No.1063099

近未来文明が残る惑星 第16話

meguro さん

お久しぶりです。閲覧有難うございます。
今回は主人公に大きな変化が起こり、物語が一気に展開が進みます。

もし宜しければ感想やアドバイス等あれば宜しくお願いします。
今後も2ヶ月~3ヶ月おきの更新になるかと思います。

2021-05-30 15:16:40 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:380   閲覧ユーザー数:380

前回のあらすじ

 

 小田原との戦いで真田軍に捕まり上田城に向かったリックだったが、この時代に存在しないはずのハンドガンや天体望遠鏡の存在を見せつけられ、自分の仲間になってほしいと真田幸村に脅迫される。

渋々条件を受け入れ、そのハンドガン等手に入れた場所に向かう途中だったが――――。

 

 

一方その頃―――――

 真田軍兵士、白杉に捕まった瑠璃とカムイは上田城に、到着するなり離れ離れにされてしまった。

カムイは他の捕虜たちと共に城下町の方に連れていかれてしまった。

 

「るりっ……!るりはどうするの!?ボクはどうなっても構わないから、るりを助けて!」

「いいからこっちに来い!」

 

自分のせいで血まみれになって横たわって、ぐったりしている瑠璃を見る度、

胸が強く痛む。自分のせいで―――――。

 

「……でもまあ……可哀想だが、あんなに出血したら命はないだろうな……」

最後にちらりと瑠璃の姿を見て、兵士は呟いた。

 

 

―――――

 

 

ふと意識が浮上し目が覚める。

見た事ない天井が瞳に映った、顔を左右に動かしても知らない部屋だ。

 

「ここは……?私は確か……」

 

畳に襖といったよくある部屋に、南蛮から取り寄せたであろう木の大きな机がある。

鳥の皮を剥いだような木の骨組みに薄い皮を張り付けた妙な物が、天井にぶら下がっている。

丸く複雑な模様が描かれた物体に、瑠璃は魅かれた。

 

「これなんだろう?」

 

そしてソレに触れようとした瞬間――――

 

「あら、もう起きたの?残念……」

 

 

襖を開けて、1人の女性が入って来た。

藤の花の様な鮮やかな、紫色の長髪をした水色の袴を着た女性だ。

女性は瑠璃を見るなり、優しく微笑みかける。

 

「あっ……ごめんなさい。勝手に触ろうとしてしまって」

「いいのよ。怪我の方はどう?応急手当が上手くいって良かったわ」

 

瑠璃は女性の言葉を聞き、怪我をした背中辺りを擦った。

まだちょっと痛むが、気にするほどではない。

それに普段来ている桃色の着物ではない、水色にたんぽぽの絵が描かれた高価な着物に着ていた。

 

「……大丈夫です。もしかしてあなたが手当てを?これにこの着物……」

「そうよ、まだ名乗ってなかったわね。私は紫水。私が小さい頃に着ていた服を着させちゃったけど、きつくない?」

「大丈夫です。とても綺麗な着物ですね。私はるりって言います!手当てして下さって、有難うございます!」

 

紫水はまた優しく微笑むと、瑠璃が触ろうとした丸い物体を撫でながら語る。

 

「これはね、月のオブジェよ」

「おぶじぇ…?それに月ってあの夜空に浮かぶお月様ですか?」

「そんな感じね」

「……あなたは真田軍の人なんですよね?どうして私を助けたんですか?」

 

藤色の美しい前髪が左目に掛かり、より一層ミステリアスな雰囲気がする人だった。

 

「そうね、まあ真田軍ではあるんだけど……戦いには介入しない主義なのよ。

 私が貴女をを助けた目的は、貴女を『この惑星の人柱』にする為なの」

「……ええ?どういうことですか?人柱って?わくせいって?」

「とりあえず、付いてきて。ここにいる間は私が貴女の命を保証するわ」

 

 

 

 上田城を出発してから2時間はたった頃だろうか、私と彼はそれなりに整備されている山道を歩いている。

歩き慣れている私にとっては普通の道だが、彼には過酷な道に感じるらしい。

疲れ切ってへとへとになりながら後をついてきている。

それに耳を澄ますとゴロゴロと怪しい雨雲の声が近づいてくる……。

 

「あのー……なんだか空の様子が怪しいんですが、まだ歩くんですか?」

「そうだな……出発した時は良い天気だったのに。まあ、こんな時もあるさ」

 

彼だけ馬から振り落とされ、仕方なく徒歩で行くのに納得がいかない様子のようだ。

次第に、案の定ぽつぽつと雨が降り出してきた。

 

「うわ……本当に降ってきた!雨宿りしませんか!?」

「そうだね……ああ、あそこの空小屋はどうだろう!?」

 

指さす先にボロボロになって放置されている空小屋があった。屋根は所々穴が開いていて、完全に雨風を凌げるものではなかったが、わがままを言っている場合じゃない。

大きな雷鳴と閃光を上げて雷が近づく。

 

「……よっと、失礼するよ。……君も早く来なさい」

「ああ!ちょっと……待って下さいよ!」

 

馬から降りると空小屋の扉を開ける。中には長らく人が住んでいないのか、雑草など生えてドングリなど所々落ちていた。

小動物たちの住処なのかもしれない。

そんな事を考えながら彼の到着を待っていると突然、外一面が白く光り、遅れて地響きがするほどの大きな雷鳴が鳴り響いた。

 

「ぐっ……これは、きっとこの近くに落ちたな……」

 

嫌な予感がして、空小屋から出ると―――――――

強い雨に打たれながら、ぐったりとうつ伏せで倒れている彼が居た。

 

「―--っリック!!しっかりしろ!大丈夫か!?」

 

慌てて彼に駆け寄り、体を揺らしても返事が無い。まさか―――――

 

「くそ!こんなことで死ぬなんて……完全に予想外だ。まだ計画も何も始まってないのに!……どうすれば……」

 

次第に雨のせいもあってか体が氷のように冷たくなっていく。

彼の死を覚悟した瞬間、彼の口が微かに動いた。

 

「……っ口が動いた……!?まさか」

 

そのまま彼の様子を見守っていると、信じられないことに彼はふらつきながらも、自ら立ち上がった。

雷が直撃したのにも関わらず、生きていたのだ。

 

「……良かった。はあ……金の君、大丈夫かい?」

 

彼の様子を見てつい、安堵のため息をついた。しかし、まだ安心するのは早かったようだ。

彼は、ふらつきながらも歩こうとするが、体制を崩しまた倒れてしまった。

彼の顔を見た瞬間、体が硬直した。

 

綺麗な水色だった瞳が灰色に変色し、口からはヨダレとは違う銀色の液体を垂らしていた。

まさに廃人の様な表情になっていた。

 

「ぁ……アア……ア……タス…ケテ……」

 

あまりの気持ち悪さと不気味さに、彼から距離を取った。

しかし、彼の足元から銀色の液体が湧き出し、蛇の如くうねうねと不気味に動かす。

 

「金の…いや、リック・アーガスト……君は何者なんだ!?」

 

そしてその銀色の液体は一斉に私に襲い掛かった―――――。

 

 

次回に続く

 


 
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