し出しているのだ。

規律には厳しいが、その分情に篤い。しかし有事には虎のように勇猛になる。そんな印象を受けていた。

「そうだ、北郷殿。少し散歩でも?貴方に会いたがっている妹がいてな」

「部屋の外にいる気配はそれか」

 一刀の一言に扉が開け放たれ、鈴々くらいの歳の少女が入ってくる。

「なーんだ、わかってたんだ」

「妹君ということは・・・孫尚香殿か?」

「そんな長い名前で呼ばなくて良いよ、私はシャオ!よろしくね!」

 

 

「玲二、時間ある?」

「なんだ?逢い引きのお誘いか?」

 一方玲二は弟分の手痛い反撃に良心の呵責を攻められうなだれているところだった。

そんなところに雪蓮が微妙な表情でこちらを見ていた。今まで玲二に見せたことのない表情だった

「そうよ」

 玲二は雪蓮に誘われ、王座の間を出て城外へと向かった。

そして二人は城から少し離れた森の中にある小川へとやってきた。

「ここにね母様が眠っているの」

 ここに三姉妹の母親である孫堅で眠っている。

質素な造りであったが手は行き届いており、十分に威厳を備える物だった。

「綺麗にしてあるんだな」

「ええ、怒られちゃうから」

「・・・どんな人だったんだ?」

「そうね・・・」

 雪蓮は淡々と語り始めた。

しかしその二人に暴走した何かが迫ろうとしていた。

 

 * *

 

 一刀は嫌な予感がしていた。

つい先ほど小蓮の案内で建業の中を案内してもらっていた時だ。瀕死の伝令が城に転がり込み、曹操軍奇襲の報が入ってきたのだ。

呉の陣営に保護されている最中に魏軍が攻めてきたとなると、さすがに自分の保身を計らなければならない。

魏の侵攻の知らせを受けた後も、呉の将達は侵攻される理由よりも侵攻された事自体が気に入らないらしく、気にするなの一点張りだった。

それでも一応雪蓮に知らせた方が良いだろう、ということで伝令ついでに城を出てきた次第だった。

しかしこんな時の嫌な予感は当たる物だった。

明らかに大きな殺気を感じ、教えてもらった孫堅の墓前に急いだ。

開けた先には川が見えたが、その川沿いに倒れている玲二とそれを抱えている雪蓮が見えた。

そして対岸には何人かの兵士。

「・・・」

 一刀は逃げる兵士に何もせず、玲二と雪蓮に歩み寄る。

「状況から見てほぼ毒矢だろうな」

 雪蓮は玲二の患部を噛みきろうとしている。応急処理としてはもっとも適切だろう。

雪蓮が肉の塊をはき出した後、袖の下に入れてある応急手当の道具から、消毒用にいれておいた度数の高い酒を患部にかける。

「があっ!」

 玲二の口に雪蓮の手が宛がわれていた。猿ぐつわのつもりだろう。

「念のため、貴方も消毒しておきなさい。孫策」

「・・・雪蓮でいいわ」

「あ、ああ・・・」

 落ち着いた玲二は雪蓮の手から口を離しうなだれる。どうやら気を失ったようだ。

その様子をみた雪蓮が消毒のためか手を差し伸べてくる。自らの真名と共に。

「・・・本当に玲二と仲が良いのね」

「出会って二日で背中を預けられる戦友だよ」

「それ、玲二も言ってた」

 差し伸べられた手に酒をかけると、さすがの雪蓮も染みるのか苦い顔を浮かべる。

それでも小さく笑いを浮かべ、玲二の頭を優しく撫でる。

「お姉様!北郷殿!・・・これは一体」

「孫権殿!今すぐこの役立たずを運んでくれ!それと毒に詳しい医者も呼んできてくれ!」

「曹操・・・!」

 魏の軍勢はすぐそこに迫っていた。

しかし雪蓮は曹操の頸のみを狙い始めていた。

 

 

 雪蓮が魏軍迎撃の準備を始めた時、一刀は玲二の私室にいた。

一刀は玲二の部屋に置いてあった正史の武器を物色しているところだ。

「シャオ、玲二をしっかり見ていてくれ。こいつのことだ、すぐに出たがる」

「待て、北郷殿。貴方が出る義理はない」

 玲二が心配だったのか、その横には孫権もいる。

「そうだよ、呉と魏の戦いなんだから」

「私がここで傍観を決めつけると・・・ヘタをすれば反撃で呉が壊滅しかねん」

「そんな馬鹿な!?」

 孫権が声を荒げる。しかし戦った経験がある者と無い者の差は激しい。

敵を知り、己を知らば、百戦危うからずだ。

「奴が・・・来る!」

 

