No.107897

~真・恋姫✝無双 孫呉の外史 拠点(香蓮編)

kanadeさん

おおよそ半月ぶりの投稿。
遅くなって申し訳ないです。
拠点初の話、香蓮のターンです。
感想、コメントおよび誤字報告お待ちしております
それではどうぞ

2009-11-19 22:58:02 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:20069   閲覧ユーザー数:13907

 

~真・恋姫✝無双~ 孫呉の外史・拠点(香蓮編)

 

 

 

 「・・・・・・はぁ、退屈だ」

 ぼんやりと廊下を歩きながらただ一言だけ呟く女性が一人。

 「必要な仕事は片づけた。良い酒もある・・・・だが、一人で飲んでもつまらん」

 孫堅 文台――真名を香蓮。

 孫呉の前王は暇を持て余していた。

 「祭の奴は冥琳から逃亡・・・我が娘に至っては堪った仕事の処理で缶詰め状態。あたしが迂闊にそこに行けば手伝わされかねんし・・・穏は一刀と勉強・・・・・残ったあたしは一人で何をしているかと言えば・・・はぁ・・・いい暇潰しはないものかねぇ・・・」

 今は自室にある大剣・〝赤帝〟も最近では盗賊相手にしか振るわれていない。

 「もっと戦い甲斐のある奴と戦いたいよ・・・それこそあたしに全力を出させる事が出来るぐらいの奴と」

 一度口にしてしまうとスラスラと不満が溢れ出てくる。

 「・・・そういえば、あたしは一刀と手合わせした事がないな・・・退屈しのぎになるかもしれん・・・。さて、穏の勉強会がおわって・・・・・・いや待て、穏と・・・だと?勉強には書物が必要になる。・・・穏にはあの性癖が・・・」

 冷汗がひとすじ、つぅっと頬を流れた。

 自分の身内には変わり者が多いのは充分に承知していた香蓮だったが、とりわけ穏は変わり種と言わざるを得ない。

 (まぁ・・・雪蓮も充分に変わり種か。いや、あたしも充分に変わり種だったな・・・)

 「いや、それよりも今は一刀の身を案じる方が先決か・・・部屋にいるといいが」

 来た道を引き返しながら香蓮は少し楽しそうに笑みを湛えるのだった。

 

 その道中、ニコニコとご機嫌な様子の穏とすれ違った。

 「穏、随分と機嫌がいいな?」

 「あ~やっぱりわかりますかぁ・・・そんなんですよ、一刀さんとの御勉強会だったんですけど、久しぶりに私昂っちゃいまして・・・〝孫子〟・・・やはり素晴らしい書ですよ~♪」

 香蓮が若干引きながら相槌を打つ。そしてその穏の肌はいつにも増して張りと艶があり、その仕草だけで何があったかの予想がつく香蓮だった。

 「穏、一刀は自室か?」

 「いらっしゃると思いますよ♪少しお疲れの御様子でしたけど」

 (そうだろうさ)

 「わかった。すまんな穏」

 「いえいえ、それでは~♪」

 「穏」

 浮かれ調子の穏を香蓮は引き留める穏は、「何でしょうか?」と聞いてきたので一言。

 「程々にな」

 「わかりました~。頑張ってみま~す」

 元気良く返事をする穏だったが、正直言って期待するだけ無駄なんだろうなと香蓮は思うのだった。

 

 

 穏と別れた後、香蓮は一刀の部屋の前にまでたどり着いた。

 「さて、いるといいが・・・一刀、いるか?」

 以前一刀に教わった〝ノック〟という作法で部屋にいるかを確認すると中から少々疲れた声が帰ってきた。

 「入るぞ・・・と、やれやれ・・・随分とお疲れの様子だな」

 「あはは・・・穏の熱心さに体が追いつけなくて・・・」

 「御愁傷様。大方の検討はつくが、その頑張りが何なのかは聞かないでおこう」

 「ああ、やっぱりみんな知ってるんだね。穏が書物を手にするとどうなるのか」

 「当たり前だ。呉の将たちはあたしにとって家族と何も変わらんからな。まぁ穏が変わり種であることは否定しはせんが・・・あれは純粋なまでに書に対しての愛情が深いだけさ。色々大変だろうがそれだけは分かっておいてやれ」

