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真・恋姫†無双~三国統一☆ハーレム√演義~ #10 恒例三国首脳大宴会/後編、そして…

四方多撲さん

第10話を投稿です。ようやく二桁投稿達成!
同盟一周年記念祭典、七日目最終日(夜)……大宴会(後編)をお送りします。
いよいよ一週間に及んだ祭典も終了。そののち、物語は大きく動き始めます……
……ところで、もう此処のスタートのネタがなくなってしまったので、以降は普通にしようかなぁ、とw
てな言い訳と共に……お楽しみ戴ければこれ幸い! 蜀END分岐アフター、始まります!

2009-11-06 00:24:36 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:45451   閲覧ユーザー数:32539

 

 

三国会談最終日、恒例の三国首脳大宴会。

 

始まって早々、嫉妬心から静かな爆発を見せてしまった愛紗は、一刀たちをその場に残し、会場を彷徨う。

 

会場の彼方此方で、三国の娘達の口から語られる一刀への想い。

 

愛紗の心の靄は、未だ晴れない……

 

 

愛紗が会場を彷徨い、乙女達の様々な言葉に翻弄されていた頃。

会場の一角では、三国の苦労人達が集まっていた。

 

 

「全く……雪蓮にも、困ったものだ……」

 

そう嘆息しつつ酒を呷るのは、呉の柱石である冥琳。

彼女のいる卓では、秋蘭、流琉、白蓮、斗詩も共に杯を傾けていた。

 

「中々苦労しているようだな、美周郎殿も」

「その通りだよ、秋蘭。いくら諌めても、正に蛙の面に水だ。だがそういう意味では、そなたの姉君も同じではないか?」

「はっはっは!まあその通りだが。それでこそ我が愛しき姉者、とも言えるしな。冥琳とてそうだろう?」

 

諦め顔の冥琳の一言に、からりと笑って見せる秋蘭。

その返しに冥琳も苦笑して見せた。秋蘭の一言は、まさしく図星であったからだ。

 

「ええ!? お心が広いんですね、夏侯淵さんは……私は麗羽様や文ちゃんの暴走に、時々付いていけない時がありますよぉ……」

 

寧ろ秋蘭の言葉と笑顔に大きく反応したのは、蜀でも屈指の苦労人。顔良こと斗詩だった。

 

「……心中察する。お主は、主の袁紹と、猪突猛進の文醜の二人を同時に相手にせねばならんからな……」

 

斗詩に深く同情する秋蘭であったが……そんな彼女の言葉が寧ろ切っ掛けとなったか。いよいよ斗詩と白蓮の口から愚痴がぼろぼろと滝のように流れ始めた。

 

「はぁ……もう姫ったら、今回の祭典でも我儘放題で。お御輿で練り歩きたい、とか。植えると天まで届く豆を探して来い、とか。漫談大会に飛び入り参加しろ、とか。すっごい恥ずかしい格好で人前で踊れ、とか……」

 

「そうだよな。その度に何故か麗羽担当扱いの私も呼ばれて巻き込まれてさ……口で言って止まる奴じゃないから、いちいち警備兵連れて止めなきゃいけないし。でもそうすると猪々子や斗詩と戦う羽目になるし……」

 

「文ちゃんは全然助けてくれないどころか、逆に私を引きずり込もうとするし。賭け事でいつの間にかお金使っちゃうし……お陰でお祭なのに『あるばいと』することになっちゃったし……」

 

「斗詩は止めてくれるんだけど、やっぱ他人の制止なんか聞いちゃいないんだよな……私は結局、今回の祭で何処も回れなかったよ……」

 

言うほどに落ち込んでいく斗詩と白蓮。

周囲も同情を禁じえない。

特に幼い頃から華琳に侍り、その頃からの袁紹・麗羽を知る秋蘭に至っては涙ぐんでいた。

 

「くぅっ……苦労しているのだな……。慰めにもならないが、これからは私を秋蘭と呼んでくれ。日頃からお主を助けることは出来ないが、今日のように集まったとき、愚痴の相手くらいは出来よう」

「ふふっ、苦労人同士の相互組合のようだな……私は冥琳だ。耐え忍ぶこともまた戦いだ。互いに頑張ろうではないか」

「そうです!無茶な相棒に振り回される同士……仲良くしましょう! お二人はもうご存知ですが……私は流琉です!」

 

「あぁ……! 秋蘭さん、冥琳さん、流琉ちゃん! ありがとう、ありがとうございますぅ……ToT」

「ありがたく受け取らせて貰うよ、冥琳。ありがとう、秋蘭。これからよろしくな、流琉。……よかったなぁ、斗詩」

 

涙を滔滔(とうとう)と流す斗詩と、釣られたのか涙目の白蓮。

 

「はい! 私は斗詩です。これからもよろしくお願いします!(ぺこり)」

「白蓮だ。そのうち、相棒も紹介して貰えると嬉しいな」

 

なにやら仲間意識が芽生えた一同であった。

 

 

……

 

…………

 

 

暫し五人は互いの相棒の無茶話を肴に呑んでいたのだが。

 

「まあ麗羽の我儘は昔っからだけどさ。最近はちょっとマシになった気もしてたんだけど……」

「ちょっとだけ成長したんですよ、麗羽様も……」

「今回はあいつ好みの派手な大祭りだったからな。その“ちょっと”の成長じゃ大人しくはならなかったか……いや、大人しい麗羽ってのは、それはそれで不気味だけど……」

「……白蓮は、その袁紹に領土を奪われ、危うく殺されそうにまでなったというのに……心が広いとかいう問題でないというか。人が良すぎると思うのだが……」

 

愚痴っていたと思ったら、麗羽のフォローのような発言をした白蓮の人の良さに、秋蘭は思わず突っ込んでいた。

 

「北郷の仲間でいると、そういうことがどうでもよくなってくるんだよ。本当に、不思議とね……。私だけじゃないぞ。例えば……翠もそうだ。華琳――曹操は、御母堂や一族郎党の仇とあって相当に恨みがあったろうが……私怨より平和。“あの時”、華琳やお前達を前にした、翠のあの言葉には感動したね」

「……そうだな」

 

白蓮の言葉に、秋蘭は今よりほぼ一年前のある日に思いを馳せた。

 

三国同盟が成った直後。まだまだ三国の武将達が打ち解けきっていなかった頃。

蜀都である成都で催された第二回の三国会談の終わり間際。

曹操・華琳が夏侯姉妹を供に蜀陣営を訪ねて来たことがあった。

 

「華琳?どうしたんだ」

「……失礼するわ。馬超と馬岱に会いたいのだけれど」

 

華琳のその一言に、一刀を初め、蜀の者の誰もが息を呑んだ。

同盟こそ組んだが、華琳は翠の母であり、蒲公英の叔母である馬騰の仇なのだ。

 

三国鼎立の直前、覇王を自称し急速に勢力を伸ばしていた華琳は、その政策の一環として涼州にも侵攻していた。

その際、馬騰を盟主とした涼州の諸侯たちと激しい戦争となり、最終的には曹魏の完勝となった。

そして、その戦争の最中、馬騰は死亡しているのだ。

翠と蒲公英は、その死に目にあうことも出来ず、曹操軍に大敗を喫し益州へと落ち延びた。

そして、同様に曹操軍によって徐州を追われ入蜀した劉備陣営に与(くみ)することとなったのである。

 

「……あたし等なら、ここにいるぜ」

「…………」

 

奥より現れた翠と蒲公英。その表情は当然というべきか、厳しいものだった。

普段ならおちゃらけたところの多い蒲公英ですら、敵意に近しい雰囲気を発していた。

 

「……曹魏の涼州侵攻の際のことで、あなたたちに伝えなくてはならないことがあるわ」

 

華琳がそう切り出すと、蒲公英が反応した。

 

「いまさらッ!アンタに言われなきゃならないことなんて、なんにもない!!」

「貴様ァ!華琳様に向かってなんという口の利き方を!」

 

蒲公英の激昂に、やはり激昂で返したのは春蘭だった。しかし。

 

「黙りなさい、春蘭! 今回、口を開いて良いのは、この曹操の許可があったときのみ、と命じた筈!」

「は、はっ!申し訳ございません……」

 

