No.1030536

真・恋姫無双~魏・南華老仙伝~

お久しぶりの方はお久しぶりです、初めましての方は初めましてです。
アンドレカンドレです。
私はかつてここで真・恋姫無双の二次創作を書いていました。
私が初めて二次創作を投稿してから約11年の時が過ぎてしまいました。最後に作品を投稿したのが約9年前。この間、仕事などの影響で二次創作の意欲がありませんでしたが、今回久しぶりに二次創作を投稿しました。
内容は、私がかつて書いていた二次創作の「魏・外史伝」から派生した短編小説です。この作品を書くにあたり、かつて私が書いたものを読み直しましたが、どれも読んでいて恥ずかしい拙い内容に一人で悶絶していました。しかし、それでも私が初めて書いた二次創作ということもあり、思い入れがあるのも事実です。

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2020-05-23 01:41:08 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1533   閲覧ユーザー数:1487

真・恋姫無双~魏・南華老仙伝~

 

 

「ん・・・・・・、ここ、は?」

眩い光に飲み込まれ、視覚と聴覚、意識を奪われていた。

外史の終端、俺がいた世界の物語は終わりを迎え、そこから新たな想念が生まれ、

新たな外史の始端となる。貂蝉からその話を聞いていたが・・・。

ゆっくりと瞼を開けた俺の目に飛び込んだのは黒。

地面も空も存在しない黒い世界。暗闇とは違い、どこから光が当たっているのか分からないが

目の前に出した自分の手を目視できるし、自分の存在を認識できている。

足が地に着かず、宙に浮いているような不思議な感覚に襲われながらも現状を確認しようとした。

「あらぁ~ここにいたのね、ご主人様ぁ」

背後から聞き覚えのある、このねっとりとした低音の声が俺の現状を打開した。

俺は反射的に後ろを振り返った。

「貂蝉・・・か」

心底、残念な気分になる。最初に出会った人間が愛紗達ではなく、よりにもよってこの変態漢女とは。

精神衛生的にも最悪な絵面に深い溜息を吐いた。

「んもぅ、私に会えたっていうのにぃ、どぉ~してそんな溜息をつくのかしら?」

身体をくねくねと動く様は本当に見るに堪えない。今すぐにでもこの場を去りたい所だが

ここがどこなのかを確認しないといけない。そして、この状況を説明してくれるのは

遺憾ながらもこの目の前の漢女なのだ。

「貂蝉、ここはどこなんだ?・・・愛紗たちはどうなったんだ?」

「あらぁ、ご主人様はここがどこか分かっていなかったのねぇ。やっぱりここに来て大正解!だったわねぇ~」

漢女は気持ち悪いほどのどや顔を俺に見せつけてくる。すごく不愉快で苛立つが何とか堪えて話を聞かないと。

「ここは、そうねぇ。言葉にするならば、さしずめ・・・『宇宙』といったところかしら」

「宇宙・・・、どういう意味だ?」

「ここは『北郷一刀』という想念を発端として生まれた外史が存在するところなの。

もしもぉ、外史を星に例えるなら・・・」

「そうか、だから宇宙って例えたのか」

「んっふふふ~、さすがご主人様。わかっているじゃないのぉ。ほら、あそこを見てちょうだい」

そう言うと貂蝉は右人差し指で、ある方向を指し示す。その方向に目を向けると、

黒一色だと思っていた場所に一点の光を見つけた。

「あれって、もしかしてあれが外史なのか?」

「大正解!さぁご主人様、もう少し近くで見てみましょう」

先程の光を近くで見てみようと貂蝉の後を追うように移動する。足が着かないからどうやって移動するか

最初は困惑したが、貂蝉に言われた通りに行きたい方向に身体を傾ければ勝手に身体がその方向に移動して

くれるようだ。中々慣れない感覚だが、なんとか貂蝉の後を追いかけることが出来ている。

「着いたわよ」

そうしてしばらく移動していると、どうやら目的地に到着したようだ。貂蝉の体がその場で停止する。

それに倣って俺もその場で停止し貂蝉の横に並んだ。

遠くから見えていた光は近くで見てもさして大きなものではなく、手の中に納まる程度のものだった。

「これが外史なのか?何というか、予想していたより小さいんだな」

「そうねぇ。けどぉご主人様、外史は概念的なものよ~。本来であればこんなふうに目に見えるものとして

存在していないの。これはぁ、外史を形として認識できるようにご主人様が勝手に解釈しているだけ」

貂蝉の口から出てくるよく分からない話を軽く流して、俺は光の中を覗き込んでみた。

するとその外史の中身だろうか、そこには俺と愛紗が二人。愛紗が伸ばした手を俺が手に取ろうとする、

そんなシーンが飛び込んできた。どういう状況なのかはここからではよくわからないが、希望に満ちた二人の

表情を見たら切ない気持ちで胸が締め付けられる。一方、俺はどうだ。ここには愛紗たちはいない。