 少しだけ真摯に一刀に言葉を紡ぐ香蓮。

 その真摯な眼差しと口調に何も言わずに一刀は頷く。

 「しかしまあ・・・一刀、もしやお前は、色ごとは初めてか?」

 「え?ああ・・・その、まぁ・・・」

 視線を香蓮から逸らしながら一刀は赤くなった頬を掻きつつ、そう言った。

 「少し意外か・・・お前、天の国では相手はいないのか?」

 「ご期待に添えないようで申し訳ないけど・・・いません。あ、そうだ・・・香蓮さん、頼みがあるんだけど」

 ん?と香蓮が首を傾げると、一刀はそのまま話を続けた。

 

 「――何?悪いがもう一度言ってくれ」

 「だから、俺と手合わせしてくれない?って・・・言ったんだけど・・・」

 トーンが落ちた声で一刀はもう一度言った。

 一刀が若干がっくししているように見えるのは全くもって気のせいではない。

 「な、何だ♪急にどうしたんだ♪」

 が、対する香蓮の声は来た時よりもトーンが上がっている。

 その顔は輝いているかのようにさえ見えた。

 「考えてみたらさ、俺ここにきてから日課の鍛錬以外していないんだよね・・・この前の黄巾党はまぁ・・・別として」

 ほんの少し、ばつの悪そうな顔をした一刀だったが、すぐに表情を元に戻す。それを見て香蓮は内心で少しだけ誇らしく思い、小さく笑う。

 (少しだけ、前に進んだか・・・)

 「香蓮さんが強いのは充分承知してるんだけど、今の自分がどの程度か知りたいんだ」

 そう言った一刀の瞳には、強い光があった。

 (良い眼だ・・・まだまだ青さがあるが、〝武人〟の眼をしている)

 香蓮の前には、自分が待ち望んでいた〝戦い甲斐のある奴〟が立っている。それはともすれば、盗賊一人を殺めただけで嘔吐し気を失った男とまるで別人だった。

 だんだん昂っていく自身の心を抑える事が出来そうもなかった。

 「ふむ・・・あたしは別に構わん。で?今から戦るのか?」

 「香蓮さんがいいのなら」

 「あたしはいつでも問題ない。が、どう見ても今日のお前では話にならん。だから今日は休め・・・明日のこの時間に中庭で待ってろ。穏には明日の勉強会は休むようにあたしから言っておく」

 「あ、ありがとう」

 「なに、気にするな♪だが、ここまでするんだ・・・あたしをがっかりさせてくれるなよ?」

 「全身全霊を以ってご期待に添えるよ」

 期待しておくと言って香蓮は踵を返す。

 一刀の部屋を去った彼女の表情は、とても楽しげな笑顔だった。

 

 一刀の部屋からある程度遠ざかってから。

 「くっくく・・・はは・・・あははははは♪ああ、ここまで胸が高鳴るのはいつ以来だったか?」

 嬉しくて仕方ない。

 もし一刀に成長が見られないようだったら、稽古程度で済ませるつもりだったが・・・予想を良い意味で裏切ってくれた。

 「さて・・・まずは穏の所に行かんとな・・・」

 さぁ、明日のために必要な布石を打ちにいくとしようか。

 

 逸る気持ちを抑えながら、香蓮は穏の自室へと歩を進めた。

 

 

