No.1028542

英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

soranoさん

第79話

2020-05-06 20:37:04 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1816   閲覧ユーザー数:1509

 

 

~ロゼのアトリエ~

 

「ギュランドロス陛下達の事を答える前に、まずはギュランドロス陛下達の故郷である”ユン・ガソル連合国”の事について説明させて頂きますわ。」

「”ユン・ガソル連合国”………それがギュランドロスさん達の”故郷”の名前か………その”ユン・ガソル連合国”という国は一体どういう国なのだろうか?」

メサイアの話を聞いたガイウスは考え込んだ後話の続きを促した。

「”ユン・ガソル連合国”は元々由緒ある国家ではありましたがメルキア程の大国ではありませんでした。ですがメルキアの帝国化に反発したメルキア貴族達による亡命受け入れを切っ掛けに大きな変貌を遂げて”アヴァタール五大国”の一国であるメルキアを脅かす程の強国となった国ですわ。」

「ヴァイスハイト皇帝達の故郷であるメルキアという国の帝国化に反発した貴族達の亡命を受け入れた事によって発展した国か………”発展”という程ではないが、エレボニアにとっても他人事ではない話だな。」

「そうだね……様々な事情でエレボニアからメンフィルへと亡命した元エレボニア貴族であるステラ中佐やエーデルガルト中佐達――――――”フレスベルグ伯爵家”を始めとしたいくつかの帝国貴族もメンフィルに亡命した事でお互いにウィンウィンの関係になっているそうだからね。」

”ユン・ガソル連合国”の事を知ったユーシスとアンゼリカは重々しい様子を纏って呟いた。

 

「ちなみにその”アヴァタール五大国”というのは何なんだ?」

「”アヴァタール五大国”とはラウルバーシュ大陸中原の”アヴァタール地方”に存在する五つの大国の事ですわ。なおメンフィル帝国がある”レスペレント地方” は大陸中原の北部、”オウスト内海”の北側にあたる地域で、メンフィル帝国はその”オウスト内海”全ての領海権を保有しているとの事ですわ。」

「メ、メンフィルが内海全ての領海権を保有しているって……とんでもない事なんじゃあ……」

「”とんでもない”ってレベルも超えているわよ。”オウスト内海”とやらがどれ程の規模なのかは知らないけど、メンフィルはその内海に関わる産業全ての利益を独占できるでしょうからね。」

「はい……それに内海全ての領海権を保有していたら、当然内海に面している国への侵略の際も戦術的に有利に働きますし……」

マキアスの質問に答えたメサイアの説明を聞いたアリサ達がそれぞれ血相を変えている中、表情を引き攣らせて呟いたエリオットの言葉に対してサラは真剣な表情で呟き、トワは不安そうな表情で推測した。

 

「話を続けますわね。”アヴァタール五大国”の五大国の詳細についてですが……まずは私やお父様達の祖国にして魔導技術を誇り、他国にはあまり見られない機械化された軍隊を有してアヴァタール地方東域の大部分を支配下に置いている”メルキア帝国”。次に国土の大部分が山岳地帯である為、鉱物資源に恵まれ、精強な竜騎士団を抱える”リスルナ王国”。その次は”裁きの女神ヴィリナ”を信仰し、長い伝統を誇る騎士の国である”スティンルーラ王国”。更にその次はメンフィル帝国のように”闇夜の眷属”が治める多様な人種が集まる”エディカーヌ帝国”。」

「メンフィル帝国のような国が他にもあるのですか……」

メサイアの説明を聞いてある事が気になったエマは驚きの表情で呟き

「ええ。とはいってもエディカーヌはメンフィルのようにあらゆる種族を受け入れている訳ではありませんが。話を続けますが、最後に”アヴァタール五大国”の中でも最も国力、戦力を保有している国にして”水の巫女”という”女神が統治する神権国家”――――――”レウィニア神権国”の5つの国が”アヴァタール五大国"になりますわ。」

「”女神が統治している神権国家”じゃと!?」

「女神が統治している国とかどんな国だよ……」

「さすがオカルトだらけの異世界だけあって、国までオカルトかよ。」

レウィニアの事を知ったアリサ達がそれぞれ血相を変えている中ローゼリアは信じられない表情で声を上げ、クロウは疲れた表情で呟き、アッシュは呆れた表情で呟いた。

 

