No.102769

新たなる外史の道 9

タナトスさん

恋姫無双の愛紗ルート後の二人が真の世界にやってきたら?
という妄想から生まれた駄文です。
読んでもらえれば幸いです。

2009-10-24 00:28:42 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:10826   閲覧ユーザー数:7868

辺りには派手な金属音が世界を支配していた・・・・・・

過去愛紗が両手持ちで超高速の刃を上段から振り下ろす。

超一流の武将でも喰らいそうな斬撃だが・・・

 

愛紗はソレは何事も無かったかの様に綺麗にいなす。

 

愛紗は返す刃で斬撃を片手で放つ。

 

どうにか過去愛紗がソレを受け止めるが、その余波で衝撃が腕を侵食する。

 

「くっ!!・・・・・・」

 

過去愛紗は苦しげに声を漏らす。

 

「どうしたの、始まってまだ12合しか打ち合ってないわよ。関羽」

 

「はぁはぁはぁ・・・・・」

 

問いかける愛紗は汗一つ、息一つ乱してなかった。服も綺麗なものだ。

 

対照的なのは過去愛紗、汗はダラダラ垂れ流し、服はボロボロ、体も生傷が無数にある。

 

訓練を開始してから10分・・・

 

高が10分そこらで過去愛紗はかなりすり減らされていた。

 

もう、誰の目にも明らかだろう・・・愛紗の勝利が揺るがないことも、過去愛紗が負ける事も、そして、愛紗の力が一流の武将を超える超一流の部類に入る関羽を遥かに超越した実力を持っていることを・・・

俺は曹操の所まで歩み寄る。

 

「曹操」

 

「何かしら・・・」

 

曹操は過去愛紗が追い詰められているのが信じられないのと、愛紗の実力を把握しかねている自分に困惑している様な顔をしながら俺に問いかけてきた。

 

「関羽はもう負ける、誰がどう見ても敗北は決した。賭けの酒の準備をすることをお勧めするが?」

 

「あら、最後まで何が起こるか解らないんじゃなかったの?」

 

曹操はそう言いつくろってはいるが内心過去愛紗の負けは確定だろう事は理解しているだろう。

 

「そうか、そうだったな・・・では、自分の信じる者の勝利を祈るとしよう・・・」

 

俺はそう言い、曹操のもとを離れる。

 

≪曹操サイド≫

圧倒的・・・・・・北郷 愛紗の実力はその一言に尽きる。

関羽の全ての攻撃をいなし、受け止め、かわす・・・

その一つ一つが優雅で洗練された動きだ。

 

「春蘭、率直に聞くわ、北郷 愛紗の実力はどのくらいかしら?」

 

春蘭こと夏侯惇は主の問いかけに少し考え込み呟いた。

 

「まず私では敵いません、討ち合った瞬間、私の敗北は決定付けられます」

 

「そうなの?」

 

「はい、悔しいですが、私と関羽の実力は同じくらい、あの女は今の戦いで本気の100分の1位しか出していません」

 

こと武に関しての春蘭の言葉は当てになる。

その春蘭がこう言うのだ、まず間違いない。

 

それにしても・・・・・・

あれほどの実力で、100分の1程度しか実力を出していないとは・・・

 

関羽は全力で立ち向かっているのに・・・・・・

 

あの男、北郷 一刀の言葉が思い出される。

 

『・・・まあ、見てみろ・・・強さの次元が違い過ぎるから・・・』

 

「不愉快だけど・・・あの男の言葉は本当だったみたいね・・・」

 

「何がですか? 華琳様?」

 

桂花こと、荀彧が問いかけてきた。

 

「北郷 一刀が言ったのよ、『・・・まあ、見てみろ・・・強さの次元が違い過ぎるから・・・』

てね・・・しかも賭けまで申し込んでくる位自信があったのもうなずけるわ・・・」

 

「あんな、天の使いしか名前の無い男の言葉など信じるおつもりですか!?」

 

「事実、そうなっている・・・ところで華琳様、賭けとは?」

 

秋蘭こと、夏侯淵が問いかける。

 

「関羽が勝てば、北郷が持ちうる天の世界の最上級の銘酒を私がもらう。北郷 愛紗が勝てば、私の持ちうる最上級の銘酒をあの男にくれてやる。というものよ」

 

「今の状況を見れば・・・取りやめたでしょうね、私なら・・・」

 

秋蘭がそういい戦いに目をやる。

 

関羽の上段からの斬撃を綺麗にいなしているところだった。

 

≪過去愛紗サイド≫

つ、強い・・・

 

いや・・・強すぎる・・・

勝てる気が全くしない・・・

何処にどう討ち込んでも全て無力化される・・・

 

まるで此方の手の内が解るかのように・・・

 

どうやったら勝てる! この女に・・・

 

どうやったら・・・勝てるんだ・・・

 

 

・・・この女の太刀筋からは何だろう、優しさのような、悲しさのような、怒りのような、慈しみのような、懐かしさを感じた・・・

 

解らない・・・一体何なんだ? この感情は・・・・・・

 

討ち合いで解るかもと思ったが、余計に解らなくなった。

 

ここで負ければ桃香様に申し訳が立たない・・・・・・

 

それに自分の武がここで否定される。

 

それだけは許せない!! 

 

負けるわけには・・・・・・

 

 

≪愛紗サイド≫

軽い・・・

 

過去の私はこんな軽い剣筋だったのか?