 翌日。

 約束の時間に中庭に訪れた一刀だったが、すでにそこには香蓮の姿があった。なんかもう、ニコニコと満面の笑みを浮かべている。

 そして、それだけでなく、その近くにある休憩所には見知った顔が揃っていた。

 すなわち、雪蓮、冥琳、祭、穏である。

 「えっと・・・香蓮さん?」

 「気にするな。それとも、第三者の視線があっては戦えないか?」

 「まさか」

 「だろう。しかしまぁ・・・ゆっくりと休めたようだな。昨日よりずっと力がある」

 昨日は若干憔悴していた青年が今は凛としている。

 (本当に・・・いい表情だ)

 「さて、これ以上の無駄話は必要ないな。ここから先、言いたい事は全て己が剣の刃に乗せろ・・・あたしもそうする・・・さぁ、構えろ一刀」

 笑みは消え、引き締まった表情へと切り替える香蓮。放たれる気迫は、全く別人と言って差し支えない。

 その気迫に中てられたのか、咽がゴクリと鳴り、汗がひとすじ流れた。

 (・・・これが〝江東の虎〟・・・これが・・・香蓮さん)

 〝徒桜〟を鞘から抜いて正眼の構えを取る一刀。

 一度だけ目を閉じて呼吸を整える。

 眼を見開いた時、一刀の瞳から揺らぎは消えていた。

 

 ――良い、実に心地良い〝殺気〟だ。

 「それでいい。――では孫 文台、推して参る!!」

 「北郷一刀、いざっ!!」

 

 ――虎と天の牙が激突した。

 

 

 「ほう・・・北郷め、中々に良い動きをしておるの」

 「はわぁ~・・・香蓮様と互角に戦える人が雪蓮様や祭様以外にいるなんてびっくりです」

 「穏、香蓮様は本気で戦ってはいない。剣をよく見ろ」

 「剣ですか~?あ、本当ですね」

 「・・・・・・」

 見物する四人の中で一人、雪蓮だけが沈黙していた。

 鋭い眼差しで一刀と香蓮の剣戟を見ている。

 (確かに母様は本気で戦っていない・・・でも、本気の一歩手前ね。それに・・・)

 「あんなに楽しそうな母様、久しぶりに見るわ・・・祭、いつぶりかしら?」

 そこで話を振られた祭が暫し思案して。

 「・・・襄陽での一件以来かの」

 「そう・・・だったわね・・・あの件で母様は九死に一生を得たけど」

 「我らは瓦解・・・結果袁術の客将となったわけだ」

 「皆さんとも離れ離れになっちゃいました」

 一気に空気が重くなった感じがした。

 

 ――「ははっ♪そぉらっ!!」

 ――「ぐっ!・・・ちょっ!何でそんな代物片手で振りまわせるのさ!!」

 ――「無論、あたしだからさ!!」

 

 「堅殿・・・本当に楽しそうじゃのう」

 「私も一刀と戦ってみたいわね」

 「雪蓮・・・貴女に限っては控えるべきだと思うが・・・」

 「早くも一刀さんが故人になっちゃいますね」

 「私をどういう目で見ているのか詳しく聞きたいわね」

 ムスッとしながら、手元のカップを御口元に運ぶ。

 雪蓮の視線の先には、心から今を楽しんでいる母親と、その母親に翻弄されている、自分がどことなく気にしている男の姿があった。

 

 

 ――ブンッ、ギンッガガガガガガガガ・・・・・・。

 一振りの刀と大剣が鍔競り合う。

 だが、僅かに一刀の方に刃が傾いている。

 「ははっ♪このままじゃ真っ二つになるぞ♪」

 「んぎぎ・・・」

 (冗談抜きで・・・爺ちゃんより強い・・・さっきから防いでばっかりで攻撃が当たってないし)

 そうして現状に至ってる。

 

 ――とにかく反撃を、と焦っていると。

 「焦りはいかんな♪割と男前な顔が台無しになるぞ」

 「割となんだ・・・・」

 力に押されて少し後ろに下がり始める一刀の体。

 不意に・・・どうしてそんな事を考えたのかわからない。だが――。

 (力で勝てない・・・なら、技と・・・後は根性で・・・)

 「!?」

 香蓮の体が突然前のめりになった。

 そして、そこに一刀の刃が迫る。

 「くっ!?」

 ――キンッ!