「それとレウィニアの王都――――――”プレイア”にはセリカの屋敷があるわよ。」

「私達がクロスベルで出会った”神殺し”の………」

「よくその女神はその”神殺し”とやらが女神である自分が治める国――――――それも王都に屋敷を構える事を許しているな……」

「ああ……何せ”神殺し”なんだから、その女神にとっては”天敵”みたいな存在だと思うんだが……」

アイドスの説明を聞いたアンゼリカは真剣な表情で呟き、困惑した表情で呟いたユーシスの言葉に頷いたマキアスは疲れた表情で呟いた。

「……私は詳しい事情は知らないけど、どうやらセリカと”水の巫女”は遥か昔に”色々”あって、”水の巫女”はセリカ――――――”神殺し”と”盟友”の関係を結んだ事でレウィニアはセリカを最高級の”客将”扱いすると同時に王都にある屋敷を用意したと聞いているわ。」

「事情はよくわからないけど、その”神殺し”とやらはレウィニアという国にとっては最高クラスのVIPのようね……ちなみにそのレウィニアとやらの国力はどのくらいなのかしら?」

アイドスの話を聞いて考え込んだサラは真剣な表情で訊ねた。

 

「そうですわね………私もレウィニアについてはそれ程詳しくありませんが、レウィニアは全ての神々と敵対関係であるかの”神殺し”にとって唯一の平穏の地である事から”神殺しの故郷”としても有名ですが、周辺各国は当然として全ての神々の陣営は”神殺し”関連でレウィニアに手を出すといった事をしたという話は聞いた事がありません。―――以上の話からして、レウィニア自身が持つ”力”についても自ずと察する事ができると思いますわ。」

「異世界(ディル=リフィーナ)はゼムリアと違って、数多の神々が存在していて、当然その神々を”信仰”する宗教があるって話だから、その宗教や神々にとって”天敵”であり、”世界の敵”扱いされている”神殺し”がいるとわかっているそのレウィニアって国に圧力や戦争を仕掛けにくい―――いえ、”仕掛ける事ができない”って事はそのレウィニアって国は間違いなく国力もそうだけど、戦力も相当なものなのでしょうね。」

「ハハ…………まさに言葉通り、”世界は広い”ね。――――――話を戻すが、そのメルキアという国を脅かしていやたユン・ガソルという国でのギュランドロス皇帝達の立場は何だったんだい?」

メサイアの説明と推測を聞いたセリーヌは目を細めて推測し、アンゼリカは疲れた表情で呟いた後メサイアに訊ねた。

 

「まずギュランドロス陛下についてですが…………ギュランドロス陛下はユン・ガソル連合国の”国王”だった方ですわ。」

「こ、国王”って事はギュランドロス皇帝もヴァイスハイト皇帝同様、クロスベルに来る前も”王”だったの!?」

メサイアが口にした驚愕の事実に仲間達が血相を変えている中アリサは信じられない表情で確認し

「はい。」

「今までの話からギュランドロス皇帝も元”王”か王族に連なる人物とは想定していたが……やはり、ヴァイスハイト皇帝同様”王”だったのか……」

「ギュランドロスさんが国王…………という事はギュランドロスさんの奥方のルイーネさんは王妃だったのか?」

アリサの問いかけにメサイアが肯定するとラウラは重々しい様子を纏って呟き、呆けた表情で呟いたガイウスはメサイアに確認した。

 

「ええ。加えてルイーネ様は”三銃士”の一人でもあられます。」

「”三銃士”?”六銃士”に似た呼び方からすると、もしかして”六銃士”の元ネタはその”三銃士”だったの?」

メサイアの説明を聞いてある事が気になったフィーはメサイアに確認した。

「恐らくはそうだと思いますわ。――――――”三銃士”とはユン・ガソル連合国が誇る最も優れた三人の”将”の事で、ルイーネ様は外交と内政を一手に引き受けつつ策略を巡らせて他国に対抗する術を打ち出し、エルミナ様は軍務と国の重工業の発展を担当してその卓越した指揮能力、戦略で敵軍を圧倒しつつユン・ガソルの国力、戦力を発展させ、パティルナ様は戦況を変える切り札として行動することから”戦の申し子”とまで称されている程で、自らの腕で持ってユン・ガソルに勝利をもたらしてきましたわ。」

