「そう~。わかったわ~。引き続き監視を続けて頂戴ね~」
送り込んでいるうちの子からの連絡を聞いた私は小さく微笑む。
美智恵ちゃんがどうやら先行して動いたみたいねぇ。
彼の人となりを掴んだ憎い作戦だわ~。
これなら暫くの内は横島君を引き止めて置けるかしらねぇ。
和宏君に頼んでおいたのもプラスしてこれで此方に引き寄せる算段は付きそうね~。
後は後詰の方を煮詰めないといけないわねぇ、
美知恵ちゃんと令子ちゃんには悪いけど脱落してもらうわ~。
そのために色々尽力している振りもしてきたし~、
後は横島君を獲得するのを邪魔するのなら、社会的にも脱落してもらいましょう~。
特に令子ちゃんは簡単に陥れられるから楽でよかったわ~。
「後は~彼の出方を待つだけね~」
横島忠夫君。
霊能力のれの字も無い時からの令子ちゃんの所のアルバイト君。
初めは何の興味も無かったわねぇ、冥子に要らないちょっかいをかけた時は
ちょっとお仕置きしようかと思ったけれど、それ以外は取り立てて何の見所も無い少年だったわ。
それがいまや、令子ちゃんにひけを取らないほどの霊能力者に育っていたわねぇ。
あの霊能力も素晴らしいけど、欲しいのは彼の人脈なのよねぇ。
彼が一人居れば、神界、魔界、人間界の有力者と簡単にコンタクトが取れるようになるのは
我が六道家として素晴らしい強みになるわね~。
「フミさ~ん。あれは用意できているかしら~」
「はい。此方に」
フミさんは本当に優秀で助かるわぁ~。
これがあれば確実に横島君は此方に靡くわね~。
厳重な封印をかけてある小さな箱、これが此方の切り札よ~。
美智恵ちゃんじゃ、この方法は考え付かないでしょうねぇ~。
「ふふふ~。楽しみだわ~」
「………」
さぁ、此方の用意は万端よ~?
美智恵ちゃんは何処まで無駄に頑張るのかしらね~?
横島君はもう蜘蛛の糸に引っかかっているわ~。
…………
………
……
…
怖い…怖いの…
あの笑顔が怖いの…
どうして何時も通りに笑っているはずなのに、
あんなに怖く感じてしまうのかしら。
熱に浮かされたような表情で笑い続けるお母様…
私がクビラちゃんで霊視していることにも気づかないなんて
フミさんはわかってて無視しているみたい、お母様に忠実なのに
どうして何も言わないのかしら。
お母様だって何時もなら気づくはずなのに、今は全然気づいて無いの。
なんで…私の大好きな令子ちゃんに意地悪しようとするのですかお母様?
なんで…私のお友達の横島君を無理やり引き入れようとするのですかお母様?
なんで…なんで、『あれ』をもっているのですかお母様?
なんで…
なんで……
大好きなお母様なのに、今はとても怖くて、とても嫌な感じがするの。
これに似たような感じを私は知っている。
私を虐めようとした人、私を騙そうとした人、私を陥れようとした人
それとおんなじ感じがするの。
そんなの嫌。
そんな恐ろしいお母様は嫌。
そんな風に感じてしまう私も嫌。
いつものお母様がいいの、優しくて、偶に怖くて厳しいお母様。
令子ちゃんや横島君や皆と仲良しのお母様。
其処に私も混ざって、皆笑顔なの。
そんなのがいいのに……
どうしたらいいの?
私はどうしたらいいの?
式神の皆はどうしたらいいと思う?
私は嫌、こんなので横島君が来ても私も横島君も令子ちゃんも笑えないの。
うん、マコラちゃんもそう思うのね。
インダラちゃんとショウトラちゃんの考えは私にもわかる。
クビラちゃんとバサラちゃんとアンチラちゃんも同意してくれるの?
アジラちゃんハイラちゃんシンダラちゃんメキラちゃんビカラちゃんサンチラちゃん…
ありがとう、私勇気を出すわ。
がんばるの、大切なお友達の為に。
行きましょう、お母様を優しいお母様に戻したいから。
「エミちゃんの~~所に行きましょう~」
助けを求めよう、私にはそれしか出来ないから。
でも、それだけでもできれば、きっと何かが変わると思うから…
そうしなければいけない気がするから。
もう、あんなに悲しいのは嫌だから。
お母様を何時ものお母様に戻したい。
令子ちゃんといつまでもお友達でいたい。
横島君に……横島君に、何時もの様に笑ってもらいたい。
『あれ』の事を伝えよう。奪ってしまうのは簡単だけど。
そんなことしてしまえば大好きなお母様が大変な事になる。
だから智恵を借りよう、もう一人の友達に。
令子ちゃんの事が喧嘩しながらも大好きで。
横島君の事を出来の悪い弟みたいだって言っていた。
私の掛け替えの無い大事なお友達に。
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今回のお話はかなり短いです。
間に挟むお話だと思ってください。
事態は少しずつ、ゆっくりと進んでいきます。
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