華琳の一喝によって黙らされる。

 

「……たんぽぽ。お前も落ち着け」

「どうして、お姉様!? 曹操は……あいつ等は叔母様や一族みんなの仇なんだよ!!?」

「勿論分かってる。でも……言いたいことがあるなら、曹操の後にしろ」

「……はい」

 

いつにない静かな重圧を放つ従姉に押されるように、蒲公英も従った。

 

「……翠。大丈夫だね?」

「ああ。任せておいてくれ、ご主人様」

 

一刀は翠が冷静であることを確認し、以後の会話を任せることにした。

 

「……曹操。伝えたいことってのは何だ?」

「あなた達が知らぬ、馬騰殿の逝去の顛末について。――出来れば人払いを願いたいわ」

 

周囲が少々ざわついたが、翠は一旦瞑目し……華琳を見据えて答えた。

 

「いや……ここにいるのは、あたしの――馬一族の仲間達。秘密も人払いも無用だ。元・涼州州牧、馬騰が一子。この馬孟起が聴く。母は……立派に戦ったか?」

 

翠のその一言に、あの華琳が表情を崩した。

現れた感情は、慙愧でもなく、後悔でもなく。“無念”であった。

 

「馬騰殿は……私と戦うことなく逝ったわ。自ら毒を呷って」

「!!」

「う、嘘……そ、そんな……あの叔母様が……」

 

五胡を初めとする異民族と常に緊張状態を続け、幾度となく戦い、逆にその一部と盟友として友誼すら結んで見せた名君。

五胡の精兵たる騎馬兵相手に常勝した戦上手としても知られる豪傑が、戦うことすらなく自害した。

その事実に、その場にいた誰もが衝撃を受けた。

 

「馬騰殿は随分前から病魔に蝕まれていたそうね……。私は。覇王を称していたあの頃の私は、馬騰殿――馬寿成と戦を交えることを本当に愉しみにしていたのよ……でも」

 

司令塔を欠いた涼州同盟軍を破り、華琳自身が城内へ入った時。既に馬騰は敵軍に首を渡すことを嫌い、自害していたのだった。

 

「我が軍でこのことを知るのは、今日連れて来たこの二人の将軍と、報告した一兵のみ。その兵にはこの曹操直々に口止めしてあるわ……」

「……そうか。母の名誉を守ってくれたこと、感謝する」

「彼女の亡骸は、城の女中に命じて、郷土の流儀で葬って貰ったわ。場所は……あなた達ならばそう伝えれば分かると聞いているわ」

「う、うん。それなら、あそこだよね?お姉様」

「そうだな。……真正面から戦えなかったのは、きっと母も曹操と同じく無念だったろうと思うけど。――ありがとう、曹操。今はきっと、この平和な世の中を喜んでくれていると思う」

「!!」

 

穏やかな顔と声。その場の誰もが、翠の振る舞いに驚きを隠せなかった。

 

「……正直、あなたたちに罵倒されるだろうと思って、春蘭や秋蘭に口を開かないよう命じてきたのだけれど……。要らぬ心配だったようね」

「――ふむ。どう言い繕ったところで、曹操殿が翠とたんぽぽの一族郎党の仇であることは変わらん。私は最悪、おぬしらが槍を抜くことも想定していたのだが。おぬしは……曹操を赦せるのか?」

 

華琳は感心したように告げ。蜀の仲間達を代表するかのように、星が翠に尋ねた。

 

「確かに曹操はあたし等、馬一族の仇だ。でも……あたしさ、ご主人様達と過ごすようになって色々考えたことがあるんだ」

 

そう翠は切り出した。

 

「最初は故郷の奪還と仇を討つことしか考えられなかった。

 だけど、ご主人様や桃香様と話したり、一緒に戦う内にさ。大陸の平和とか、街の人達のこととかを考えるようになった。

 そうするとさ、不思議と……優しい気持ちっていうか。桃香様の『理想』って奴を信じられるようになったって言うか……。

 だからこそ……母上を殺されたこと。一族が離散しちまったこと。そういうことに対して、恨みはあるにはあるんだけど……

 平和っていう『理想』の前には小さな出来事なんだって。そう思えるようになったんだ。

 だから。今、平和の為に尽力する曹操を、ただ恨むようなことはしない。

 もし……もし、あたしの槍が曹操に振るわれることが今後あるとするなら。それは曹操がこの平和を乱そうとした時だけだ」

 

長い、長い所感を、丁寧にひとつずつ言葉を選びながら、訥々と語る翠。

誰もがその言葉に聞き入っていた。蜀の者だけでなく、華琳も、夏侯姉妹も。

 

「どうかな? こんな考え……おかしいかな?」

「――いや、そんなことはない」

 

自信無さ気に問うた翠の言に、真っ先に答えたのは――『理想』の隣に最も長く立ち続けた愛紗だった。

 

「うん!愛紗ちゃんの言う通りだよ。翠ちゃんがそんな風に考えてくれていて……私、すっごく嬉しい!」

「まさしく。……まさか翠からそのような言葉を聞くとは思ってもいなかったがな」

「たっくさん見直したのだ!」

「ええ、本当に。……一人で良くそこまで考えたわね……本当に偉いわ」

「全くもって、焔耶にも見習わせたいくらいじゃ」

「ひ、酷いですよ、桔梗様……。だが、確かに素晴らしい覚悟だった。見直したぞ、翠」

「…………翠、凄い」

 

桃香を初めに、次々に武将達が称え。

 

「そうですね。翠さんのその考えって、ホントに凄いことだと思います」

「はい。“怨嗟”を乗り越えられるって、本当に凄いです……」

「そうね。……恨み、か……もし、あの時。月を失ってたら、ボクは……」

「皆さんが仰る通りだと思います。……詠ちゃん。ご主人様と一緒なら、きっと詠ちゃんも乗り越えられるよ」

「ふん、いつもは猪の癖に……。今日ばかりは褒めてやるのです!」

 

軍師らも賞賛した。

 

「ぐすっ……精一杯悩んだ結果なんだろうな……」

「…………」

「本当に、凄いよ。翠ちゃん」

「あたいは、姫や斗詩がいなくなったらって考えるだけでも嫌になっちゃうぜ……」

 

白蓮は感涙で半泣き。麗羽は呆然。斗詩は素直に感激し。猪々子も感心しているようだった。

 

「お姉様……」

「たんぽぽ。あたしの考えを押し付ける気はない。自分で、ゆっくり考えろ。いざとなったら、あたしやみんなに相談すればいい」

「うん……!たんぽぽ、お姉様の従妹だってこと……今、すっごい誇らしいよ!」

 

そして、蒲公英もまた、翠の言葉に涙を浮かべていた。

幼いながら、彼女もまた、蜀の『理想』をその身に染み付けていたからこそ。

従姉の覚悟を誇りを以って受け入れていた。

 

「あ、ご主人様……」

 

一刀は、翠と蒲公英を包むように抱き締めた。

 

「よく……よく考えたね。本当に凄いよ……」

 

自らの親を、親族を殺されながら、それを乗り越え、大儀の為に仇をも受け入れる。

長い混乱と戦乱の時代に生きた者が憑りつかれている“怨嗟”を断ち切って見せた女傑に、一刀は心から尊敬の念を抱いていた。

 

(翠が語った中にある含蓄には、一体、どれ程の苦しみがあったんだろう……俺も、彼女に相応しい男にならなきゃな……)

 

「み、みんなの前で、こんなの恥ずかしいって! それに……こういう考えが出来るようになったのは、やっぱりご主人様のお陰だからさ……ご主人様が、いつも街のみんなと触れ合ってるのを見ていて、何かに気付いた気がするんだ……」

 

「ふふっ♪お姉様ったら恥ずかしがり屋なんだから♪……でも、たんぽぽもお姉様の言うことに賛成かな。えへへ♪」

 

そして、蜀の皆が語り終え、一刀が翠と蒲公英を放した後。華琳が翠に話しかけた。

 

「――馬超よ。曹孟徳の名に懸けて。私は、この大陸の平和の為に身命の全てを賭しましょう。……ふふっ、涼州は今は魏領となっているけれど。あなたなら、馬騰殿に負けない良い盟主になれるわ」