 * *

 

 孫策と曹操の舌戦。そして孫策暗殺未遂の暴露。

曹操の珍しい焦りは彼女に謝罪させるほどのものになったが、呉の怒りはその程度では収まらなかった。

たった一部の暴走によって魏軍は虎の怒りを買い一心不乱に撤退を開始していた。

呉はそれを追撃する。しかし呉の精鋭部隊である黄蓋率いる部隊が足止めを喰らって前進することができなかった。

・・・そう、たった一人の男に何千という兵が止められていたのだ。

「・・・貴公が殿か?」

 とうとう将である黄蓋が前に出るほどだった。

目の前には見たことのない黒衣を纏った男だ。手には節が付いた剣を持ち、足下には人の山が形成されていた。とはいえ何割かは気を失っているだけだ。男の攻撃を受け止め損ねた者達が、物言わぬ物になってしまったのだ。

「これはこれは・・・黄蓋殿とお見受けする」

 死体に敬意を払うようにを避けて黄蓋に近づいていく。

「さて・・・殿である以上仕事は最大限に果たしたが・・・・」

 ケインが剣先を黄蓋に向ける。

「土産の一つくらいあってもいいか」

 その言葉が終わると同時に天の御遣いは大きく跳躍する。

人外の跳躍力を予想していなかった黄蓋は反応が遅れてしまい、結果ケインに矢は三射程度しか放てなかった。

そんな黄蓋にケインは一気に近づき、下段からの大きな一振りで黄蓋の得物である弓をはじき飛ばす。

黄蓋はすぐさま弓に手を伸ばすが、ケインは既にそれを殺せる立場だった。

「呉も私を愉しませてくれる者はいない・・・か」

 完全に黄蓋を圧倒した狐は、無情に彼女の首を狩ろうと蛇腹剣をうならせる。

しかし伸びきったそれを受け止めたのは一刀だ。

「一刀・・・やはり長江を下っていたか」

「黄蓋殿、大丈夫か?」

「むう・・・済まない」

 二人の脇を周泰と甘寧が走り抜ける。

その先には魏の殿をつとめる天の御遣い、ケイン・ウェルナーだ。

「四対一でも勝てるか微妙だな」

「そんなに強いのか?」

「あれを形容するには強いとかじゃ足りませんな。そう・・・伝説と例えますか」

 丁度甘寧と周泰が吹き飛ばされた。援護に行くのは丁度良いだろう。

右目を隠していた包帯を取り去り、両の目で敵を見据える。その先には不敵な笑みを浮かべる狐が居る。

「黄蓋殿、援護をお願いします」

 刀で横凪でケインに斬りかかる。

ケインはそれを軽々と受け止め、一刀に顔を近づける。

「どうした・・・この程度か!」

 サイボーグと生身では力に差がある。分が悪く弾かれてしまう。

しかしその隙を補うように黄蓋が矢を浴びせる。ケインはそれを避けるなり、剣で叩き落とすなり、手で掴むなりで対処する。

「むう・・・」

 黄蓋がバツの悪い顔を浮かべる。弓に自信はあったがこうも容易く対処されると立つ瀬がない。

ケインは矢の対処が終わると前衛三人の攻撃に晒される。正面は一刀、右手は周泰、左手は甘寧だ。

一刀が慣性を乗せた横凪を浴びせ、甘寧、周泰もそれに続く。ケインはそれを全て弾き、周泰に襲いかかる。

「早・・・」

「違う、遅い!」

 弾かれたことにより体勢を一番大きく崩していたのは周泰だった。伝説はそれを見逃さず各個撃破をもくろむが、戦法を読んでいた一刀が剣を受け止める。

黄蓋がそれを間合いを開けさせるために矢を三射するが何れも大きく後ろに飛び、四人が見える位置まで下がる。

「さすがにきつい・・・か?」

 何よりきついのは連携が取れていることか、呉の将三人はともかく一刀が攻守にわたっていい働きをしている。

「愉しめそうだ」

 ケインの剣が伸びた。目標は一刀。

一刀は反射に近い反応で剣先を受け止めようとするが、ケインの狙いは違った。

蛇腹剣は高周波ブレードとはぶつからず、ブレードに巻き付く。

「しまっ・・・」

 そして既に斬りかかってきている甘寧と周泰の上を大きな跳躍でかわし、一刀に一気に迫る。

空中で黄蓋の矢が数発飛んできているが気にも留めず、一刀の目の前に着地、蛇腹剣が元の姿に戻りそれを一刀に向かって大きく振りかぶる。

それに応じるように一刀はそれを受け止め鍔迫り合いの形になる。

「強くなったな、一刀!何がお前を強くした!!」

「あんたを叩けば曹操の覇道は潰える」

「はっ!お前と何が違う!お前の劉備も覇者になろうとしているではないか!」

「違う!」

 受け止められた刀を強引に振り下ろし、彼我の距離を開ける。

「桃香に覇道は歩ませない!桃香が進む道は王道だ!!」

 一気に決着を付けるために両眼を手のひらで隠す。

天の御遣いが化け物に変わる瞬間だ。

 

―――!!

