西の大国、シュヴァルツェン連合王国。今現在同国は、東にある「ラズガルド帝国」と緊張状態にある。
ラズガルド帝国が、シュヴァルツェン領東部の国境線上に、軍隊を集結させているからだ。

「…首相！シュヴァルツェン領の東…
聖アルトランド神霊国の国境線近くに、ラズガルドの陸軍が配備されている件。アイゼンヴァール皇帝からの返答はありません。

続きを表示

実に不穏な兆候ですぞ…！」

「…あの女帝のことだ。いつなんとき、我が領土に侵攻してもおかしくはない。

…デュラハン国防大臣。参謀総長に命じて、陸軍主力部隊を国境線上に配備させるのだ。

…ラズガルド帝国の陸軍は精強だ。
一気に攻め込まれると、国境線はすぐに突破されるであろう。」

緊張状態が増す中。シルバーブラッド首相は、シュヴァルツェン東部陸軍主力部隊を、自国領″ 聖アルトランド神霊国″国境線に配備させるよう、国防大臣に命じた。

シルバーブラッド「…もし、ラズガルド帝国と戦争が始まれば。武器の増産が必須となるであろう…
デュラハン大臣。アーケイン兵器廠のミルド・アーケイン開発局長に命じ…武器の増産を要請するのだ…」

「かしこまりました。
…それで、首相。
南の″シェロゲン蛮王国″の宰相″シズナ″より、書簡が届いております。

我がシュヴァルツェン連合王国で造られた銃を所持していた海賊が…シェロゲン領海を荒らしていたと…
その海賊長、コックスは現在。シェロゲンの手にあり、捕虜としていると…

…海賊達が、シュヴァルツェンの指示によってシェロゲン領を荒らしていたならば。
シェロゲンへの敵対行為とみなし、″然るべき″対応を取らせてもらう、と…

首相。どう返答いたします？」

シルバーブラッド「…ふん。コックスめ、しくじりおったな…
海賊どもにわが国の銃や大砲を持たせて、シェロゲン領内で商船や軍事船を襲わせていたのは、事実だ。
シェロゲンは、我が王国の領土拡大の上で、いずれ障害となる存在だからな…
出来得る限り、力を削いでおく必要がある。

…だが、事実をありのままに返答することは、愚の骨頂。

国防大臣。宰相シズナへの返答は…

″海賊どもが我が国の武器を使用していたのは、我がシュヴァルツェン海軍が海賊に襲撃され、武器を奪われたからである。
我が国と協力しているなどという海賊の世迷言を信じるなど、まことに心外である。
シュヴァルツェン連合王国は、決して海賊などと協力関係になど、ない″

…このように、返答するのだ。

今現在、わが国はラズガルド帝国と緊張状態にあり。南の大国たるシェロゲン蛮王国と事を構えるわけにはいかぬのでな…」

デュラハン国防大臣「わかりました。
…あともう一件。
首相、今現在幽閉状態にある、ギーシュ国王を解放せよと、″王権派″の連中が要求してきております。」

シュヴァルツェン連合王国には、かつて国王が絶対的な権力を握っていたが、シルバーブラッド首相が主導する「議会」が、国王の権力を抑制。現在国王は首都で幽閉状態にあり、その行動を制限されている。
これに不満を抱いた、王室を中心とする勢力…いわゆる「王権派」と呼ばれる勢力が、シルバーブラッドと対立していた。

シルバーブラッド「…国王を解放しろ？
そんな要求を、受け入れることは出来んな。
今や国王は、何の政治的権力も持たぬとはいえ…
国王に行動の自由を与えると、王権派が勢いづき、いつ議会への反乱を企てるかわからん…

…王権派の動きは、注視して監視するように命じろ。
必要ならば、実力行使で排除してもかまわん。」

今や議会で絶対的な権力を握り、軍から財政、王国内の全権を掌握しているシルバーブラッド首相だが…
反対勢力も多かった。　

権力を掌握する過程で行ったシルバーブラッドの″粛清″は、恐怖を与えた一方、より抵抗勢力の闘志に火をつけている。
″反乱″の憂いを断つこともまた、彼にとって必須事項の一つなのだ……



〜〜〜〜


「議会はギーシュ国王を解放しろ！！

シュヴァルツェン連合王国の首都″シュヴァイン″では、国王を支持する「王権派」によって、国王解放を求めるデモ行進が行われていた。

「…シルバーブラッドは、王の自由を不当に奪っている！
国王を解放しろ！！」

国会議事堂前に集った王権派が、国王の解放を求めて叫び続ける。

「ただちに立ち去れ！シルバーブラッド首相は、お前たちの要求を受け入れるつもりはない！」

近衛隊が、銃を構えて「王権派」の連中を脅しつける。


「…武器で脅しつけようったって、そうはいかん！
我らは″国王″の僕…

王の自由が保証されない限り、歩みを止めはせん！！
みんな！進めー！！」

死をも恐れずに、近衛兵団に突っ込んでいく″王権派″達…

「ええい！構わん！発砲しろ！！
首相から、危険分子の″殺害″は許可されている！

撃て！撃てぇ！！」

近衛隊と、王権派が衝突した。


響き渡る銃声。流れる血と、死の怨嗟。


この衝突によって、近衛隊4名が死亡、12名が負傷。
王権派は、58名が死亡、148名が負傷した…