「はっ、よせやい。あたしは母上みたいに頭が回らないからな。その辺はご主人様や桃香様……涼州は、曹操にお任せするよ」

「確かに任されたわ、馬孟起。あなたの気高い心に敬意を表して。馬一門に我が真名を預けます。……姓は曹、名は操、字は孟徳。真名は――華琳よ」

「!! 分かった。あたしも大陸の平和にこの身命を賭すことを誓う。姓は馬、名は超、字は孟起。真名は――翠だ!」

「たんぽぽも、お姉様に、曹操……華琳に負けないように、全力で頑張るよ!……名は馬岱、真名は蒲公英!」

 

 

この後、幾人かの武将達が真名を交換した。

ある意味、蜀と魏が真の意味で同盟を結したのはこの時であったのかもしれない。

 

(馬超……翠の覚悟も、やはり元は北郷との触れ合いだという。全く本当に北郷という男は、不思議な魅力を持つ……)

 

秋蘭は一年前を思い出しつつも、北郷一刀という男の影響力の大きさに改めて驚嘆していた。

 

「なんだか、懐かしいなぁ……もう一年近くも前の話なんだよな。翠は北郷と出会って数ヶ月で、あれだけの成長をしたってのに……麗羽は一年以上かけてもあの程度か……」

「白蓮様。寧ろ“たった”一年で麗羽様が成長したことが、ご主人様の凄さだと思いますよ?」

「……そうかも……」

 

同じく思い出に耽っていた白蓮と斗詩は、翠と麗羽を比べてなにやら酷いこと言い合っていたが、ふと秋蘭がいつぞやの宴の事件を口にした。

 

「袁紹といえば。“その”袁紹が月――董卓に謝罪した件は知っているか、白蓮?」

「ええ!? そうなのか!!?」

「ああ。反董卓連合の件についてな。偶々同席していたのだが。いや、全く驚いたよ」

 

驚愕するしかない白蓮である。

月の正体が董卓であるということが麗羽にバレたということは一刀から聞いていたものの、謝罪については聞いていなかったのだ。

 

「……あれは確かに嬉しかったですけど……その優しさというか成長を、部下にも向けて欲しいです……」

 

麗羽の成長は部下には向けられないらしい。斗詩はどうにも複雑な心境らしかった。

 

「……私は謝られたことないぞ……」

「白蓮様とは日頃から言い争っているので、気恥ずかしいんじゃないかと……」

「麗羽の奴ぅ……」

 

寧ろ直接侵攻を受け、自身の領地から追い出された白連が恨み言を漏らすが。

暗さの欠片も無い辺り、やはり人の好い白蓮であった。

 

「本人の弁を聞くに。袁紹が心変わり……というか改心した原因も、やはり北郷のようだったがな」

「ふむ。本当に面白い男だな、あやつは。もっとも、そのせいで私は苦労しているのだが……」

 

一刀へは少なからず思慕の念を持つ冥琳だったが。現状の彼女には、彼は頭痛の種でもあった。

 

「……そこで雪蓮殿に話が戻るわけか」

「そうなのだ。大層な惚れっぷりでな。蜀の皆には迷惑をかけているだろう?」

 

冥琳は済まなそうに白蓮、斗詩に問う。

 

「……まあなぁ。特に愛紗がピリピリしちゃっててさ……本音を言えば、私だって面白くはないぞ?」

「でも……ご主人様だから仕方ないって気がひしひしとしてるんですよね……」

「……それを言うなよ、斗詩」

 

斗詩の一言に、がっくりと肩を落とす白蓮。内心、彼女もそう感じているらしい。

 

「しかし、雪蓮の奔放っぷりにあそこまで付き合ってくれる者は呉の内部ですら稀有でな。そういう意味でも、私は北郷を高く評価しているのだが」

「単に女の頼みごとを断れないだけ、という話もあるぞ」

 

冥琳の褒め言葉に、白連が一言物申す。

しかし、一刀の付き合いの良さは純然たる事実であり。流琉が首を傾げつつ疑問を口にした。

 

「でも本当に……兄様の、あの耐久力というか、忍耐力はどこから来るんでしょう? 春蘭様に振り回されても、季衣の我儘にも。文句を言ったり怒ったりはしても、ちゃんと相手をして下さるし。――でも、何か間違った事をすると、ちゃんと叱ってくれるんですよね……////」

「おやおや、どうやら流琉もすっかり北郷の虜のようだな。はっはっは!」

「し、秋蘭様!? そ、そういうことじゃなくてですね!?////」

 

思わず頬を染めた流琉をからかう秋蘭。慌てて否定しようとする流琉だったが。

先の疑問に対して、斗詩が自説を答えた。

 

「ご主人様は……基本的にみんなの笑顔が大好き、なんだと思います。みんなが笑顔でいるのを見ているときって、凄い嬉しそうで。引き込まれちゃいそうな笑顔というか……////」

「あ……それ、分かるかも……。街の皆さんを見る目が、凄い優しくて……////」

「それにいつでも楽しそうだから……文ちゃんなんかがそうなんですけど。季衣ちゃんや孫策様も我儘を言い易いんだと思いますよ? 大概のことは笑って許して下さるし……笑みが引き攣ってるときもありますけどね(汗」

 

一刀の付き合いの良さを説明していたはずが、途中から一刀を褒めた形になった斗詩だったが、件の笑顔を思い出したのか、かなり赤面していた。

流琉も、斗詩の言わんとしていたことが理解出来たらしく、最早頬だけでなく、顔全体が赤らんでいた。

 

「こちらも重傷のようだな。はっはっは! まぁ蜀の者は皆そうなのだろう。なぁ、白蓮?」

「そこでこっちに振るのかよ!……ま、まぁそういうことだよ////」

 

いきなり話を振られ、頬を染めつつもそっぽを向く白蓮であった。

 

「しかし、国主が別の国の代表の側女、というわけにもいかん。中々頭の痛い問題なのだよ……」

「うむ。華琳様も、そこでお悩みのようだ……」

 

切れ者たる冥琳、秋蘭の二人は、三国の現状の難しさに思わず眉をひそめた。

 

「雪蓮も、今頃――桃香殿や華琳殿と話されているだろう。友としてはその恋を応援してやりたいものだが」

「国と友情の板挟みで、そう言えるなんて、流石『断金』と謂われただけはあるなぁ。……冥琳も辛いところだよな」

「そう言ってくれるだけでも、少し救われた気分だよ。……ふふっ。慰めてくれる相手がいるというのは、中々いいものだな……」

「……冥琳さんは、ようやく大病を平癒されたばかりとも伺っています。どうかご自愛下さいね……?」

「ああ。ありがとう、斗詩……」

 

配慮の言葉を掛けてくれる皆へ、冥琳は謝礼を述べ。嬉しさを隠すように薄く笑った。

 

また、別の一角では。

 

「真桜殿~~~!この陳公台、伏してお願い致すのです~~~~!!」

「なっ、なんやねん!いきなり!?」

「つーか、なんでいきなり土下座なんだ?」

 

真桜と猪々子が飲み食いしていた円卓に、突然音々音が訪れ土下座した。

 

「へぼ太守がこの間、愛紗に小遣いを前借りする為にやっていたのを真似たのです!」

 

「……北郷はんって太守っちゅーか、蜀王の桃香様の主ってことやから、要は王様やろ? なんで小遣い制やねん……」

「そういやアニキって太守なのか?……どうでもいっか。 本人は、三食は保証されてるし、贅沢する気ないんだってさ。たまーに女に贈り物するくらい? あと鈴々や恋、あたいとかにメシたかられたりな。へへへっ♪」

「ホンマおかしな人やなぁ、北郷はん……で、ねねはウチに何をして欲しいんや?」

 

一刀の基本生活に呆れつつも、とりあえず音々音へ向き直る真桜。

音々音は、床に座り込んだまま顔を上げて真桜を正面から見据えた。

 

「ねねは常日頃から恋殿にちょっかいを出す、あのへぼ太守を懲らしめる為に、『ちんきゅーきっく』を以って打ち据えておりました! ところが……ここ最近、奴めの耐久力が増したのか、思ったような効果が出ないのです。……こうなっては『ちんきゅーきっく』の強化は最優先課題。そこで!三国一の開発王と謳われる真桜殿にご協力をお願い致したいのです!」

「“きっく”って天界の言葉で“蹴り”やっけ?……自分とこの大将、蹴っ飛ばしとんかい!」

「一応突っ込むんだな。むぐむぐ……まぁ、あたいもアニキが斗詩にちょっかい出したと思ったとき締め上げたりしたし。……誤解だったんだけど」

「魏で大将にそんなんやってもーたら、即座に首が飛ぶで……。あんた等がどうこうっちゅーよりは、北郷はんがおかしいんやろな……。ともかく、実物見てみんとなんとも言えんなぁ」

「ならば……む!見ていてくだされ!」

 

言うが早いか、音々音は駆け出した。

 

「おーい、何処行くねん、ねねー?」

「あ、ほら真桜。どーも標的を見つけたみたいだぜ?にひひ……」

 

猪々子は、音々音の向かう先に標的――北郷一刀の背を見つけ、意地悪く笑った。

 

『ちーーーんきゅーーーー、きぃぃぃぃぃぃっく!!!』

 

ドガッ!