「なるほどね………それぞれの優れた能力でそのメルキアという大国を脅かしていたのだから、相当な人物なのでしょうね、その”三銃士”とやらは………」

「うむ……ドライケルスが知れば、間違いなく相手の人材の豊富さを羨ましがるじゃろうな。」

メサイアの話を聞いたアリサ達がそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中セリーヌは目を細めて呟き、セリーヌの言葉に頷いたローゼリアはある人物を思い浮かべた。

 

「えっと……ギュランドロス皇帝はどういった人物なの?仮にだけどわたし達が、”第三の道”でこの戦争を終わらせる方法を見つけたら、応じてくれるような人かな?」

「………正直難しいと思いますわ。――――――ギュランドロス陛下はメルキアを含めた他国では”戦好き”の王として有名な方でしたから。」

「ギュランドロス皇帝はよりにもよって”戦好きの王”ですか……」

「俺達にとっては最悪な相手で、ギリアスにとってはある意味最高の組み合わせの相手だろうな、そのギュランドロス皇帝とやらは。」

トワの質問に対して複雑そうな表情で答えたメサイアの説明を聞いたエマは不安そうな表情で呟き、クロウは厳しい表情で呟いた。

 

「それともう一つ。ギュランドロス陛下はある異名で有名な方でして……その異名とは”バカ王”ですわ。」

「バ、”バカ王”って……」

「異名というか、言葉通りその人の事をバカにした呼び名だよね、それ。」

メサイアが口にした答えにその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中アリサとフィーはジト目で呟き

「フフ、その異名の件については私も以前までは皆さんと同じような事を思っていましたが……クロスベルでの祝勝会の時にギュランドロス陛下と直接お話する機会があった時に、その”バカ王”に込められた”真の意味”を教えられた際に、あのお父様が”好敵手”と認める人物だと思いましたわ。」

アリサ達の様子を見たメサイアは苦笑しながら答えた。

 

「へ……”バカ王に込められた真の意味”?」

「一体どういう意味なんだ……?」

メサイアの答えが気になったエリオットは戸惑い、マキアスは不思議そうな表情で訊ねた。

「『王は国の代表――――――楽しい国を作りたいのなら、俺が楽しくあるべきだ。だからこそ、俺は”バカ王”として俺の思うがままに行動する。』とギュランドロス陛下は私に仰ってくれましたわ。」

「それは………」

「……確かにギュランドロスさんらしい考えだな。ノルドの集落に滞在していた時も、あの人がいると毎日みんなあの人のする事や口にする言葉を楽しんでいて、ギュランドロスさん自身も心の底から楽しんでいた様子を見せていたな。l

「国民の……国の為に遭えて自身が”道化を演じる”――――――いや、”国民と国を考えた上で本能のままに生きている”からこその異名――――――”バカ王”か………どうやら単なる戦好きの王と侮らない方がよそうだな、ギュランドロス皇帝は。」

「そうね……”計算されたバカを演じつつ本能のままに生きる”なんて誰にも予測不可能だから、正直ヴァイスハイト皇帝よりも相当なクセ者だと思うわよ、そのギュランドロス皇帝は。」

「ん……話を聞いた感じ、間違いなく団長よりも相当なクセ者だね。」

「ええ……そういう意味ではあんたとも話が合うかもしれないわね。」

「オイ……そんな訳わかんねぇバカと俺を一緒にするとか冗談でもやめろや。」

メサイアの説明を聞いたラウラは真剣な表情を浮かべ、ガイウスは懐かしそうな表情をし、真剣な表情を浮かべて呟いたユーシスの言葉に頷いて目を細めたセリーヌの推測にフィーと共に頷いたサラに視線を向けられたアッシュはサラを睨んだ。

 

「………ねぇ、メサイア。メサイアは並行世界とはいえ、この世界でもヴァイスハイト皇帝の娘として認知されているのでしょう?メサイアがヴァイスハイト皇帝にこの戦争を私達が目指す”第三の道”で解決する為に私達に協力してもらえるように説得する事はできないかしら?」