 体勢を立て直し、腕を引いて一刀の件を防ぐ。そうして軽い音が響いた後には鍔競り合いになることなく一刀は距離を取った。

 (足に〝氣〟を集めて・・・)

 「踏み込む!」

 「おおッ♪随分と器用な真似をするな!そのような〝氣〟の使い方はあたしには出来んぞ!」

 「必要ないで・・・しょっ!」

 ――キィィンッ!!

 先程よりも高く重い音が響いた。

 つまりそれは、より力が入っている証だ。

 (・・・〝氣〟を部分的に集めて使っているのか・・・体を覆う〝氣〟が集めているところと比べて驚くほど薄い・・・いや、あたしと打ち合えている辺り)

 「なるほどな。〝外気功〟による外的強化ではなく、〝内気功〟による強化か?表面上は薄く纏っているように見えるが、その実、内側が強化されているというわけだ」

 「もう気付いたの?油断してくれると思ったんだけどなぁ・・・」

 言っている事こそ落胆しているようだったが、その表情はというと、まるで落胆した様子がない。むしろ、〝やっぱりか〟とこうなる事がわかっていた様子だ。

 

 ――そんな一刀に香蓮はますます昂っていく。

 

 「ああ♪もう声にするのも煩わしいぞ!」

 ――楽しい。

 ただそれだけが香蓮の心に溢れていた。

 (持続力はないが、一瞬の疾さならば思春と互角だな♪明命とならばある程度は勝ち越せるだろう・・・蓮華とシャオは・・・勝てんだろうな)

 「今のお前はいい男だ!一刀!!」

 「それ・・・はどう、もっ!!」

 ――ギィィンッ

 ぶつかっては離れる。それを繰り返し自分のペースで戦う一刀。

 その中で、一刀が大きく距離を取った。

 香蓮が長く続く剣戟の中でそれを好機と判断して一気に踏み込む。

 だが、それは――。

 

 〝一刀にとっての好機〟だった。

 

 

 ――香蓮が一刀に踏み込む少し前。

 「母様、一刀の調子に合わされてるわね」

 「やはり策殿も気付いておられたか・・・先の北郷の連続攻撃は自身の調子に堅殿を巻き込むための布石だったのじゃろう。本気ではないといえ、堅殿相手によう戦っておるわ」

 「はぁ~、一刀さんお強いです。私ならとっくに伸びちゃってますよ」

 「これは、袁術の耳に入るな」

 「・・・袁術ちゃんを煙に巻く良い台詞よろしくね♪」

 「任されましょう」

 不敵に笑う冥琳を見て、『ああ、やっぱり頼りになるわね』と思う雪蓮だった。

 「北郷め、距離を取りおった・・・誘いじゃの」

 「ああ!香蓮様が踏み込みましたよ!」

 

 ――そして次の瞬間、香蓮の横薙ぎの一撃を一刀は屈み、香蓮の〝赤帝〟の刃に己の〝徒桜〟の刃を下から押し当て、柄の方だけを持ち上げ受け流し、そのまま反撃に転じた。

 

 

 「!」

 「はぁっ!」

 刹那、一刀よりも長く生き、一刀よりも多くの戦場を駆け抜け、多くの敵と戦ってきた香蓮の武人としての本能が、体を後退させた――のだが、

 

 ――つぅっと香蓮の左頬を血が流れた。

 

 「・・・・・・」

 呆然とその頬に右手を添え、血に濡れた手のひらを見つめる香蓮。

 一方の一刀は、棟で撃つ筈だった一撃を刃ではなってしまった事に少なからず動揺していると。

 「・・・(ギロッ!)」

 今までの比ではない殺気を湛えた瞳で香蓮は一刀を睨み、《今まで一度も使っていなかった》〝氣〟が一気に膨れ上がりそして――。

 