 

『ぐおぉぉぉぉっ!?』

 

助走から高く飛び上がった音々音は、見事に一刀の背中に飛び蹴りを見舞った。

吹き飛ばされ、床に倒れ伏す一刀。しかし、すぐに起き上がり、音々音とぎゃいぎゃい言い合い。

暫しして、音々音はこちらへ戻ってきた。

 

「……この通り。不意打ちで打ち据えても、奴め、ぴんぴんしておるのです……」

「ほっほー。要は飛び蹴りやな。ちゅーことは……単純に威力を増そうってんなら“重さ”と“高さ”を補助する道具を作ればええんやね?」

「……刃物は駄目なのですか?」

「「それは駄目やろ(だろ)」」

 

音々音の物騒な発言に、真桜と猪々子が即突っ込んだ。

 

「靴に重りを仕込んでみるか? でも、ねねの体格やと重過ぎると跳躍でけへんな。んー、高く跳ねられる道具か……跳躍台くらいなら、すぐ作れるんやけど。ちっと重い上にかさ張ってまうな……」

「そんなの持ち歩くの大変じゃね?」

「ならば張々に運んでもらうのです!」

「ああ、あのでっかい犬か。なるほど……運搬出来るよう、帯を付けて……よし、試作品でけたら魏から送ったるわ」

「おお!感謝なのです!必要経費は、へぼ太守に請求するとよいのです!」

「……自分を蹴っ飛ばす為の道具の開発費を本人に払わせるのかよ……ぷっ、アニキらしいや。あははは!」

「ほんま、王様っぽくないお人やなぁ……」

 

あんまりな請求先に思わず突っ込んだ猪々子であったが。

考えてみると、それこそ余りにも一刀らしくて笑いがこみ上げてきた。

そんな一刀配下の二人(猪々子は正確には麗羽の部下だが)の様子に呆れ気味の真桜である。

 

 

「なにを笑っていますの、文醜さん?」

「あれ、姫。食うもの探して回ってるんですか?」

 

そこへやって来たのは麗羽だった。

 

「文醜さんじゃあるまいし、そんな訳ありませんわ。わたくしは真桜さんに用がありますのよ」

「ウチ?どないしたん?」

「ええ。前回作って頂いたアレ。とても良い出来でしたわ。流石は三国一の開発王。褒めて差し上げますわ♪ おーっほっほっほ!」

「ああ、『張り子ちゃん伍号』と『お菊ちゃん参号』やね。そら良かったわ」

 

敢えてここでは『張り子ちゃん伍号』と『お菊ちゃん参号』が何なのかについては触れない。

 

「おー、あれかぁ!いやー、アレされちゃってる斗詩は可愛かった~!」

「で、実は一刀さんからちょっとお話を伺いまして。またひとつお願いしたいのですわ」

「ほっほー!北郷はんのネタかいな。そら楽しみやな!是非聞かして欲しいわ!」

 

真桜は、天界の知識に興味深々である。元ネタが一刀からの情報と聞いて俄然乗り気になった。

 

「ええ。何でも天界には、女性同士が愛し合う為の道具として、この張り子を二つ組み合わせたものがあるそうですわ。こう、根元同士をくっつけて……」

「はぁ~!なるほどな!」

「で、それを下穿きにくっつけて……」

「なんやて!ははぁ……単純に張り子を下穿きにくっ付けたんは作ったけど……それは思いつかへんかったわ」

「なんでも『双頭ぺ●すば●ど』とか言うらしいですわ。これがあれば男性と同じように女性を……」

 

敢えてここでは『双頭ぺ●すば●ど』が何なのか(ry

 

「ちょっとあんた達!今の話、詳しく教えなさいよ!!」

 

そんな淫猥な会話に突如首を突っ込んで来たのは、桂花であった。

 

「うわっ!びっくりしたわ~。なんや桂花も欲しいんか……つか、でけたら大将に贈ればええんやね?」

「ふふん、さすが真桜。分かってるじゃない」

 

とは言え。桂花が華琳の“奴隷”を自認するのは魏どころか三国で城勤めの人間の間では周知の事実。

真桜も、いつものように対応したのだが。

 

「……ちょっとお待ちなさい、荀彧さん」

 

異論を挟んだのは、麗羽だった。

 

「なによ、袁紹。ちゃんと順番くらいは守るわよ」

「そんなことは当然ですわ。そうではなく、今話していた『双頭ぺ●すば●ど』は華琳さんには使えないのではないの?」

「……どういうこと?」

 

桂花は麗羽の言いたいことが分からなかったようだ。

 

「意外に話の分からない人ですわね。つまり……華琳さんは“処女”なのだから、『双頭ぺ●すば●ど』は使えないでしょう、と言っているのですわ」

 

「「ええ!?」」

「!?(ぱくぱく)」

 

麗羽の発言に驚いたのは真桜と猪々子。

桂花は驚愕なのか、衝撃なのか。口を開いたまま、一瞬言葉が出て来なかった。

 

「た、大将ってそうなん!?」

「へえ~、男嫌いとは聞いてたけど。そうなんですか?麗羽様」

「そ、そんな。いえ、でも……。確かに愛して戴いてはいても……」

「いやー、意外だったなぁ。曹操様ってそうなんだぁ~」

「ウチも知らんかったわ……。まあウチは大将のお相手したことあらへんからなぁ」

 

「自らを高貴な存在であると認識する女官は、得てして身体を許す相手に巡り合えないものですわ。そもそも政略結婚の相手と実際に結婚するまで自身は清い身でいるのが当然、という風潮もあるのですから。華琳さんもまた、宦官とは言え名門の出自。そんな驚くようなことではないでしょう?」

 

「……まあ、確かにそうやんなぁ」

「う、うう……え、袁紹の癖に正論を……」

「な、なんか姫が頭良く見える……酔いが回ったかな……?」

「文醜さん、どういう意味ですの?#」

「え?えへへ……」

「……この間の顔良さんの様に、一刀さん抜きで『張り子ちゃん』と『お菊ちゃん』のオシオキしますわよ?##」

「うえ!? 斗詩にするのはいいけど、されるのは嫌だぁ~! 麗羽様ぁ、それだけは勘弁してぇ~!」

 

オシオキの内容についても(ry

 

麗羽と猪々子がぎゃいぎゃいやっている間も、華琳処女説に呆然としていた桂花だが、その耳に真桜の聞き逃せない一言が飛び込んだ。

 

「……こら、大将の“ハジメテ”は北郷はんのモンかな?」

「なっ!そんな馬鹿なことあるわけないでしょう!!?」

 

即座に反論する桂花。しかし……

 

「いやー、大将の態度見とったら分かるやん?あら本気やで~?」

「!」

 

「あ~、確かにアニキに女が引っ付いてると、不機嫌だよな。こないだは姫との接吻見せつけられてキレてたし」

「!!」

 

「……そうですわね。華琳さんは小癪にも一国の王となったのです。釣り合う男性となると、一刀さんくらいのものですわね」

「だ、だからって!アレは仮にも蜀の代表なのよ!魏王で在らせられる華琳様となんて!三国の均衡が崩れるわ!!」

「欲しいと思ったモノは如何にしても手に入れる。それが曹孟徳――華琳さんだった筈。三国同盟の制約程度に邪魔されて想い人も手に入れられないとは。かつての覇王も落ちたものですわね? おーっほっほっほ!」