「それは”絶対に不可能”ですわ。」

「チッ、即答かよ。」

「その…………メサイアさんも”クロスベル帝国皇女”である為、私達に協力して頂けないのでしょうか……?」

アリサの頼みを迷うことなく断ったメサイアの答えにその場にいる多くの者達が驚いている中アッシュは舌打ちをし、エマは複雑そうな表情でメサイアに訊ねた。

「いえ、それ以前にお父様は”娘の嘆願如きで、国の決定を変えるような方ではないのです”から、例え私が皆さんの要望に応えてお父様に嘆願したとしても、その話に”国としての利”がなければお父様は皆さんに協力するような事はないと思いますわ。」

「”国としての利”か………確かにクロウの件にせよ、紅き翼のクロスベルでの活動にせよ、全てクロスベルの”利”に繋がっていたね……」

「フム……話を聞いた感じ、そのヴァイスハイト皇帝とやらは私情と政治を完全に切り分けているタイプの”王”に聞こえるが……」

メサイアの説明を聞いたアンゼリカとローゼリアはそれぞれ考え込んだ。

 

「概ねそんな所ですわ。――――――加えてお父様は”誰よりも皇族としての自覚”を持っていらっしゃる方ですから、皆さんにとってはギュランドロス陛下とは別の意味で説得が非常に厳しい方ですわよ。」

「えっと……ヴァイスハイト皇帝がメサイアがそこまで言う程”皇族としての自覚を持っている事”に何か理由でもあるのか?」

メサイアの話が気になったマキアスは不思議そうな表情で訊ねた。

「ええ。ちなみに皆さんは転生する前のお父様がメルキア皇帝になった経緯はご存じですか?」

「う、うん……確か当時はそのメルキアという国も内戦の真っ最中である事に加えて他国もその隙を狙ったけど、ヴァイスハイト皇帝は国内で起こった内戦を終結させたどころか、その内戦の隙を狙って侵略してきた国家全てを飲み込んでそのメルキアという国を豊かにして皇帝に即位したんだったよね?」

メサイアの確認にエリオットは戸惑いの表情で答え

「……お父様が”庶子”であった事はご存じですか?」

「ええっ!?ヴァイスハイト皇帝って”庶子”だったの!?」

「”庶子”が皇帝になる等普通に考えれば相当な茨の道を歩む事になると思うが……それ程までの功績を残したならば、国民達は当然として貴族達も認めざるを得なかったのだろうな。」

「その”皇族としての自覚”の件でその話を出したって事はヴァイスハイト皇帝が”庶子”である事と”皇族としての自覚”の話に何か関係があるのか?」

メサイアの問いかけに仲間達がそれぞれ血相を変えている中アリサは驚きの声を上げ、ラウラは真剣な表情で呟き、ある事に気づいたクロウは真剣な表情で訊ねた。

 

「はい。お父様は先代メルキア皇帝と使用人の間に生まれた方でして……その出自の故、幼い頃に母君が”謀殺”された後帝宮から追い出され、お父様の後見人を申し出たリセル様の父君であられるオルファン元帥の元で育ったのですが……お父様の母君が亡くなる前にお父様に常に言い聞かされたそうです。『半分であろうと貴方には尊い血が流れており、皇族である事に変わりはないのだと。皇族である自覚と誇りを持ち、誰よりも皇族らしくあれ』と。」

「”半分であろうと尊い血は流れている”、か……」

「というか今さりげなく、ヴァイスハイト皇帝の妃関連でとんでもない事を言ったわよね。」

「え、ええ……私達がクロスベルでヴァイスハイト皇帝と共に出会ったヴァイスハイト皇帝の正妃の一人であるリセル皇妃が”元帥”のご息女だったなんて……」

メサイアの説明を聞いたユーシスは静かな表情で考え込み、ジト目で呟いたセリーヌの言葉に頷いたエマはリセルを思い浮かべた。

 

「そしてお父様は母君の言葉を証明する為に努力を重ねて常に”上”を目指し、最後はメルキア皇帝の玉座につきました。それらの経緯からお父様は『逆境こそが人を強くする』という人生訓を持たれて母君の教えでもあられる『皇族である自覚と誇りを持ち、誰よりも皇族らしくあれ』という教えを私のような妾の子供を含めた全てのご自身の子供達にその人生訓と教えを伝えましたわ。」