 

 咆吼。周囲にいる人間が得体の知れないの畏怖に膠着する。

「なんじゃ・・・この妖気は」

「くっ・・・」

「あわわわわ・・・」

「来い、一刀!」

 その中でケインは只一人、この恐怖を愉しんでいた。

一刀がケインに向かって飛びかかり、ケインがそれを受け止める。

「いいぞ、この感覚!」

 その後は人外の剣劇であった。

既に戦士として一人前である周泰と甘寧、歴戦の宿将黄蓋ですらその剣劇に付けいる隙はなかった。

一刀は逆手に持った高周波ブレードと拳、裏拳、掌底、手刀。そして蹴り。

それに対してケインはそれを全て蛇腹剣で受け止めるなり受け流す。

化け物に僅かな隙を見いだし、蛇腹剣を鞭のようにしならせ、一刀を吹き飛ばす。

その一撃をブレードで受け止めた一刀は、間合いを空けさせないために高周波ブレードを地面に突き刺し踏みとどまる。

その間にケインは大きく跳躍し一刀に斬りかかった。

地面に突き刺さった得物を引き抜き、鍔迫り合いとなる。

一刀の顔は化け物の王。ケインの顔は愉しみの絶頂だった。蛇と狐が噛みつきあう。

そしてお互いの攻撃の瞬間が同時となり鍔迫り合いになった瞬間だ。

 

 銃声が響き、二匹が同時に大きく間合いを空ける。

 

「悪いな、旦那。水差しちまって」

 玲二がFive-seveNをこちらに向けている。顔色は悪く、無理に戦場に出てきたようだ。

「・・・引っ込んでいろと言ったはずだが」

 一刀の目は既に白に戻っていた。小蓮に縛り付けるように言い聞かせたがどうやら出てきてしまったらしい。

一方のケインは懐かしそうに玲二を見ている。

「久しいな、ジェームス。うちの半端物が厄介をかけたな」

「外史はこのご時世だ。暗殺なんざザラだと思うぜ」

「こちらで処分させてもらったが・・・済まなかった」

「さっき言ったとおりいいってことよ、旦那。とりあえずここは俺の顔に免じて退いてくれないか?」

「承知した。身体には気をつけてくれ」

「待て、伊達!ここでみすみす逃がすというのか!?」

 甘寧がケインに向かって構えたまま玲二に叫ぶ。

「思春、ヘタに戦うと旦那に全員殺されるぜ?戦ってみて旦那の強さはわかっただろ?」

 甘寧の目の前に佇んでいる魏の御遣いは剣を下ろしこちらのやりとりをみていた。

しかし・・・その間にも隙は一切無かった。

「成長したな、ジェームス。大局だけでなく、小さな局面でも広い視野を持って行動できるようになったな」

「そいつはどうも」

 ケインはそういうと今度は一刀に顔を向ける。

「一刀、お前は戦士だ。お前は戦うごとに強くなる。勝つと強くなり、負けるとより強くなる。蛇が巨大になるために脱皮するように・・・」

「・・・」

「一刀、良く覚えておけ。どちらが勝っても、俺たちの闘いは終わらない。敗者は戦場から解放されるが、勝者は戦場に残る。そして生き残った者は死ぬまで、戦士として人生を全うするのだ」

 これ以上戦わないという意志か、ケインは剣を収める。

「ここは退こう。また会うぞ、二人とも」

 その言葉と共にジェームスが崩れ、呉の将がそれに駆け寄った。

その間にも一刀は、伝説の背中を見つめたままだった。

 

 

おまけ:次回予告

魏、呉、蜀。

世界は三国時代に突入しようとしていた。

それぞれの陣営に堕ちた天の御遣いは、それぞれの陣営で自らの忠を尽くそうとしていた。

 

 第十八話 理想人達 ~SONS OF LIBERTY~

 

魏、呉、蜀、三国の思惑。

それは正史に仕組まれた物。それは正史の思惑。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
25
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択