「!!!」

 

正直なところ、麗羽のこの言葉は状況が見えていない我儘な話であるだけなのだが。

何故か桂花には反論出来なかった。

 

「こうなったら……奴を殺るしか!?」

「「おーい……」」

 

怒りの余り(?)、発想がイってしまった桂花に、真桜と猪々子が突っ込んだ。

 

「心配は無用ですぞ、お花!……むぅ、これだとたんぽぽと同じ渾名なのです……。まあ、とにかく桂花。奴にはこのねねが、強化した『ちんきゅーきっく』でしっかりとオシオキしておくのです!」

「……あんな飛び蹴りじゃ、甘すぎるわ!……そうよ、私が落とし穴を作って奴を……」

「ならば、ねねの『ちんきゅーきっく』で奴をその落とし穴に蹴り落としてやるのです!」

「それはいい案だわ! ついでに真桜に言って靴に刃物でも仕込みなさいよ!」

「刃物は先ほど却下されたのです……」

「なら螺旋……確か天界の言葉だと……そう、『どりる』よ! 真桜の『螺旋槍』みたいな奴!」

「おおー!それは格好いいのです!」

 

「「「…………」」」

 

沈黙する三人を尻目に、音々音と桂花は盛り上がり続けたのだった。

 

会場の端、廊下のすぐ近く。

座席用の長卓のひとつに五人の女性が座り、対峙していた。

 

「さて。今回は呑兵衛王者決定戦がありませんでしたからな。ここはひとつ、我々だけでも一勝負といきませぬか?」

 

そういって挑戦的な笑みを浮べるのは星。

 

「ほぉ。前回優勝者の儂を前に、言うてくれるではないか」

「あらあら。でも前回はわたくしとの接戦の末ではないですか」

「ウチらかて、数手の差やったんや。この勝負……誰が勝つかなんざ、分からへんでぇ?」

「ふふ。どうやら皆乗り気のようじゃな。では……」

 

星、祭、紫苑、霞、桔梗。自他共に認める酒豪どもである。

既に机の上や、その隣りには大樽含めて明らかにこの場に居る五人の体積より大きい量の酒が用意されていた。

 

「そうこなくてはな。――勝負形式は、全員同時で一杯ずつ呑み干す形を。折角の酒を味わうことなく呑むなど、酒に失礼ですからな。勝負ではありますが、楽しく呑りましょうぞ」

 

「はっはっは! 流石は星よ。粋というものを分かっておる!」

「儂も異存なし。では早速、呑ろうではないか♪」

「ええ。うふふ♪」

 

杯を用意し始める面々。

 

「「「「「では、乾杯!」」」」」

 

まず一杯。皆、さも旨そうに呑み干した。

 

「……そういや、雪蓮は来いへんの?」

 

霞はふと気付いて尋ねた。それはそれとして、全員で二杯目。

 

「そういえばそうじゃのう。まあ国主同士、語ることもあるのだろうが……」

 

桔梗が答えつつ。三杯目。

 

「むう……今、策殿はのう。ホレ、北郷のことで色々揉めておるでなぁ……」

 

と祭がそう漏らす。四杯目。

 

四杯目を呑み干したのち、誰もが思わず嘆息した。

 

「あー……そら仕方ないんちゃう?“こういうこと”は早いモン勝ちなトコもあるし」

 

少々苦い表情の霞。五杯目。

 

「それもまた真実ではあるが……。だからといって諦められるような雪蓮殿でもあるまい?」

 

六杯目。星は次の分を杯に注ぎつつ、所感を述べる。

 

「星の言う通りじゃ。これは飽く迄、儂個人の感想として聞いて欲しいのじゃが……」

 

そう言って、七杯目を空にし。祭は更に続けた。

 

「策殿は……場合によっては呉と北郷を天秤に掛ける程に惚れとるような気がしておる」

「「「「!!?」」」」

 

この発言には、さしもの四人も一瞬八杯目を呑むのを止めてしまう程に驚愕した。

 

孫伯符と言えば、『江東の虎』と謂われた豪傑、孫文台の跡目を立派に継いでみせた英傑である。

故に自身も『江東の小覇王』とまで謳われたのだ。

その彼女が――国を捨て、男を取ると?

 

「元々、策殿は政治を冥琳……大都督たる公謹に任せ、奔放にやられておる所があったが。ここ最近は、政務中でも溜息やら遠い目やら……すっかり恋する乙女、という状況でな」

 

祭は愚痴というより……娘か妹が初恋をしたような、そんな嬉しさと寂しさを織り交ぜたような複雑な笑顔だった。

それはともかく全員九杯目。

 

「いつ、跡目を権殿や尚香殿に譲って蜀へ行くと言い出すか……少々心配なところじゃよ」

 

十杯目。

 

「な、なあなあ、いくらなんでも……そ、それは無責任ちゃうんか?」

 

ようやく落ち着いた霞が、それでも驚きの態(てい)で突っ込んだ。十一杯目。

 

「そもそも、蓮華殿も小蓮殿も主に心底惚れ込んでいるのは明らか。その計画は……無理であろう?」

 

星は冷静に状況を口にする。同時に十二杯目。

もしその計画を実行するなら、跡を継ぐ者――雪蓮の妹達が北郷一刀への想いを果たせないことになる。

 

「然り。……そうか、故に雪蓮殿も苦しんでおられる、ということか……」

 

得心が言ったとばかりに十三杯目の杯を傾ける桔梗。

 

「蜀の皆には今後、迷惑を掛けることになるやも知れんのう……いや、既に影響は出ておるか。……相済まぬ」

 

目を伏せ、謝罪を申し出る祭。ついでに十四杯目。

 

「そう申されるな、祭殿。これは主の業だ。誰が悪いという話ではあるまい。敢えて言うならば、主が悪いのだ」

 

十五杯目を呑み干し、祭の言葉を謝絶する星。

 

「……でもねぇ。わたくしは相手がご主人様なら、とも思うのよ?」

 

ここまで発言のなかった紫苑が皆へ語りかけた。十六杯目の杯を呑み干しながら。

 

「あの方の器なら、きっとこの場に居る全ての女性を愛することだって出来る。わたくしは、そう思っているのよ」

 

頬を赤らめ――酔いのせいなのか判断がつかないが――そう断言する紫苑。

 

「「…………」」

「「はーっはっはっはっは!!」」

 

祭と霞は、ぽかーんと開いた口が塞がらず。

星と桔梗は、大爆笑。

紫苑は、いつものように上品に微笑む。

 

「い、いやいやいや。いくらなんでもそれはどうなん? ちゅーか、雪蓮みたいな美人さんならともかく。ウチみたいな無骨モンまで一緒にされても……」

 

唇を尖らせてそんな風に零す霞に、蜀の三人はニヤニヤ笑い。そして苦笑いの祭。

 

「くくっ。そもそも、そんなことを言うならば、我が軍の魏延――焔耶とて相当の無骨者よ」

「はっはっは、全くだ! あれには主も中々梃子摺らされたようだが、今ではすっかり骨抜きだからな」

「ほら、祭さん。ご主人様をある程度知る身からすると、こんなことを言っている娘がいると――思わず笑みが出てしまうでしょう?」

「……ええい、言うでない紫苑。もう分かっとるわ!」

 

蜀の三人はニヤニヤ笑いが止まらない。祭は誤魔化すようにぷいっと横を向いてしまった。

そして。

霞は反論も出来ず、居心地悪そうに杯を傾けていた。……これで十七杯目。

 

「ふぅむ……」

「どうした、星?」

 

十八杯目を呑みつつ、何事か考え耽っていた星に、桔梗が声を掛けた。

 

「いや、確かに主の器ならば、先ほどの紫苑の言も尤も。しかし……」

「そうだな。蜀ですら納得せぬ者も居るし、そもそも『天下三分の計』の理念から言えば、この場に居る各国の重鎮が全てお館様の側女では、力の天秤が崩れてしまうな」

 

揃って十九杯目。

 