「『逆境こそが人を強くする』か………まさに”今のクロスベル”を表しているね。」

「うん…………それも上昇志向がとてつもなく強い上決して”私情”で政治を決めるタイプじゃないから、”王”としてはまさに理想的な人物なんだろうね、ヴァイスハイト皇帝は……」

「ああ、それもあるからユーゲント陛下の事を『エレボニアの王としての資格はない』なんて事を言ってユーゲント陛下の事をよく思っていないんだろうな。」

メサイアが話を終えるとアンゼリカとトワは複雑そうな表情で考え込み、クロウは重々しい様子を纏って呟いた。

 

 

”黒の史書”でエレボニアを巣食う”呪い”を知っても、それを鉄血宰相に限らず他人に委ねず、自分自身が諦めず例え自身や身内を犠牲になろうとも”呪い”に抗う事や滅する事がユーゲント三世に課せられた”エレボニアの王としての義務”だ。その”義務”を放棄した時点でユーゲント三世にはもはや、”エレボニアの王としての資格はない。”

 

 

「あ………」

「ヴァイスハイト皇帝は”誰よりも皇族としての自覚”を持っているからこそ、オズボーン宰相に”全て”を委ねたユーゲント陛下の事を”王”として許せなかったのか……」

ウルスラ病院でのヴァイスの言葉を思い出したアリサは呆けた声を出し、ガイウスは辛そうな表情で呟いた。

「こちらの世界でお父様がどのような経緯があってギュランドロス陛下と友情を結んだかは知りませんが…………あのお二人が組んだ事に加えてユン・ガソルの”三銃士”に”メルキア四元帥”、そしてリセル様を始めとしたお父様が心から信頼するかつての”戦友”達が揃った今、”オズボーン宰相達如きでは絶対に勝てないと思いますわよ?”」

「オ、”オズボーン宰相達”を”如き”って言い切る程メサイアが確信しているって事は、それだけヴァイスハイト皇帝達とオズボーン宰相達の”力の差”が圧倒的に離れているって事だよね……!?というか今、”メルキア四元帥”って言っていたけど、メルキアという国には”元帥”が4人もいたの!?」

メサイアの推測を聞いたエリオットは表情を青褪めさせた後ある事をメサイアに訊ねた。

「ええ。”メルキア四元帥”とはその名の通り、メルキア帝国が誇る四人の”元帥”の事で、それぞれ大きく4つに分けたメルキア帝国領の統治も任されていますわ。」

「という事はエレボニアで例えるのならば、その”メルキア四元帥”とやらはそれぞれの州の統括領主でもある”四大名門”のような役割も兼ねているのか……」

”メルキア四元帥”の事を知ったラウラは真剣な表情を浮かべて推測した。

 

「はい。ちなみにお父様以外の”メルキア四元帥”の三人の内、先程名前を挙げたリセル様の父君――――――オルファン・ザイルード元帥は当時メルキア帝国の”宰相”も兼ねていましたわ。」

「なっ!?さ、”宰相”だって!?」

「………残り二人はどんな”元帥”なのかしら?」

メサイアの話を聞いていたマキアスは驚きの声を上げ、サラは真剣な表情で続きを促した。

「”メルキア四元帥”の中で紅一点であられるエイフェリア・プラダ元帥は”魔導技術”によってメルキアを発展させた事で名高い『ヴェロルカ・プラダ』の孫で、自身も魔導技術者としてとても優れた方でして。魔導技術による兵器の開発を推進しながら、外交を用いてレウィニアを含めた諸外国と友好な関係を築いていた事から、エイフェリア元帥の存在は”メルキアの要(かなめ)”とも称されていた程ですわ。」

「げ、”元帥”で技術者としても優れていて、おまけに外交まで優れているとか、とてつもない女性のようね……」

「フッ、機会があれば是非ともお目にかかりたいものだね。」

エイフェリアの事を知ったその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中アリサは表情を引き攣らせて呟き、アンゼリカは興味ありげな表情を浮かべた。

 

