No.107516

剣帝✝夢想 第二話

皆さんこんにちは、初めてのひとははじめましてへたれ雷電です。

ようやく二話投稿ですが、やはりレーヴェの口調に自信がありません。レーヴェが出てくる場面をプレイしてもなかなかどうして…。

更新ペースは三日に一度かそれよりももう少し短くを予定しています。

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2009-11-17 11:36:37 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:8511   閲覧ユーザー数:7490

劉備たちと近くの街に入るとレーヴェは周りを見渡して見覚えのない建物が並ぶ通りを見てやはりこの世界が自分の元いた世界ではないということを再確認する。自分が知らないだけという可能性も捨てきれないがまずそれはありえないだろう。レーヴェはおかしなことになったものだ、と劉備たちに気づかれないように嘆息した。

 

「どうかしましたか?」

 

関羽が立ち止ったレーヴェに気づいて首をかしげながら尋ねてくる。

 

「いや、少し考え事をしていただけだ」

 

「お兄ちゃん何やってるのだ!お腹空いてるんだから早く来るのだ!」

 

関羽に答えた直後、張飛が頬を膨らませてこっちを睨んでいるのを見てレーヴェは自然と苦笑が顔に浮かぶ。関羽は恥ずかしそうに頬を染めて視線を逸らしていた。

 

「その前に一ついいか?店に入るのはいいがオレはこの国に来たばかりだからこの国で使える金などないぞ?」

 

その言葉を聞いたとたん劉備たちが固まった。レーヴェはその反応に嫌な予感しか感じなかったが一応何がどうしたのか尋ねることにした。

 

「…どうかしたのか?」

 

「いや…あの…」

 

「天の御使いだからお金持ちなんだろうな~、なんて思って」

 

「ご相伴に預かろうかと…」

 

その言葉を聞いてレーヴェは珍しく唖然とした。金がないというのは予想していたがまさか自分に頼るつもりであったということまでは予想していなかった。少しの間レーヴェは空を仰ぐと体中を探して<身食らう蛇>で支給された小型のオーブメント灯を見つけ出し取り出した。常備していたわけではないのになぜポケットの中に入っていたのかは分からないが。

 

「これはオレのいた国で作られた暗い場所を照らすことのできる道具なんだが…これはいくらで売れる?」

 

レーヴェはスイッチをつけたり消したりしながら実演して見せて劉備たちに尋ねた。劉備たちはレーヴェの持つ道具に驚いていたようだがすぐに我に返ると関羽がまだ驚きの抜けない顔で答えた。

 

「天の国にはこんなものが…。まさか火を使わずに辺りを照らすことができるなんて。…こほん、このような珍しい品であれば大層な値段をつけてくれる好事家もいることでしょう」

 

「そうか。ならば関羽がこれを売ってきてくれ。オレでは相場が分からないし劉備たちでは足元を見られそうだ」

 

その言葉に関羽は頷いてレーヴェからオーブメント灯を受け取るといずこかへと走って行った。

 

しばらくした後、今度こそレーヴェたちは店の中に入っていた。まずは腹ごなしということで料理を頼んだわけだが、レーヴェにとっては初めて食べるものばかりで少しばかり緊張していたのだが香辛料が結構効いていたりしたというのはあったがなかなかにおいしいものであった。食後のお茶を飲んでいると劉備が真剣な顔で自分を見ていたのでレーヴェはお茶を置いて劉備に視線を合わせた。

 

「それでね、レオンハルト様。さっきも説明したと思うんだけど私たちは弱い人たちが傷つき倒れるのが我慢できなくて少しでも力になれるのならって思って旅を続けていたの。でも三人じゃ、私たちだけじゃもうどうしようもない、そんな世の中になってきてる」

 

悔しそうな顔をして呟く劉備の言葉を継ぐようにして関羽が口を開いた。

 

「官匪の横行、太守の暴政、そして弱い者が徒党をなしさらに弱い人間を叩く。そんな負の連鎖がこの大陸を覆ってしまっている」

 

さらに張飛が続ける。

 

「もう三人じゃどうしようもないのだ」

 

そして劉備が顔を上げまた口を開いた。

 

「でも、そんなことで挫けたくない、諦めたくない!無力な私たちにもきっと、なにかできることがあるはず。だから、レオンハルト様!私たちに力を貸してください!」

 

レーヴェには劉備が何を言いたいかはすでに理解している。そして劉備が本当に赤の他人であるはずの誰か、を本気で助けたがっていることも。でなければあんな悔しそうな顔はできないだろう。

 

「オレに天の御使いとして名乗りを上げさせ、それで君たちに足りないもの、名声を得ようというんだな?基本的に人間は己の理解を超えたもの、己の知らないものに恐れや羨望、尊敬の念を抱く。そしてこの世界では天の御使いという名が大きな効力を持つと」

 

レーヴェの言葉に三人は頷く。

 

「我ら三人憚りながら、それなりの力はある。しかし我々には名声、風評、知名度というものが圧倒的に足りない。本来なら山賊を倒したり賞金首を捕まえたりして地道に名声を得なければならない」

 

「でももうそんなに時間は残ってないのだ」

 

関羽と張飛が俯きがちに言葉を紡ぐ。レーヴェは彼女たちの言葉を聞いて思考を巡らせる。レーヴェ自身、自分に振りかかった事件のこともあり何の罪もない人間がただ生きていくだけのことに精いっぱいな人間が傷つけられるということは無視できない。だが、自分は組織の計画の途中でその何の罪もない人間を傷つけたことなどいくらでもある。そんな自分が彼女たちに手を貸す資格があるのだろうか。それに彼女たちが言っていることは自分の嫌う偽善、という側面も孕んでいる。だが、彼女たちはそう言われても自分の信念を信じて戦い続けるのだろう、レーヴェはそう思った。そしてふと自分がまだ遊撃士(ブレイサー)を目指していたころのことを思い出す。あのころの自分は彼女たちのような心境ではなかったのか。根底にはヨシュアとカリンを守りたい、そんな気持ちがあったのは確かだが誰かに笑顔でいてほしい、そういう思いもあったから遊撃士を目指していたのではなかったのか。