「そこよねぇ、問題って。『天下三分の計』の発案者である朱里ちゃんなら、何か妙案を考えてくれないかしら……」

「……朱里を初め蜀の軍師は、どちらかと言えば独占派であるしの。難しいのではないか?」

 

紫苑の呟きにも、桔梗の判断にも悩む心中が滲み出る。二十杯目。

 

「ふむ。魏はどうなのだ、霞?」

「うーん、華琳は素直やないからなぁ。でも、魏の殆どの武将は一刀のこと気に入ってんで。例外は……桂花くらい?」

「はははは。確かに桂花には随分と嫌われておったな。まぁ華琳殿が主を気に入る程に桂花に嫌われるのは仕方あるまいよ。しかし……」

「ん?」

「お主はどうなのだ、霞よ? 先ほどの態度から察するに、相当入れ込んでおると見たが」

「んぐっ!? げほっげほっ……いきなり何言い出すん!?」

 

二十一杯目の途中で咽る霞。ニヤリと笑う星の笑顔の重圧に、ぽつぽつと零し始めた。

 

「そんなん言うたかて……天界衣装お披露目会でも、ウチだけ何だか男物っぽかったし。一刀は『かっこいい』とは言うてくれたけど……」

「ふむ。つまり、主に『可愛い』と言われたかったと」

「ぐぅ……そうなんかなぁ……。一刀に褒められた時も、恥ずかしゅうて途中で逃げ出してもうて、何を言われたか覚えてへんし……」

 

二十一杯目に続いて二十二杯目を呑みつつ、霞はそう白状した。

 

「私が見るに……明らかに主に惚れておるな。自分ではどう感じておるのだ」

「そら確かに、ウチみたいなんにも優しくしてくれるし、我儘言うてもなんだかんだで付きおうてくれるし……そういう時ってめっちゃ嬉しい。……やっぱそうなんかな~?」

「うむ。ほぼ確定と言ってよいな」

 

ぼりぼりと頭を掻く霞に、星が断言した。

 

「あ、そ……。はぁ~、どんだけ敵がおんねんっちゅー話やなぁ……」

 

霞は溜息を吐いて二十三杯目。

 

「?? どないしたん、星?」

「…………敵、か」

 

星は、目線を霞に向けたまま。杯を傾けるのを止め、意識を集中しているようだった。それはまるで……何者かの気配を察知しようとしているかのように霞には見えた。

しかし、霞には怪しげな気配など感じない。となると、何か違うことを考えているのだろうか?

 

「星ちゃん?どうしたの?」

 

星の様子に気付いた紫苑も話しかけてきた。桔梗や祭も星を見ている。

 

しかし、星はそちらへは一瞥のみ。霞へと改めて向き直る。

 

そして、先ほどより大き目の声で語り始めた。

 

「……霞よ。もしお主が我等の主、北郷一刀に侍る事を望むのならば。――覚悟を決めよ」

 

その声に酔いなど全く含まれず。確と大地に根を張る巨木のように。芯の通った迫力と声だった。

 

「……覚悟、やと?」

 

「そうだ。確かに主を愛するものは多い。それは恋敵という名の“敵”と言えるかも知れん。だが、その“敵”はお主にとって“友”でもある筈だ」

 

「「「「…………」」」」

 

霞も。横で聞く紫苑、桔梗、祭も。沈黙を以って理解を示した。

 

「故に。主に侍る為、我等に必要なのは。確固たる覚悟……」

 

星は、そこで一拍の間を置き。堂々と宣言した。

 

 

「――自らが、主にとって『一番で在り続けんとする覚悟』だ」

 

 

「!! それが……覚悟、か。……ははっ。百戦錬磨を自称するだけはあるやん?」

 

霞は最早何杯目か忘れてしまった杯を呑み干した。

 

「……全く見事な生き様よ。愛と、友と、女の性の全て取ろうとはな。くっくっくっ……」

 

祭は星を賞賛し、杯を傾けた。

 

「ふふっ。さすがは星ちゃんね。これは負けられないわ♪」

 

桔梗へちらと目配せしつつ、紫苑も酒を呷る。

 

「ふむ、星め。うまくやったものだ。これが我が軍――いや、三国の安泰への切っ掛けとなるとよいのだがな……」

 

紫苑の目配せを意味を悟り。桔梗は残った酒を呑み干した。

 

愛紗は、酒豪達のすぐ後ろのその壁の裏。外に面した廊下で、誰と話すこともなく佇んでいた。

そこへ聞こえてきた、酒豪どもの呑み比べでの会話。

そして星の宣言。

 

(……覚悟。覚悟か。――そうか、あのとき星が言った覚悟とは、そういうことだったのか……)

 

愛紗は、いつだったかの執務室でのやり取りを思い出す。

 

 

『……あの方の傍に侍る限り。どこまで往ってもあの時と同じことなのだ。愛紗よ』

『なんだと?』

『――覚悟を決めろ。私が言いたいのはそれだけだ。……ではな』

 

 

最後、星が言い放った――宣言してみせた言葉は。

 

(星め、口惜しい事だ。……貴様はいつも、私の何歩も先にいる……)

 

ようやく靄に包まれていた愛紗の心の奥に届いたのかも知れなかった。

 

 

……

 

…………

 

 

星の忠言を心に、愛紗は再び会場へと戻った。

 

(そうだ。私こそがご主人様にとって『一番であろうとする覚悟』。そしてその為の努力。何を迷うことがある。常から我等はそうやって来たではないか)

 

彼女の内心に立ち込めていた迷いの霧は晴れ始めていた。

 

(桃香様とぎこちなくなった時も、あの方はおっしゃっていたではないか)

 

『――ご主人様の魅力をみんなに解って欲しいし、ご主人様にもみんなの魅力を理解して貰いたい。

 ご主人様には、みんなに優しくして欲しいし、みんなのご主人様であって欲しいけれど。

 それでもやっぱり、自分がご主人様の“一番”でいたい――』

 

(ご主人様は、どこまでいってもご主人様なのだ。結局、私の一人相撲だったというだけの話……)

 

ようやく自らの心に決着をつけんとしていた愛紗へ、義妹の声を含む、真剣な声が聞こえてきた。

 

「そもさん!」

「「せっぱ!」」

「汝等に問う!『兵とは国の大事なり』とは如何なる意味か?」

 

朱里の設問に答えようとしているのは、鈴々と季衣の二人。

 

「えーっと……確か風から聞いたのだ……んっと、『戦は国にとって大事なこと』だ?」

「……鈴々ちゃん、全然違うよ……(がっくり)」

「『戦争は国にとって大仕事である』だ!」

「はわ!季衣ちゃん、正解です!」

 

 

(『孫子』の兵法?……いつもの“勝負”か? 今回は問答なのか。知識で勝負とは意外な……)

 

 

「そもさん!」

「「せっぱ!」」

「汝等に問う!では『死生の地、存亡の道。其を察するに、これを計る五事』とは何ぞや? より多く答えた方を勝ちとする!」

 

「あ、あうぅ……?」

「『道、天、地、将、法』の五つだ!」

「すごーい!季衣ちゃん、完全正解!」

「へっへーん!伊達に桂花に苛められてないぞー!」

「くっそー……」

「は、はわわ……そ、そんなこと聞かれたら桂花さんに怒られちゃいますよぅ……」

 

 

「ははっ。これは勝負にならないな」

「あ、愛紗さん。あ、あはは……鈴々ちゃんは、ちょっと勉強不足かな~?」

「あう~……」

「季衣も、大したものだ。もしかしたら私よりも博識かも知れんぞ? はははっ」

 

(あ……)

 

朱里は、愛紗の表情にここ最近の影がないことに気付いた。

 

「勝率はどうなのだ?」

「(ぷいっ)」

「ご、ご覧の通りです(汗」

「えっへっへ♪」

 

愛紗の質問に、そっぽを向く鈴々に苦笑いの朱里。そして得意げに笑う季衣。

結果は明らかなようだ。

 

「折角だ。私も見学させてもらって良いか?」

「ええーー!? 愛紗に見られてるとやり辛いのだ~……」

「ど、どうぞ。でもあと一問で終わりですよ?」

「そうなのか? それは残念。惨敗するようなら、今後の勉強方法を考えねばと思っていたのだが」

「そ、それは勘弁なのだ、愛紗~~(泣」

 