「フフッ、ちなみにエイフェリア様はドワーフの血を引いている事から見た目は少女のような外見ですが、恐らく年齢は”見た目通りの年齢ではない”と思いますわよ?」

「”ドワーフ”の血まで引いているとはね……恐らく技術者として優れているのはその血筋も関係しているのでしょうね。」

「ええ……伝承等ではドワーフは”技術”に優れた種族との事だし……」

「ぐぬぬ……っ!そのエイフェリアとやらは妾と”キャラかぶり”する者ではないか!」

苦笑しながら答えたメサイアの補足説明を聞いたセリーヌとエマは真剣な表情で考え込み、ローゼリアは唸り声を上げた後悔しそうな表情で声を上げ、ローゼリアの発言にその場にいる多くの者達は脱力した。

「いや、被っているのは”少女のような外見で見た目通りの年齢ではない事”くらいで、他は全然被っていないでしょうが。」

「アハハ……えっと、最後の一人はどんな人なのかな?」

ジト目でローゼリアに指摘するセリーヌの言葉に苦笑したトワは表情を引き締めて続きを促した。

 

「最後の一人――――――ガルムス・グリズラー元帥は”武”の高みを目指し続ける歴戦の老将として、敬意と畏怖を込めて”戦鬼”と呼ばれている武人ですわ。」

「”戦鬼”……まさか”星座”の赤の戦鬼(オーガロッソ)の異名と被る人物までいるとはね。ひょっとしたら、赤の戦鬼(オーガロッソ)と互角かもしれないね。」

「下手したら”それ以上”かもしれないわよ……話を聞いた感じ、”槍の聖女”に近い部分もあるようだし。」

「ええ……歴戦の勇将で”武”の高みを目指し続けている武人との事ですから、間違いなく相当な使い手なのでしょうね。」

ガルムスの事を知ったフィーとサラ、ラウラはそれぞれ真剣な表情で呟いた。

「あ”……え、えっと……祝勝会で、そのガルムス様とも話をする機会があったのですが……ガルムス様は例の資産凍結宣言が行われる前に起こった赤い星座を含めた多くの猟兵団によるクロスベル襲撃の際に、その赤の戦鬼(オーガロッソ)という人物を一対一で戦い、圧勝した武勇伝を聞かせて頂きましたわ。」

「何ですって!?」

「あの赤の戦鬼(オーガロッソ)を一対一で圧勝したって事は団長もそうだけど”闘神”すらも圧勝できる可能性が高い凄まじい使い手なんだろうね。」

フィーたちの推測を聞いてある事を思い出したメサイアは苦笑しながら答え、驚愕の事実を知ったサラは血相を変えて声を上げ、フィーは真剣な表情で推測した。

 

「えっと……ちなみにメサイアさんのお母さん――――――マルギレッタさんはどういう立場の人だったの?多分だけど、メサイアさんのお母さんも今の話にあったヴァイスハイト皇帝の”戦友”の中に含まれているんだよね?」

「ええ。私のお母様はメルキアとの戦争に敗戦し、メルキアに吸収された”旧アンナローツェ王国”の女王だった方で、国民達からは”アンナローツェの聖女”と称えられていた方ですわ。」

「何だと!?」

「お、お父さんが皇帝で、お母さんまで王族――――――それも、女王だったって事はメサイアって、アルフィン皇女殿下達よりも”尊き血”を引いている人なんじゃあ……」

「うむ……間違いなく血筋で言えば、メサイアの方がアルフィン皇女殿下達――――――いや、皇帝陛下を含めたアルノール皇家の方々の誰よりも上だな……」

トワの質問に答えたメサイアの答えを知ったその場にいる多くの者達が驚いている中ユーシスは驚きの声を上げ、表情を引き攣らせて呟いたエリオットの推測にラウラは頷いて真剣な表情でメサイアを見つめた。

「なるほどね……という事はアンタの”光”を扱った魔法剣もそうだけど強力な光の魔術や治癒魔術は”聖女”とまで称えられた母親の血を引いているからなのかしら?」

「恐らくはそうだと思いますわ。お母様は神聖魔術や治癒魔術を得意としている方ですし。」

目を細めたセリーヌの推測にメサイアは静かな表情で同意した。

 