この外史の俺のように希望を共有できる人がいない。そう思うと一層胸が強く締め付けられ、俺は胸元を掴んだ。

「貂蝉」

そして、俺は今一番の疑問を貂蝉にぶつけた。

「俺は・・・、どうしてここにいるんだ?あの時、俺も新しい外史を創造しようとしていたのに・・・、

一体何が起きたんだ!?」

苛立ち、焦り、寂しさ・・・今の状況で俺の中で生まれたいくつもの感情が堰を切って溢れ出そうとしていた。

そんな俺とは対称的に貂蝉はしんと静かに俺を見ていた。いつものふざけた雰囲気は一変もなかった。

「それを知るということはぁ、ご主人様にとってぇとても、とても、とぉ~っても残酷なことかもしれないわよぉ」

ぞくっとした。すごく嫌な予感がする。

それは貂蝉の気持ち悪い言動による生理的な嫌悪感からくるものなのか。

それとも別の何かなのか、よく分からない。

答えを聞くことに一瞬ためらう、だけど•••。

「いいから、教えてくれ!」

貂蝉は目を閉じ、眉間に皺を寄せて何かを考えている。

しばらく考え込んでいたが、閉じていた目をゆっくりと開き俺を見た。

「分かったわ。結論を言ってしまえばぁ、ご主人様は・・・『北郷一刀』ではないのよ」

「・・・?どういう意味だよ、それ」

意味が分からず、貂蝉に聞き返す。貂蝉が何を言っているのか本当に意味が分からなかった。

「あなたは外史の発端となる存在、『北郷一刀』が外史を発生させる際に零れ落ちた存在。

もっとはっきり言えばぁ・・・燃え滓なのよ」

「・・・・・・っ!?」

思わず絶句してしまった。悪い冗談なのか、とも一瞬思ってしまったが、貂蝉の顔も目も一切笑っていなかった。

まるで道端に落ちているゴミを見るかのようなその冷めた表情に俺は後ずさりしてしまった。

「大丈夫よ、あなたの『北郷一刀』は無事に新たな外史を発生させることができたわ。その外史がまさにそれよ。

だから・・・安心して頂戴」

「それで、俺をフォローしているつもり、かよ!

俺が北郷一刀じゃない?ただの燃え滓?ふざけんな、ふざけんなよ!?何だよそれは!」

素直に受け入れるにはあまりにも残酷な事実が頭の中をぐるぐると回って俺の思考を掻き乱す。

分かっている、これは貂蝉のせいじゃない。偶然の確立の中でたまたま俺だったという話なんだ。

だけど、頭で理解できても、心がそれを受け入れることを拒否していた。

貂蝉に怒りをぶつけるのは筋違いだ。だが、感情をコントロールできない俺はひたすらに貂蝉を責めた。

「ごめんなさい、ご主人様。あなたでは外史を発生させるだけの力はないのよ。

だから、わたしにもどうする事も出来ないの」

「・・・・・・っ!」

あの貂蝉がただただ申し訳なさそうな顔で謝る姿に、俺ははっと我に返り喉から出かけていた言葉を飲み込んだ。

頭に上っていただろう血は一気に引いたが、先程まで俺の心を支配していた怒りはどうしようもない絶望に

置き換わっていた。ここに地面があったならば、俺の体は地面に崩れ落ちていただろう。

「俺は・・・、どう、したらいいんだよ」

絶望で心が砕け散りそうな俺は思わずそんなことを呟いてしまった。

俺はこれからどうなるんだ。こんな場所で一人寂しく、まさか永遠にこのままなんて・・・。

「ご主人様・・・、なっ!?」

「・・・?」

貂蝉は何か俺に言いかけていたようだが、何かに気づいたのか両目を見開いて見上げていた。

俺も何だろうと見上げている。するとそこには夜空に輝く星々のように沢山の光が一面に広がっていた。

「これ、は・・・これ全部、外史なのか?」

その光景に圧倒され、俺は思わず見入ってしまう。外史の光は今もなお増え続けていて俺の視界に入りきらなくなった。

「これは・・・、かなりまずいかもしれないわねぇ」

この想像を絶する光景をみて、貂蝉は眉をひそめて懸念を示す。

「なにがまずいんだよ?外史が増えるのは別に悪いことじゃないだろう」

「えぇもちろん。けどぉ、その増える速度が異常なのよ。このままだと溢れてしまうわぁ~」

「どういう意味だ?」

「この空間は無限ではないの。空間の許容量を超えて外史が存在することはできない。

もっとも、外史がいくら増えてもその許容量を超えることは、理論上はないの。

けれど、もし万が一、外史の数が空間の許容量を上回ったらぁ~」

「どう•••、なるんだ?」

「難しい話になるから簡単に言うと、外史の境界が崩壊する。

境界を失えば、外史から想念が失われてしまう。

つまり、外史の『定義』が成り立たなくなっちゃうってわけ」

外史は『正史の中で発生した人の想念によって観念的に作られた世界』だと以前教えられた。なら、外史の根底にある想念が無くなれば外史は生まれない、ということか。

「『定義』から外れた外史は創造されない。創造されなくなった外史は人々から忘れ去られる。

忘れられた外史はその輝きを失い、・・・全ての人達の記憶から忘却さられ、なかったことにされるかもしれない」

「・・・!」

なかったことにされる?