 

ソレは全てにおいて軽すぎた。

斬撃も、突きも、払いも・・・

 

この斬撃は、そう、思いが篭っていないのだ・・・

 

だから全て軽い、私や一刀様以外の者達はその斬撃の中に超一流を見ることが出来るだろう。

 

しかし、それじゃ足りない。

 

全然足りない。

 

私や一刀様が見ている次元はそんな低いところにいるのではない。

 

もっと、もっと高いところにいる。

 

ソレは想い、その刃に、その弾丸に篭める魂の質量、そんな世界だ。

 

技術など私達はとっくの昔に極めてしまっている。

 

いわばカンスト状態だ。

 

その中で自分より強い者が現れるなどザラだ。

 

そんな時我等マスタークラスは自分の思考や精神、肉体の進化をさせる。

 

要素は色々だが精神の進化は氣にも影響することから私達はその訓練を積んできた。

 

 

何合か打ち合ってみて気付いた。

 

ああ、そうか・・・

 

彼女の心の中には、ここで負けたら劉備に申し訳ないとか・・・

それに自分の武がここで否定されるとか・・・

そんな保身に似た思いしか篭ってない・・・

・・・なんて軽い・・・戦いに対するスタンスがなってない・・・

そんな言い訳で自分のアイデンティティーを守る暇があるなら目の前の敵に集中すべきなのに・・・

戦っている時にそんな事考える余裕があるとは・・・・・・

 

・・・変わらない、今の自分の弱さと、自分を良く見せようとしている自分に、自分弱さを正当化している自分に・・・

 

良いだろう・・・私も、武将の頃の、関羽に戻ろう・・・

 

そして、受け入れよう・・・自分の弱さも、自分の駄目なところも全て・・・

 

「関羽・・・貴女の攻撃は軽い・・・ソレは何故かわかる?」

 

「・・・・・・」

 

「ソレは貴女の攻撃の全てに想いが入っていないから・・・」

 

「なに? どう言う事だ!?」

 

「一刀様、100分の1から10分の1で戦うことをお許しください」

 

 

突然の愛紗の言葉に全員がどよめく。

 

当然だ、あれほどの武で100分の1程度ときている。

 

「・・・良いだろう・・・その代わり、殺すな・・・」

 

「勿論です」

 

愛紗は向き直り、過去愛紗に詠う様にいう。

 

「関羽、これから思いの篭った斬撃を放ちます・・・

しかとその身に受け止めろ!!!!!!!!!!」

 

そう言い放った瞬間、大気が震え、地も震え、何もかもが震えた。

 

愛紗から氣が大量に放出される。

 

観戦していた兵士は白目をむき、泡を口から吐き出し、涙と涎を垂れ流し、失禁してきた。

 

流石というか、将達は何とか耐えてはいるが、正直辛そうだ・・・

 

過去愛紗はどうにかこうにか立ってはいるが、全身を震わせ、体と本能は恐怖に打ちひしがれているが、その目は、魂は死んでない。

 

真正面から受けて立つきか!?

 

「やあああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

 

そう言い刃を振り下ろす。

 

振り下ろされた刃は氣と合わさり地面を割りながら過去愛紗に突き進む。

 

轟音と共に過去愛紗は吹き飛ばされた。

 

50メートル吹き飛ばされて、地を転がり気を失う。

 

こうして、愛紗の完全勝利で幕を閉じた。

 

しかし、愛紗は納得できない顔をしていた。

 

 

俺の負けかねー・・・・・

 

俺は曹操のところに行きこう言う。

 

「曹操、俺の負けだ、約束道理酒を貴殿に謹んで献上しよう」

 

「あら、貴方の奥方は圧勝したようにしか見えないけど?」

 

曹操の言葉にゆっくり首を横に振りながらいう。

 

「愛紗が納得していない・・・負けなんだよ・・・」

 

「・・・・・・そう・・・解ったわ・・・・・・で、貴方はどの様な銘酒をくれるのかしら?」

 

俺は、木箱を曹操に渡す・・・

 

「その中に入ってるよ・・・」

 

徐に木箱を開ける曹操。

 

木箱の中身はレミーマルタンの13世のナポレオンクラスが入っていた。

まあ、俺が今現在持ちえる最高の酒だ、価格は18万7000円と領主にやるのにしては安いが今はこれが精一杯・・・

 

「なにこれ?」

 

「ブランデーだ・・・天の世界の酒で葡萄を蒸留して作られた酒で、天の世界じゃ王侯の酒とも呼ばれている」

 

「へー、味は?」

 

「自分の舌で確かめてみな」

 

「そうするわ・・・」

 

 

曹操と別れた後、俺は愛紗の所まで行く。

「どうだった・・・」

 

「人に何かを伝える・・・かように難しいものなのですね・・・」

 

「・・・そうだな・・・」

 

「私は・・・あの頃から・・・成長しているでしょうか? 

私はあの斬撃の中に『自分と向き合え』と篭めて放ちました・・・

そして彼女の太刀筋から、あの頃から変わらない自分の弱さを見つけました・・・

彼女に私の思いは届いているでしょうか・・・」

 

「ソレは過去の愛紗にしか解らない・・・ただ・・・君は君の出来る思いを込めて放ったんだろう? なら届くさ・・・」

 

俺は懐からマルボロを取り出し、口にくわえ、ジッポで火をつける。

 

煙草の煙が俺の肺を満たし、ソレをはきだす。

 

その煙は空へと吸い込まれていった。

 


 
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