「あら?ですがメサイアさんは確か”光”とは正反対の属性―――”闇”の魔術や魔法剣も得意としていますが……」

「何じゃと?ただでさえ相反する属性の霊力(マナ)を扱う事は難しいにも関わらず、上位属性でもある事から、より高度な知識や技術が求められる”空”と”時”にあたる”光”と”闇”の霊力(マナ)を扱える事を考えると、まさか父親の血筋も関係しているのか?」

「え、えっと……多分そうだと思いますわよ。」

エマの疑問を聞いて眉を顰めたローゼリアの推測に対してメサイアは冷や汗をかいて苦笑しながら答えを誤魔化し

「ヴァイスハイト皇帝が”闇”………そんな印象には見えなかったのだがな。」

「ハッ、カルバートどころかエレボニアも滅ぼそうとしているんだから、カルバートの連中もそうだがエレボニアの連中にとってもとんでもない大悪党――――――”闇”とやらに見えてもおかしくないだろ。」

「いや、人の性格と霊力(マナ)の性質は関係ないわよ……例えばヴィータなんて”深淵”なんて異名がついているけど、最も適している属性は闇―――性格で言うと陰険や根暗みたいな暗い性格を連想させる”時属性”じゃなくて”慈悲”や”愛”と言った性格を思い浮かばせるような”水属性”だし、エマだって最も適している属性は”熱血”や”勇敢”といった暑苦しい性格を連想させる”火属性”だけど、エマはそんな性格とは全然違うでしょうが。」

「アハハ……」

困惑しているガイウスの言葉に指摘したアッシュの言葉を聞いたセリーヌはジト目で指摘し、クロチルダだけでなく自分自身も例に挙げたセリーヌの指摘を聞いたエマは苦笑していた。

 

 

「しかしこうして改めてクロスベルの上層部達の事を知ると、クロスベルにはとんでもない人材ばかりが集まっている事を思い知らされるな……」

「そこに加えて”特務支援課”もクロスベルを支えている上、メンフィルと貴族連合軍の残党と第三機甲師団の連合軍であるヴァイスラント新生軍との連合だからねぇ。確かにメサイア君の言う通り、”オズボーン宰相達ですらも如き扱いできる程、クロスベルにとっては格下の相手”なんだろうね。」

「まあ、ギリアス達は自分達と相手の戦力差を知ったとしても戦争を止めるつもりはないんだろうぜ。――――――例え多くの”犠牲”を出す事になってもな。クロイツェン州の”焦土作戦”がその実例だ――――――っと、悪い、エリオット。」

「ううん……例え”上からの命令が絶対”だからといって、同じエレボニアの人達に対してそんな酷い事をした父さん達にも”非”があるのは事実だもの……今回の戦争でエレボニアが敗戦したら、多分父さん達は”軍事裁判”にかけられて、”焦土作戦”の責任を取らされることになる事はもう覚悟しているよ……」

「エリオット……」

マキアスとアンゼリカは疲れた表情で呟き、目を細めて呟いたクロウだったがすぐにエリオットに謝罪し、謝罪されたエリオットは寂しそうな表情を浮かべて答え、その様子をガイウスは心配そうな表情で見守っていた。

 

「ま、そのあたりは出世して敗戦後のエレボニアの政治に口を出せるようになったご主人様が何とかするんじゃない?――――――最も”戦場”で貴方の父親と出会うことなく、その父親が生き残っていればの話だけど。」

「そうですね……国の為とはいえ自国の領土を焼いて民達を苦しめる事を行ったその愚か者は軍の”将”なのですから、”戦場”に出てこない可能性の方が低いでしょうね。」

「…………………………」

「エリオット……ねえ。メサイアもそうだけど、ベルフェゴール達もリィンの今の状況についてはどう思っているのかしら?」

ベルフェゴールとユリーシャの会話を聞いたエリオットは辛そうな表情で顔を俯かせ、その様子を辛そうな表情を浮かべたアリサはメサイア達にそれぞれの”真意”を問いかけた――――――

 

 

これで連日更新は終了です。なお、メサイアの話でアヴァタール5大国の話が出た時のBGMはVERITAの”遥かなる旅路”、ユン・ガソル勢の説明は魔導功殻の”強豪たちの激闘”、メルキア四元帥のBGMは”月女神の詠唱 ~アリア~ Ver inst.”だと思ってください♪

 


 
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