あの世界が、愛紗たちが、俺の全てが・・・なかったことにされるっていうのか?

「そんな・・・、そんな馬鹿な!?」

「でもぉ、それが現実なの。誰からも忘れ去られた物語を一体誰が見るというのかしら?

それともぉー、この万に一つあるかないか微妙な可能性に賭けてみる、ご主人様?」

それは勝てる見込みのない賭けだって、お前は遠回しに言っているのか。

「くそ・・・っ!」

このままだと、全て無くなってしまうかもしれない。それは、ここで孤独に打ちひしがれる以上に辛いことかもしれない。

何か手はないのか、この外史を守る方法は?

「貂蝉、何か方法はないのか?」

「あらぁ、そんなことを聞いてどうするのかしら?」

そう言いながら貂蝉はほくそ笑む。その笑みを見て察しがついた。こいつ、最初からこうなることが分かっていたのか。

「お前の言うように、俺はただの燃え滓かもしれない。

だけど・・・、それでも俺は北郷一刀だ。

愛紗たちと創ってきた世界が無かったことにされるだなんて、俺には耐えられない!

だから頼む、教えてくれ!俺に出来ることなら何でもする!!」

「・・・そう、そこまで言えるってことはぁ、覚悟は出来ているのね?」

それを待っていましたと、言わんばかりの満面の笑み。何だかこいつの思惑通りになっているのが少し癪だが、

もう言葉にした以上、俺も引くことは出来ない。

「何をすればいいんだ?」

「別段、難しいことではないわ。ご主人様にはこれから無秩序に発生する外史を管理して、この空間の許容量を

超えないよう調節したり整理整頓してあげるの。外史を発生させるだけの力は無くても、外史の発生を抑えたり、

終端を迎えた外史を削除して空間の空き容量を確保することは出来るはずよ」

貂蝉はすごく簡単そうに言っているが、内容が内容なだけに果たして俺に出来るのだろうか不安になる。

「だいじょ~ぶ、慣れるまではぁ私も手伝ってあげるから♪」

そんな俺の心情を察したのだろう。そう言って、貂蝉は俺をフォローしてくれる。

俺をサポートをしてくれるのはありがたいが、それがよりにもよって筋肉達磨の漢女というのは

やはり勘弁してほしいというのが本音だ。これからの憂鬱を考えると、たまらず深い溜息をついてしまった。

「それとご主人様、ひとつ忠告するわ。これは本来、管理者と呼ばれるひとがするお仕事なの。

もし、あなたがそれを担うということになれば、あなたは別次元の存在になる。

つまり、あなたは北郷一刀を捨てなくてはいけないの」

「北郷一刀を、捨てる・・・」

「ええ、北郷一刀は管理者になることは出来ない。管理者は外史の発端になり得ない。

管理者になれば、あなたの意志とは無関係に、強制的に北郷一刀を捨てなくてはいけない」

「それ、は•••」

何でも出来る・・・と、さっき言っていたけど。果たして、あなたにその覚悟は~あるのかしら?」

北郷一刀を捨てる、言葉にすれば簡単だけど、きっと貂蝉の言おうとしていることはそんな簡単なことではないだろう。

愛する人達とその世界を守るために、俺は俺を捨てなくてはいけない。

今、俺は重大な選択を迫られているんだ。

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・」

「俺は・・・」

俺は捨てられていた名前を拾い上げる。それは元々、外史の管理者のものであったが今は退去し、ここにはいなかった。

皮肉なことだが、かつての名前を捨てた自分に相応しい名前だと思うのは気のせいではないのだろう。

かつての自分が着けていた学生服を脱ぎ捨て、管理者用として用意された白装束を羽織る。

かつての自分を知るのは貂蝉のみ。左慈や于吉もその事実を知らないだろう。その方が都合が良い。

かつて愛した人達とその世界を守るために、新たな管理者としてその役割を全うする。

「俺は・・・、私は南華老仙。外史を管理する存在」

 

その後、南華老仙は無限に発生する平行外史を管理するためにあるシステムを構築する。

後に『外史喰らい』と通称されるものである。

 


 
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