世界は動く・・・
何もかも巻き込んで動く・・・
時間は動く・・・
誰の意見も聞かずに・・・
ここに、それらから無縁の男がいた・・・
嘗て『KING』と呼ばれた男は縁側で月を見ながら酒を飲んでいた。
金色の髪は月に照らされ、よりその色を輝かせる。
青い目は月の光に輝きを増す。
「月を眺めながら酒を煽る・・・風流ですね・・・」
そう言い、杯を唇に当て、酒を喉に流し込む。
「何処の世界も変わらない・・・月は何時もそこにある・・・あの時も・・・」
思い出を肴に酒を煽っていると、女性の声が聞こえた。
「三蔵様!! 黒天三蔵様!! また、お酒とタバコですか・・・貴方自分が『三蔵』の地位にいる事忘れてるでしょ!? 絶対!! ドンだけ鬼畜生臭破戒僧振りを発揮してるんですか!? スルメイカも食べてる!? 全力全開で殺生してる!?」
そう言い少女は怒鳴り散らした。
当の『KING』は意に介さずラッキーストライクを肺一杯に吸い込み満足そうに吹かす。
「五月蝿いですね・・・今夜中ですよ、考えて叫びなさい、寺院内で叫ぶなど・・・」
少女は頭を抱えながら吐き捨てるように呟く。
「・・・とても僧侶の規範であり、最高僧の位たる『三蔵』の行動とは思えません・・・」
「そんなに褒めないで頂きたい。照れますね・・・」
『KING』は頭を掻きながら照れる。
「・・・私の言葉の中の何処に褒める要素が御ありになると・・・ビタイチありませんから!!!! 全然!! コレッポッチも!! 全く!!」
「謝ります・・・謝りますから・・・そう五月蝿く言わないでください・・・」
『KING』はめんどくさそうに謝る。
「・・・で、何を考えてたの・・・ハウゼン・・・」
「懐かしい響きだ・・・本名で呼ばれたのは久しい・・・」
考え深くハウゼン・トライフは『KING』と呼ばれる前の名を聞き呟く。
「・・・答えなさい・・・ハウゼン・トライフ・・・」
静かだがしかし、強い口調で呟く。
「・・・天界にいた時の思い出さ・・・私の過去・・・嘗て私が『KING』と呼ばれていた頃の・・・そして私が『切り裂きトライフ』、『金色の夜叉』と呼ばれていた頃の・・・嘗ての戦争の時の思い出さ・・・・・・」
ハウゼンは懐かしむように口を開く・・・その目に28歳とは思えないほどの老人の様な哀愁が満ち溢れていた・・・
「貴方に何があったの・・・天の世界で・・・」
「・・・春菜・・・人の秘密を聞きたがるのは君の悪い癖ですよ・・・」
その時だった・・・月が雲に隠れ、辺りが暗くなり、男の足音が聞こえたのは・・・
「久しぶりだな・・・『KING』・・・いや、今は黒天三蔵とでも呼ぶべきか・・・」
男は闇よりもなお暗い雰囲気をかもし出しながら現れる・・・
「『テン』・・・何故この世界に・・・」
ハウゼンはどこか驚きにも似た表情で『テン』を見る。
「お前と同じさ・・・お前とな・・・」
『テン』はどこか皮肉を込めて呟いた・・・
「探したぞ・・・お前を・・・大陸中くまなくな・・・」
そうおどけて『テン』は唄うように呟いた。
「それはそれは、ご苦労様ですね・・・で、私を探してどうするつもりです・・・」
口調は穏やかだが、油断はしていない。
「・・・何・・・この世界で戦争が起きている事は知っているな?」
『テン』はそう前置きを置いて語る。
「それが何か? 世俗に疎い私でもそれくらい解りますが・・・」
ハウゼンもその前置きの内容ぐらい知っている。
「アレは我々がプロデュースしたものでな・・・蒼にいる王様気取ってる『ACE』・・・北郷 一刀と王妃なんて似あわねえことしてる『QUEEN』・・・北郷 愛紗と筆頭将軍なんて何でコイツがやってんだと思う『JACK』・・・及川 佑が魏、呉、蜀の三国戦争してんだよ・・・しかもあいつ等、呉と同盟結びやがった・・・笑えるだろ・・・」
「で・・・私にどうしろと?」
前置きがいい加減長くなってきたのか、本題に入れと語外に篭めて言う。
『テン』は両肩を竦め本題に入った。
「俺等の仲間になれ・・・“あの時”みたいに・・・」
「・・・断ると言えば・・・」
「お前と、そこにいる小娘が死ぬだけだ・・・」
そういい懐から、バカデカイハンドガンと腰からナイフを取り出す。
デザートイーグル55AP・・・CQCナイフ・・・
「貴方にソレが使いこなせますか・・・嘗ての一刀の銃が・・・一刀が嘗て、対B.O.W.殲滅の為にIMI社に作らせた、化物銃が・・・嘗ての一刀の代名詞・・・嘗て実戦で使いこなせたのが一刀以外いなかった・・・嘗ての弟子であり、親友であった貴方に・・・扱いこなせますか・・・」
そう言い、ハウゼンは、春菜をかばいながら『テン』と対峙する。
「低く見てないか・・・この俺を・・・嘗ての俺はあの男から学んだ・・・今では私の方が遥かに上だ・・・」
自信を漲らせながら『テン』は呟く。
「・・・貴方こそ一刀や愛紗、佑を舐めている・・・」