愛紗の一言に泣きが入った鈴々であったが。

 

「……にゃはは♪ いつもの愛紗なのだ!」

 

そう、嬉しげに言った。愛紗も微笑んで返す。

 

「ん、そうか?……そうだな。ふふ……さあ、頑張れ。二人とも」

「応!なのだ!」

「うっし、こぉーい!」

 

「では最終問題です。そもさん!」

「「せっぱ!」」

「汝等に問う!『百掛けることの零』は幾つか?」

「ええ?えっと、えっと……」

「『零』!」

「季衣ちゃん、正解!」

「やったー!完全勝利!!」

「あうぅぅ……完璧に負けた、のだ……」

 

実際は十問勝負だったのだが、結局鈴々は一問も正解出来なかったのだった。

所詮、たかだか四日間合計十数時間の勉強では無理があったようだ。

実は十問中六問で風と雛里の“山”が当たっていたのだが、鈴々が記憶出来ていないのでは意味がない。

 

暫くは悔しそうに俯いていた鈴々だが、確と季衣を見据えて。

 

「……鈴々に二言はないのだ! これからは、季衣がお兄ちゃんをお兄ちゃんと呼ぶことを認めるのだ!」

 

と宣言した。

 

(……! そうか、鈴々は『国』が違う者を認めるのにも迷わないのだな……いや、そもそも『国』の違いなどに囚われていなかったのか……)

 

悔しさは勝負の上のこと。鈴々は純粋であるが故に、他者を認めるに『国』などという枠に囚われない。

自らがその者を尊敬出来るかどうか。唯(ただ)それだけだ。

 

「なーんか上から目線なのが気になるけど……まあいいや。でも覚えておけよ、鈴々!」

「なんなのだ?」

「いつか、一騎討ちでも勝ってやるからな!」

「なにおー! 武の勝負なら鈴々は負けないのだ!」

「ふん、言ってろ!……よーし、とりあえず腹ごしらえに行こう!」

「うん!そうするのだ! はぁー、なんだか頭使ったらお腹空いたのだ~~」

「だよな~!(なーんか忘れてる気もするんだけど……ま、いいか!)」

 

二人は連れだって会場の一角、料理の山へと去っていった。

因みに、季衣は勝ったら一刀に頭を撫でてくれと約束していたのだが……すっかり忘れてしまっていたようだ。

 

 

残ったのは、愛紗と朱里。

 

「……愛紗さん、何か……吹っ切れたんですね?」

「ああ、皆のお陰だ。特に……星には、また世話になってしまったな……」

「星さんは“自称”恋愛の達人ですからね。ふふっ」

 

独白のような愛紗の言葉に、朱里が微笑む。

 

「それに、今の鈴々の振る舞いを見て、ようやく私の心の靄も晴れたようだ。……とは言っても、ご主人様の浮気性を諌めるのを止めた訳ではないぞ?」

「あはっ♪ それは私だってそうですよ? 何せご主人様は際限がないですから。うふふ♪」

「ふふっ。そうだな。“手綱”は握っておかなくてはな?」

「あはははっ!それはひどいですよぉ、愛紗さん♪」

 

そうして二人は、一刀を肴に暫く笑い合っていた。

 

「ね~え、ご主人様? たんぽぽ、お願いがあるんだけどな~♪」

 

宴も酣(たけなわ)を過ぎ、少々落ち着き始めた頃。

蒲公英が一刀のところへやって来た。

酒に赤らんだ顔は、悪戯者っぽい笑顔だ。

天界衣装お披露目会の際の貸しを“取立て”に来たのは明白だった。

 

しかし一刀は苦笑いしつつも、

 

「翠と同じ衣装は、ちょっと我慢してくれよ?」

 

そう答えた。

 

「ええ~~!?なんでぇ!!」

 

大げさに反応する蒲公英であったが、一刀は蒲公英の望みや反応も予測済みであったらしく、軽く笑った。

 

「ははは、やっぱそうか。でも、貸しは別にしてさ……たんぽぽの分は“本番”まで取っておこうよ。ね?」

「――!////」

 

一刀の切り返しに、珍しく真っ赤に赤面する蒲公英。

 

「やぁ~んもう♪ご主人様ったら~~~////」

 

胸に抱きつき頬をすりつける蒲公英を、一刀は片手で抱きつつ頭を撫でてやる。

 

(そう。俺はもう、今だけを見ている訳にはいかないんだ。もっともっと未来を見据えなきゃならない)

 

脳裏に去来するのは、蜀の皆と。魏・呉の女性達。そして、生まれてくるだろう子供達と、愛すべき民。

 

(本心を言えば、『国』なんかに囚われたくないけど……愛紗を筆頭に、何人かは“そういうこと”に抵抗があるみたいだし……きっと桃香も迷ってる。一度、全員と話し合わなきゃ。それによっては三国同盟を維持する為の仕組みを考え直さないと……)

 

これが原因で三国同盟に亀裂が入るような事態だけは避けなくてはならない。

 

 

そう。

 

 

全てはこの三国、この大陸に住む民の為。

 

 

北郷一刀が見据えんとするのは、三国を初めとして、この大陸に遍く平和を広め維持する為の道筋――

 

/???

 

その世界はひたすらに昏かった。まるで光のない世界のようだ。

そして何もない。空も、地面も、自然も、建物も、動物も、人も。

 

しかし、そんな世界に一人の男――少年が浮かんでいた。

 

「…………」

 

闇に浮かぶその少年は、中空にあって胡坐をかき瞑想に耽っていた。

 

いつしか、その正面にもう一人、青年が姿を現した。

 

「……首尾は?」

 

微動だにせず、少年が青年に問う。

 

「傀儡兵を与えてやったら、途端にやる気になったようです。ま、所詮は英傑ですらない雑魚ですから」

「ふん! そもそも人形だろうが!」

 

そう言い捨てる少年。青年は顎に手を当て、言葉を続ける。

 

「しかし、管輅が北郷一刀と接触したことが、我等にとっては裏目となりましたね……」

「くっ……奴は本来“中立”だった筈だろう!?」

「行動自体は“中立”の範疇でしたからね。あの時、北郷一刀が“帰還”を望めば、それだけであの外史は消えて行ったのですから。しかし、管輅による決断の催促は、結果的に北郷一刀の決意を強めることとなってしまいました」

「……本当に忌々しい男だ……!」

「しかも、どうやら管輅を囮に使われたようです」

「どういうことだ?」

「我々の眼が管輅に向いている間に、“奴”は外史へと降り立ち、結界を敷いていたようです。今回はその結界を超えて介入したので、大幅に力を削がれてしまいました。今回の策動が“奴”に気付かれなくとも、暫くは――そうですね、あの外史の時間で数年は介入出来なくなりますよ」

「くそっ……出来るなら、この俺の手で殺したかったが……」

 

固く握った自身の拳を睨み、無念げに零す少年。

 

「“奴”の妨害によってあの外史に介入出来なかったのですから、仕方ありません。しかもあれだけ強く『絆』を結ばれると、外史の中では術の類の効果は見込めないでしょうし」

「忌々しい人形どもめ……」

「『基点』との強い絆によって、最早かの英傑達は徒(ただ)の人形ではなくなっています。こうなってしまっては“外史の中の存在”で『基点』を排除するしかありません。我慢の為所ですよ、左慈」

「分かっていると言っている! しつこいぞ、于吉!」

 

激昂する少年――左慈。

冷徹な眼差しの青年――于吉。

 

「では、暫し静観と参りましょう」

「…………」

 

『剪定者』と呼ばれる、神仙たる二人。

 

 

外史の消滅を目論む神仙らの策謀は、三国を囲む諸外国を巻き込み、既に動き出していたのだった――

 

 

 

続。

 

諸葛瞻「しょかっちょ!」

曹丕「そうっぺ!」

周循「しゅうっちの!」

 

三人「「「真・恋姫†無双『乙女繚乱☆あとがき演義』~~~☆彡」」」

 

諸葛瞻「お読み戴き多謝でしゅ。諸葛亮こと朱里の娘にして北郷一刀の第23子、しょかっちょでしゅ!」

曹丕「乱文乱筆なれど楽しんで戴けたかしら。曹操こと華琳の娘にして北郷一刀の第9子、そうっぺよ♪」

周循「少しでも面白いと思って下されば重畳。周瑜こと冥琳の娘にして北郷一刀の第25子、しゅうっちで~す☆」

 

