No.1064804

その後、CWにて。

AEさん

三匹が行く。(二匹は逝った。)

2021-06-20 15:34:46 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:516   閲覧ユーザー数:516

……CWは今日も平和だ。

 

遠くで歩行訓練を行っているダイナレックスを見つめながら、二代目は思った。

ときどきよろけて道端の建造物を小破させたりするけれど、まあ、スーパーのレジがお釣を間違えるくらいの被害であろう。世は順風満帆、平和が一番である。次の任務までの待機時間、こんな緩やかな時間が過ごせるのは……

 

……正直、つまんない。

 

と思っていたとき。彼女のすぐ横に、突風と共に金竜が舞い降りた。

 

ぐあー

 

「見回りご苦労様、ゴルドバーン」

頷いた後、少し躊躇しながら竜は小さく鳴いた。

「え、尋ねたいことがある?」

唸るような鳴き声が、少し長く続いた。

「……ふむ、ちせママのことを考えて、あの世界を後にしたが、よくよく考えれば何故オマエタチに従う必要があるのか、と」

金竜は伸び上がり、両翼を大きく広げて威嚇のポーズ。

「……俺ゴルドバーン、強い。強い俺が何故オマエタチの言うことを聞かねばならんのか……なるほど!!」

すっくと立ち上がった二代目は、ぱん、と両手を撃ち鳴らして、

「そういうことでしたら、ここいらで拳で語り合おうじゃないですか!」

ウヒヒッ、ウッヒッヒッ、という笑い声が響き渡った。

それを聞いて、ゴルドバーンはほんの少し後悔し始めた。

 

 

「……で、どうしてこんなことに?」

既に変身完了したグリッドナイト、その背にはゴルドバーンが装着されている。その対面、(現実界で言えば)100メートルくらい離れた所で、両の腕を組んで仁王立ちしている二代目。

「いやぁ、やっぱりハンデは必要かと思いまして」

 

ぐえー

 

その物言いに、金竜は不満そうだ。

「ナイト君もそこそこ強くなっちゃったし、先代もそろそろ実力を見極めてやれ、とか言ってましたし」

「先代が……?」

空を見上げるスカイ・グリッドナイト。その眼には、虚空に浮かぶ、髭を生やして仙人と化した怪獣の姿が見えているに違いない。

 

……娘を任せるには、まだまだ力不足じゃな、フォッフォッフォ……

 

なんか喋った。

 

「……そういうことなら、全力で行かせていただきます、二代目」

スゥッと自称「戦友(とも)に捧げる深紅の無双剣、名付けてレッド・キャリバー・スペシャル」を実体化させるグリッドナイト。

「(最近は暴れてなくて溜まっちゃってるし……)かかってらっしゃい!」

ぼそっと本音を呟くや否や、両腕を解き、意味不明のモーション(実は意味はない)を開始した彼女の周囲の空間が揺らぎ始めた。同時に生じる無邪気な殺意の波動に、背のゴルドバーンが唸り始める。

「後悔既に遅し、だ。ちなみに俺が拾われてからの勝率を聞きたいか?」

背の両翼と、両脚に全力を込め、何の小細工も無しの一刀両断の構えのまま、グリッドナイトは呟いた。

「……百戦中、一勝九十九敗だ」

目前に出現した、山脈のように巨大で残虐な双眸を輝かす音撃怪獣に向けて、二体の怪獣が咆哮を上げて突っ込んでいく……。

 

 

 

 

 

数分後。

CWの大地に穿たれた幾つものクレーター。

その一番大きな孔の中心に、仰向けでぶっ倒れている巨大な一体と一匹が居た。息も絶え絶えに。

「一太刀も浴びせられなかった……」

ぐぇ~、と金竜も言葉を紡ぐ。

正直、ナイトは愕然としていた。かつて一撃を喰らわせ、「そこまで!」の先代の一声で勝利を得たことがあった。その後、幾つもの世界での任務と言う名の修行を重ね、自分は確実に強くなっているはずだ……なのにどうして勝てないのだ。

「いえ、太刀筋はなかなかに進歩していると思いますよ、ナイト君」

声のする方を仰ぎ見ると、クレーターの崖の上、コンポイドの仮の姿に戻ったアノシラス二代目が立っていた。胸を張り、見下ろす態度で。自信満々な仁王立ちで。

「ちなみに先代立ち会いの仕合では、このくらいにセーブしてましたが……」

人差し指と親指の隙間で表現しているようだが、ここからでは「物凄く小さい」くらいしかわからない。

「今日は全力の半分くらい出せました。自信持ってください!」

ウヒヒッ、という笑い声が漏れる。

出会った頃と変わらない、幼くて無邪気な笑い声。

他の「操られる怪獣」とは異なる、強靭な自我を持つ稀有な存在。

その自我の根本は「CWに産まれた総ての世界が、在るがままに歪まされること無く、健やかに永続していくこと」。

その純真無垢な想いに救われ、惹かれた。

だからこそ。

俺は彼女には従うのだ。

彼女と共に在りたい、と願い、闘うのだ。

CW内でも、いつか、このヒトに勝ち、護れるくらいに強くなるのだ……。

ナイトはそう強く想い、もう一度、逆光の中で仁王立ちする彼女の姿を見上げた。

眼が慣れてその微笑みが見えるようになったとき、スッと視線を反らして言った。

 

「……それから二代目」

「なんでしょうー?」

片手で自らの視野を遮るようにしながら、

「変身解除したままで胸を張るのは止めてください……お願いですから服着て服」

 

 

 

以上。


 
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