「・・・試してみるか・・・丸腰でお荷物かばいながらこの俺と戦えると思っているのなら・・・忘れたか・・・俺も『Fifth Card』の『テン』と呼ばれていた男だ・・・」
世界に緊張が張り詰めた・・・
最初に動いたのは『テン』だった。
突如発砲する。重低音の銃声が闇夜を切り裂く。
ハウゼンは春菜を抱きかかえた状態で横っ飛びをして銃弾をかわす。
ハウゼンたちがいた所の柱に、バカデカイ穴が開いた。いや、穴じゃなく30センチ柱が吹き飛んでいた・・・
ハウゼン達は逃げる様に寺院内に入る。
追いかける『テン』
ハウゼン達は本堂までたどり着いた。
「人がいなくて助かった・・・人がいたんじゃ、巻き込みますからね・・・」
そう言い春菜をおろすハウゼン。
「私は充分巻き込まれていますが・・・」
嫌味を飛ばす春菜。
「本堂か・・・誰も寄り付かない所に寺立てやがって・・・修行僧気取りか・・・」
『テン』は嫌味を飛ばす。
「何分、人と余り係わり合いになりたくなくて・・・古寺改装してすんでるんです・・・」
『テン』の嫌味を返すハウゼン。
そう言い、突如、床を殴りつけた。
床が割れ、ハウゼンは穴からあるものを取り出す。
それは、全長106センチくらいの反りのある浅葱色の袋に入った棒の様な物だった。
ハウゼンは袋の紐を解き、袋を滑らせる。
袋から出てきたのは日本刀の柄が出てきた。
「『KING』の代名詞・・・関の孫六、高周波振動拵え・・・か・・・」
『テン』はそう言いデザートイーグルを構える。
「春菜!! 隠れていろ!! さあ・・・こい・・・」
そういい、ハウゼンは闘氣を漲らせる。が・・・
突如、『テン』は銃口を逸らした。
「今回は様子見だ・・・また会おう!!」
そういい、『テン』は撤退した。
『テン』の気配を確認し、闘氣を霧散させたハウゼンは春菜を呼ぶ。
「もう大丈夫です。出てきても良いですよ」
「・・・心臓に悪いわ・・・全く・・・で・・・これから如何するのです?」
春菜の質問にハウゼンは顎に手をやり考えながら呟く。
「蒼に・・・行くか・・・ここはもう安全では無いですからね・・・」
「私も行くわよ」
春菜の言葉に驚くハウゼン。
「それはいけない。君を連れて行くわけにも行かない」
ハウゼンの言葉に春菜はこう言う。
「私はもう狙われている。それに・・・貴方に真名を授けたのよ私は・・・信頼してくれても・・・いいんじゃないかな・・・邪魔にならないから、絶対邪魔にならないから連れてって・・・私を・・・また一人にしないで・・・」
泣きながら懇願する春菜・・・
「解りました・・・連れて行きます・・・」
とうとう折れたハウゼン・・・
「本当!? やったあ!! なら仕度しなくちゃ!!」
泣き顔が嘘の様に喜ぶ春菜。
「やれやれ・・・騒がしい娘だ・・・」
「『ゼロ』報告いたします。『KING』と接触、勧誘を開始しましたが失敗、戦闘となり『KING』を取り逃がしました」
『やはりか・・・伊達に『Fifth Card』の『KING』を名乗ってはいないと言う事か・・・』
「いかがいたします・・・?」
『仕方ない・・・シナリオを再度修正するが想定の範囲内だ・・・』
「私の方は?」
『魏と蜀に小銃と大砲の技術を流す事に専念せよ。我々の干与を気取られぬ様にな・・・』
「了解いたしました・・・」
『魏では私が流した偽情報を元に幇(ヤクザ或いはマフィア)の取締りを強化した』
「ほう・・・曹操は『黒社会』に喧嘩を売ると・・・」
『偽の情報で踊らされているとは言え、『阿片を魏軍に大量に売りさばき流したのは幇の連中だ。幇は蒼の警察機構や情報技術を恐れ交渉の破局を目論んだ』と言う情報を流し、ソレを信じた魏では取締りを行っている・・・これで幇の連中は暫く大人しくなる・・・』
「『黒社会』の暗躍や介入は避けたい所ですからね・・・これで暫くは大人しくなるでしょう・・・蜀の方は・・・?」
『曹操との同盟を組ませるよう仕向けた・・・人質未遂事件ももみ消したみたいだ・・・流石、孔明と言ったところか・・・報道機関や関係省庁に圧力をかけたみたいだ・・・』
「溺れるものは藁おも掴むというが、蜀の必死さが伝わってくる・・・」
『万事、事を運ぶがよい・・・』
「了解いたしました・・・」
『ゼロ』は体内通信を切る。
「順調だ・・・全ては俺の思い描いた通りに進んでいる・・・ふふふふふふ・・・ハハハハハハハハ・・・」
可笑しそうに『テン』は笑う・・・
世界は誰も予期せぬ方向に転がり始めていた・・・
※デザートイーグル55APという銃はとある漫画に登場した銃です。
デザートイーグルは実在しますがこの銃はソレを参考に描かれています。
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恋姫無双の愛紗ルート後の二人が真の世界にやってきたら?
という妄想から生まれた駄文です。
読んでもらえれば幸いです。