 

「そうだな、オレも悪い過去だけに囚われたままではいけないのかもしれん。オレがこの世界に呼ばれたのもきっと何か理由があるはずだ」

 

レーヴェは口に出して呟く。そう、弟分のヨシュアが過去を振り切ったのであれば自分も兄として振り切って見せねばならないだろう。もう会うことはできないが、ヨシュア・アストレイの兄としては。そして固唾を呑んで自分の返答を待っている三人へと答えを返す。

 

「いいだろう。オレでいいのであればその理想を叶える為の力になろう。『剣帝』の名にかけて」

 

その言葉に三人は驚きと同時に喜色の入った表情を浮かべた。

 

「ホントですかっ!?」

 

「ああ、嘘は言わないさ。オレはオレの意思で君たちの力になろう」

 

レーヴェは表情を幾分柔らかいものにしながら頷いた。その言葉に劉備がレーヴェの手を握って喜ぶ。

 

「ありがとうご主人様!!」

 

「ご主人様?」

 

レーヴェはいきなりの発言にいぶかしげな顔になった。

 

「そう…ですね。確かにレオンハルト様は私たちのご主人様だ」

 

関羽の言葉にレーヴェは納得のいかないながらもそういうものなのか、と無理やり言い聞かせることにした。

 

「それでこれからどうするんだ?オレはこの世界のことは何も分からない」

 

レーヴェの言葉に劉備たちはしばらく考え込んで、何かを思いついたのかパッと顔を上げた。

 

「そういえばここの街近くに白れ…公孫賛ちゃんが赴任したって聞いたからまずはそこを訪ねてみない?」

 

「そうだな、オレはまだ何も分からないから手近なところから訪ねるのも一つの手だろう」

 

レーヴェはそう言って席を立った。それに合わせて三人も席を立つ。

 

「それじゃ白蓮ちゃんの所に行こう!」

 

劉備の声に三人は頷いた。

 

「ここだよね?」

 

「ほう、見事なものだ」

 

「ええ、まさに桃園と呼ぶにふさわしい」

 

しばらくした後、レーヴェたちは公孫賛の所ではなく桃園に来ていた。というのも店を出るときに店の主人がレーヴェたちの話を聞いていたらしく餞別代わりに酒をくれたのでせっかくだから契りを交わそうということになったのだった。地元の人間から聞いた桃園についてみると確かに地元の人間が勧めてきたのが理解できた。

 

「それじゃ、準備はいいか?」

 

「うん!」

 

「はっ!」

 

「いいのだ!」

 

レーヴェはそれぞれの手に乗った盃に酒を注いでいく。

 

「そうなのだ!お兄ちゃんは鈴々たちのご主人様になったんだからちゃんと真名で呼んでほしいのだ!」

 

真名、と言われてもレーヴェにはそれが何なのか分からない。おそらくさっきから三人で呼び合っているときのそれがそうなのだろうが。

 

「真名というのは我らの持つ本当の名前です。家族や親しき者にしか呼ぶことを許さない神聖なる名。その名を持つ人の本質を包み込んだ、たとえ知っていても本人の許しがなければ決して口にしてはならない本当の名前」

 

「それが真名なの」

 

「だけどお兄ちゃんになら呼んでほしいのだ」

 

レーヴェは真名の説明を聞いて恐らく最上級の信頼の証なのだろうと考えた。

 

「…そうか、ならばオレのことを呼ぶときはレーヴェと呼んでくれ。様つけもいらない」

 

「分かりました。私の真名は愛紗」

 

「鈴々は鈴々!」

 

「私は桃香!」

 

三人から真名を受け取る。レーヴェは三人を失望させるようなことだけはしまい、と三人の真名を心に刻んでいく。

 

「愛紗、鈴々、桃香……三人の真名、確かに受け取った。まだ何をすべきか、何ができるのかは分からない。だがオレたちはたとえ手探りでも一歩ずつ進んでいかなければならない。だから…これからよろしく頼む」

 

「じゃあ、結盟だね!」

 

四人はそろって蒼天に盃を掲げた。

 

「我ら四人っ!」

 

「姓は違えども、姉妹の契りを結びしからは!」

 

「心を同じくして助け合い、みんなで力無き人々を救うのだ!」

 

「同年、同月、同日に生まれることを得ずとも!」

 

「願わくば同年、同月、同日に死せんことを!」

 

「乾杯!」

 

レーヴェが締めの言葉を言って盃を打ち鳴らし一気に盃の中の酒を仰いだ。獅子の名を持つ剣帝は再び戦いの世界へと足を踏み入れた。

あとがき

 

 

あとがき…とは書いてみましたが私はあとがき、まえがきというものを書くのが本当に苦手です。ついでにどの辺りでページを変えようかということも。

 

ふと思ってしまったのですがレーヴェがいれば大抵の城門って突破できてしまうんですよね…ヨシュア含めて執行者の方々は化け物ぞろいですし。

 

最初にも書きましたがヨシュア編においてエステルはどうするか、所属国はどうするか、ということで悩んでいます。呉に行かせたら思春と明命が自信なくしそうな気が…。

 

ということでぐだぐだなままあとがき終了です。次の話でおあいましょう。


 
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