 〝赤帝〟の刀身が、焔色に染まった。

 

 ――「焔・赤鳳」

 

 両手持ちで放たれた香蓮の横薙ぎの一閃は、距離が離れている一刀へとその紅蓮の翼を羽ばたかせた。

 「なっ!?」

 肉薄する斬撃に驚愕する中、瞬間数多の思考が一刀の頭の中を巡り。

 (間に合え!)

 次の瞬間、焔の鳥が一刀を襲った。

 

 ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!

 

 バキッ、バキバキキキキキキ・・・・・・・・・・・・――。

 

 庭木の枝の折れる音が暫く続いて、途切れた。

 そうなって初めて香蓮は我に返り。

 「!?一刀!」

 慌てて一刀のもとへと駆けつけていくのだった。

 

 

 一刀の安否を確かめに行った香蓮。残された四人は――。

 「香蓮様、使っちゃいましたねぇ・・・」

 「北郷、生きておるかのう・・・」

 「・・・雪蓮?」

 冥琳は無言で最後に一刀と香蓮が立っていた場所を見ていた雪蓮に声を掛けた。

 「一刀なら生きているわ・・・一瞬だったけど間違いないわ。母様の赤鳳を至近距離で相殺してたもの」

 その声には微かに喜びの様なものが混ざっている事に冥琳は気がついた。

 「楽しそうね」

 「わかる?」

 「ええ・・・まぁ、それは祭殿も同じようだがな」

 ふうと溜息を吐いた冥林の横の横、穏の隣に座っている祭の瞳はキラキラと輝いていた。

 さっきの台詞とは裏腹に、祭もまた、雪蓮と同じように一刀の成したことに気付いていたのだ。

 

 ――暫くして、一刀を背負った香蓮が庭木林から姿を見せた。

 

 「ね?言った通りでしょ♪」

 「ええ、流石に驚いたわね・・・」

 唖然とする冥林に雪蓮は顔に笑みを浮かべるのだった。

 

 ――「すまんがこのまま一刀を部屋に連れていく。庭の後始末は任せた」

 

 「「「「はっ?」」」」

 

 呆然とする四人を残し香蓮と一刀は去っていくのだった。

 

 ――翌日、一刀は静養し香蓮は仕事を増やされたのだが、

 「まぁ仕方がないか」

 とだけ言い、特に不満を言うことなく仕事をこなすのだった。

 

 ――一方の一刀は。

 「だぁぁぁぁぁっ!体が痛くて動かねぇ!!」

 と叫んでいたのを侍女が聞いたそうだ。

 

 

 数日が経って、一刀は動ける程度まで回復し、今こうして香蓮と共に郊外の森の開けたところにで腰をおろし休んでいた。

 「良い場所だろう?適度に開けていて・・・花が咲いていて・・・川のせせらぎが聞こえて」

 「うん、凄く気持ちがいい場所だと思う」

 「だろう、で、だ。ほれ・・・快気祝いとあたしに手傷を負わせた祝いだ」

 手渡した杯に白酒を注ぐ。

 若干困惑した様子の一刀だったが、覚悟を決めたようでカチンと杯を鳴らして呷った。

 「ごほっ!・・・結構キツイね」

 「・・・これくらいでキツイなど言っていたら、うちの酒豪共相手にやっていけんぞ?」

 「紹興酒とかないの?」

 「なくもないが・・・あたしも祭も雪蓮もこっちの方が好きだからな・・・偶に飲む程度だ。自分で持ち込まん限りは適度に諦める事を進めるぞ」

 「・・・そうですか」

 ガクッと肩を落とす一刀を横目で見て香蓮はククッと笑った。

 その仕草がどこか子供っぽくって、でも色気があってドキッとしてしまう一刀。

 でも――そこで一刀は手合わせした際に感じた疑問を聞く事にしてみた。

 