 

諸葛瞻「え~……まず最初に、またもや筆者より謝罪があるそうでしゅ」

 

周循「以前、璃々お義姉様が公式で『黄敍』となっていた為、その妹君の名を、黄忠と史実で因縁のある夏侯淵の第3子から拝借して『黄称』と変更したのですが。ネットで資料を漁っていたら、もっと良い名前を見つけてしまったそうで。『黄称』より『黄越(えつ)』に変更したとのことです」

 

曹丕「その為、第05話のあとがきが修正されているわ。読者様には度々の変更でご迷惑をお掛けし、大変申し訳ございませんでした。これに懲りず、ご愛顧を賜れますよう、宜しくお願い申し上げます」

 

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○議題:『零』の概念について

 

諸葛瞻「鈴々様と季衣様の問答勝負の最終問題で使用されてましゅね」

 

周循「うむ。しかし、実際に『数としての0の概念』というものが確立されたのは7世紀初頭のインドなのだそうだ」

 

曹丕「諸説あるようだけれど……中国において後漢時代では0を『無入』として扱い、0と正負の理解はあったようだけれど、果たして本文のように乗算出来たかは不明よ」

 

諸葛瞻「もう面倒なのでぶっちゃけましゅ。……筆者が問題を作るのに、いい例題が思いつかず、取り敢えず使ったというのが真実でしゅ。後々で調べてみたら、上記のように、歴史的には早かったと」

 

周循「ということで、この外史では“0の概念”が既に名士などの知識人層には広まっている、とするそうです。……なお、“そもさん”や“せっぱ”について知りたい方は、ウィキ先生に『一休さん』と尋ねて下さいw」

 

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曹丕「では、ゲストコーナーへ行きましょう。さあ、自己紹介なさい」

 

 

孟祝融「う、うん。あぃは孟獲、美以の娘。北郷一刀の第45子。孟祝融(しゅくゆう)。諱は、孟獲の妻の名から、 『三国志演義』での」

 

周邵「(ぼーーーっ……)」

 

諸葛瞻「周邵ちゃん、戻って来て~!」

 

周邵「はにゃ! あ、はいです。周泰こと明命の娘で、北郷一刀の第37子の周邵(しょう)です!」

 

 

曹丕「今回は二人とも年少下級(小3クラス)ね。……ちょっと不安な二人組みになっちゃったわね……」

 

 

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○質問:特技・特徴は何ですか?

 

孟祝融「えっと……。あぃは好き。歌を歌うこと。あと、音楽を聴くこと」

 

諸葛瞻「そうでしゅね。孟祝融ちゃんは種別を問わず歌曲はとても上手でしゅね。あと、やっぱりその独特の喋り方が大きな特徴でしゅね」

 

孟祝融「うん。あぃ、喋りゅ、出来にゃい。みんなみたいに。でも普通に出来りゅ、読んだり、歌ったり。これ、天界の言葉の文法、だでぃが言うには」

 

曹丕「要は片言でしか喋ることが出来ないけれど、読み上げたり、歌詞を歌う分には問題ないのよね。加えて「る」の発音も苦手で、南蛮の人間のクセなのか、語尾などに「にゃ」が付くこともある、と……ここまで来ると、ぱっと聞き(読み)、分かり難いのも確か。こんな設定で大丈夫なのかしら?」

 

周循「キャラがこれだけいると特徴付けるのも大変なようですので、その辺はお目こぼしをば。さて、孟祝融と言えば、もう一つ大きな特徴がありますね」

 

諸葛瞻「先天性色素欠乏症……所謂『アルビノ』でしゅね」

 

孟祝融「そう。嫌いにゃ、陽の光。眩しいし、痛い」

 

曹丕「猫耳・尻尾も含めた銀髪、赤い瞳に白い肌。見た目は美しいけれど……実際、問題は色々あるわ」

 

周循「そうですね。孟祝融は日光(紫外線)に弱い為、日中はチャドルとヴェール(のような白黒虎模様の布)ですっぽりと全身を隠しています。……白黒虎模様の布をチャドルと言っていいかは分かりませんが」

 

諸葛瞻「加えて視力も弱いとか。代わりに、聴覚と嗅覚は特別敏感……というか、ヒトのレベルを超えているらしいでしゅね」

 

孟祝融「うん。出来りゅ、大概のこと、眼を瞑っても。でもその代わり、苦手にゃ、騒音」

 

曹丕「だから音楽が好きなのかしらね。さて、次は周邵よ」

 

周邵「ぐぅ~~……」

 

周循「ま、まずはこれですかね。周邵はいつでもどこでも寝てしまうのが特技で……」

 

曹丕「……それは特技と言うの?」

 

周循「どうでしょう……? 因みに風様のように、寝たまま話を聞くようなことは出来ません。……とにかく起きなさい、周邵!」

 

周邵「はにゃ!……ぼ~~……」

 

諸葛瞻「それから、気が付くとこうして『ボーっと』してましゅね……逆に集中し出すと、途端に凄まじい集中力を発揮すると聞きましたでしゅが」

 

曹丕「なんにしてもムラがあるのね……。周邵、自分の特技と特徴を述べなさい」

 

周邵「は、はいです。ごめんなさいです。えっと、しょーは身体を動かすのが好きです。ははうえに習った体術で、どんな建物でも木でも登れるです! でも、すっごい『方向音痴』なのです……だから、高い建物や木は、目印としても便利なのです」

 

周循「お前が妙に高いところが好きなのは、目的地を見失わないからというのもあったのか……成る程」

 

曹丕「方向音痴の原因は、その放心気味の精神のせいもあると思うけれどね……」

 

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○質問:特に仲の良い姉妹は?

 

孟祝融「あぃ、尊敬してりゅ、陳律【音々音】。陳律だけ、音を出せりゅ、あんにゃに正確に。とても落ち着く、聞いていて」

 

周循「そうだな。前回も話に出ましたが、満月の晩の陳律と孟祝融の小演奏会は、後宮の人気イベントのひとつです」

 

孟祝融「(こくり)好き、満月。身体が“うずうず”すりゅにゃ」

 

曹丕「それに夜なら孟祝融もチャドルを脱ぐから、その猫猫しい(?)姿を拝めるのよね~♪」

 

孟祝融「張苞【鈴々】、そうっぺ、夏侯充【春蘭】、荀惲【桂花】、よく撫でてくれりゅ」

 

曹丕「美以様や南蛮兵たちもそうだけれど……神秘の種族よねぇ~……♪(うっとり)」

 

諸葛瞻「その四人は、姉妹でも指折りの『猫好き』でしゅからね……。では周邵ちゃんは如何でしゅか?」

 

周邵「はいです!しょーは馬秋あねうえ【翠】、孫登さま【蓮華】とよく遊びますです!……公孫続あねうえ【白蓮】も、すっごい構ってくれるですけど……ちょっと怖いです(汗」

 

周循「……アレのシスコンぶりにも困ったものだ……(こめかみを押さえる)」

 

周邵「それから、趙統あねうえ【星】と一緒にお昼寝することがよくありますです! あと……迷子になった時、孟祝融や袁譚【麗羽】がよく見つけてくれるです」

 

孟祝融「ん。あぃは追跡出来りゅ、臭いを辿って」

 

曹丕「袁譚【麗羽】は、姉妹でも色んな意味で特別な存在ですからね……あの『強運』と『霊感』で見つけるのかしら?」

 

諸葛瞻「そうみたいでしゅね。いつも『その辺にいるでしょう』で居場所を当てましゅから」

 

周邵「いつもありがとうです!」

 

 

 

曹丕「片言の孟祝融と放心持ちの周邵の組み合わせで、少々読み難いあとがきになってないかしら……?」

 

周循「多分、大丈夫だと思いますが……。さて、本編は次回から新展開。どうぞお楽しみに!」

 

諸葛瞻「それでは今回は此処まででしゅ。皆しゃん、行きましゅよ。しぇーの!」

 

 

五人「「「「「バイバイ真(ま)~~~☆彡」」」」」

 


 
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