 「聞きたかったんだけど・・・香蓮さんはあれだけ強いのに――」

 「どうして袁術に後れをとったのか・・・か?お前が疑問に持つのは当然だな」

 クイッと呷り杯に白酒を注ぐ。

 すっかり日が暮れ、空に浮かぶ月を眺め一息つき。

 「正確に言うなら・・・袁術に後れをとったわけではないのさ・・・真相はこうだ。袁術と張勲に使われて黄租と戦い、討ち取った。その後で襄陽の外れで一人でいる時に、黄租の部下の矢を受けて生死の境をさまよう羽目になった。あたしは九死に一生を得たわけだが、意識を取り戻すまでの間に呉は頭を失くして瓦解。その隙を袁術に突かれ今に至るわけだ」

 「・・・・・・」

 (やっぱり、俺の知る三国志と違う・・・その話は反董卓連合の後の筈だ。それに・・・)

 自分と違う歴史、それが意味する事はただ一つ。

 

 ――ここは単純な過去の世界じゃない。

 

 (なら、俺の知識がどこまで役に立つか・・・)

 色々思案をしていると香蓮がムスッとした声で香蓮が声を掛けてきた。

 「お前は本当に人を無視して考え事をするのが好きだな・・・」

 声には、ドスがかなり籠っていた。殺気さえ滲んでいるではありませんか。

 「あ、えっと・・・ごめんなさい」

 平謝り全開、逝きまーす

 軽く殺される覚悟で頭を下げると、〝軽く〟拳骨をくらわせて許すのだった。

 ただ――、〝氣〟が籠ってる拳なので、軽くでもかなり痛いため。

 「~~~~~」

 無言で頭を擦るのだった。

 そんな一刀を見て、香蓮は今度は声を上げて笑った。

 ムスッとして頭を擦る一刀を横目で見ながら香蓮は夜空に浮かぶ月へと視線を移し。

 

 ――「もしかしたら、あたしはお前に会うために生き永らえたのかもしれないな」

 

 え?という一刀の疑問の声に香蓮は応えない。

 ただ何でもないと言って空いた左手で一刀の頭を撫でるのだった。

 

 

~あとがき~

 

 

 

 まず最初に、お久しぶりで御免なさいと連ちゃんで述べさせていただきます。

 構想こそあれど、物語として中々形にならず、修正を繰り返してやっと今回の話が出来上がった次第です。

 いかがでした?

 たくさんの応援には感謝の言葉もありません。

 さて、今回の話ですが・・・・他の将も絡んでくると言っておきながら香蓮の、ほぼ独壇場となってしまいました。

 

 一刀対香蓮

 

 これが今回のコンセプトとなっています。

 香「実に良いことだ」

 ああ、やっぱり来ましたね。

 香「まぁ当然だな」

 当然ですか・・・いいですけどね。さて、今回の話の一部表現が浅いところが・・・正確に言うと貴女の剣と貴女が一刀に対して本気の技を使った時の事ですが。

 香「そういえば表現されていなかったな?あたしの剣はともかく、どうやって一刀はあたしの一閃を相殺したのだ?」

 ああ、それに関してはもう一人の拠点で説明しようと思っています。

 香「・・・相手は誰だ?」

 言うわけないでしょうが・・・そんな盛り上がりに欠けかねない事を。

 香「それもそうか・・・ところで、そいつはどれくらい一刀と絡むんだ?」

 そこそこですね一日の長があるからと言って安心しないでくださいね。

 気がつけば背後にそして追い抜かれて・・・なんてことにも・・・

 香「一刀と街に出てくる!ではな!再見!!」

 

 ――ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダっ!!!!

 

 行ってしまいましたね。

 では次の話でまたお会いしましょう。

 Kanadeでした。

 

 

 


 
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