No.1013574

九番目の熾天使・外伝 蒼の章 クリスマス編 その1

Blazさん

時間が間に合わないのでできてる分だけを。
というか書いてる途中でデータが一部消えてメンタル削られた(´・ω・`)

2019-12-23 23:25:26 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1276   閲覧ユーザー数:1224

 九番目の熾天使・外伝 蒼の章 クリスマス編

 

 

 

 

 

 今年もやって来たクリスマス。

旅団内でも冬の一大イベントということで、日ごろの労いも兼ねて数日間の休暇や仕事量の抑えが行われており、楽園内はどこもかしこもクリスマス気分に染め上げられていた。

廊下では各部署ごとの忘年会やクリスマスパーティーの告知、最近改修されたエレベーターにも広告替わりにクリスマスCMが流されている。

加えて各所には樅木を装飾したツリーやレースが飾れるなどイメチェンも行われており、十二月の楽園は別の意味でも忙しくあった。

 

 

 

……さて。そんなクリスマス、と言えばやはりサンタクロースは外せないだろう。

例え起源が何であれ、クリスマスという行事その物で言えばサンタの存在は外せない。それはある意味のお約束だ。

毎年、旅団内ではそれぞれがサンタになってプレゼントをというのが一種風習になっているが、昨今どうやらネタ的にも資金的にもつらくなってきたようで、サンタの人数が減るという珍事に陥っていた。

どうやらこの数年でネタと言うネタが出きったせいでもあるらしく、新たなネタが出なかったりただプレゼントを渡すというのでは面白くないということであるらしく、このままでは今年のクリスマスはやや地味になる。そう思われていたが……

 

 

 

 

 

まさかの人物が意外なことを言いだした。

 

 

 

 

 

「―――よし。これで多少はサンタらしくなったな」

 

そう言って自分の姿を鏡に映し、そこに映る白い付け髭を調整する。

頭には赤と白の帽子をかぶり、伸ばされた白髭と合わさればよく考えられるサンタその物。当然、そこにいるのがサンタなわけがない。

しかし、帽子を髭だけでサンタらしく見えるというのもある意味では貴重で、傍から見ればサンタクロースに見えてしまう。

……が。先ほどから言う通り、そこにいるのはサンタではない。

サンタの仮装をした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――我らが団長である。

 

 

 

「さて。それではプレゼントを配りに行くぞ、バフバロ」

「バフッ」

 

サンタの仮装に身を包んだクライシスはそう言って大きな袋を手にする。無論、中身はプレゼントなのだが、それを彼が配りなおかつモンスターであるバフバロを連れて歩くというのだ。それで本当に大丈夫なのか、と思えるがその辺は団長であるというだけで説得感は出てしまい、言い返すのもできないだろう。

 

かくして団長ことクライシスが今年のサンタとなって団員らにプレゼントを運びに行く。今回はそんな様子を追っていこう。

 

 

 

 

・ディアーリーズ プレゼント : 加湿空気清浄機

 

 

「―――こんな所で何をしてるんだ、ディアーリーズ」

「え、あ……ええ、団長!?」

 

……と。扉を開けたクライシスの姿に驚くディアーリーズだが、クライシスもまさか彼が戦艦クロガネの格納庫の中にある倉庫のそのまた奥にいるとは誰も思ってもなく、団長の姿に驚いたクルーが彼の後ろ姿とそこにいたディアに驚いていた。

どうやら理由は言うまでもなくラヴァーズとの問題であるようだが、今年はそこにさらに

 

「……なるほど。蒼の世界の者たちか」

「はい……おかげで軽い戦争状態と言いますか……」

 

 

ディアの話曰く、元々はクリスマスは美空らとやる予定だったが、美空がイーリスら旅団の女性陣にお呼ばれしたらしく話が流れてしまったらしい。仕方なく咲良とともに楽園でのクリスマス会に参加しようとした。……がここでも彼のフラグが働いてしまい、トラブルが発生した。

ラヴァーズがそれならばとクリスマス会を企画したのだが、先に旅団でのクリスマス会を約束してしまったことと、その約束を女性……そう蒼の世界の面々と約束してしまったことで板挟みになってしまったのだ。この状況にディアはラヴァーズも参加すればいいのではないか、と考えていたが彼の考えが甘かったようで、それを了解しないどころかラヴァーズがどこから聞いてきたのか、彼女らのことも聞いていたようで(一部を除き)ラヴァーズとの対立が発生。仕方なくディアが仲裁に入るが今度は彼に怒りやらの矛先が向き―――

 

 

「結果、こうなったというわけか」

「ええ……」

 

逃げる羽目になったディアはこうして隠れていたというわけで、それを聞きクライシスはふむ、と頷くと一つの提案を出す。

 

「私でよければ間を取り持つが?」

「え、団長がですか!?」

「不満か?」

「いやいや! ありがたいですけど、今のみんなが聞いてくれるか……」

 

クライシスが間に入れば嫌でもこの騒動は終わるだろう。だが、正直この手のことになるとラヴァーズは相手が例え何であろうともかみついてくる。それを知っていたディアはむしろそれでクライシスに迷惑が掛からないかと心配だった。

……が。それこそ余計な心配で

 

「大丈夫だ。そうなれば…………少し、灸をすえるだけだ」

「え……」

 

一瞬、クライシスの声のトーンに背筋を凍らせたディア。次の瞬間には元の表情の読めない顔に戻っており、一瞬とはいえその恐怖は彼の脳裏に鮮烈に刻まれた。

 

「さて。それは後でするが……まずはこれだ。ディアーリーズ、メリークリスマス」

「え、あ……ああ……そういえば今日はクリスマス……って団長のその姿ってそういうことなんですか!?」

「そうだとも。今年は私がサンタだ」

 

クライシス自らサンタになるということに驚くディアに、サンタ当人は袋に手を入れて中を物色する。すると中に入っているもので手ごたえを感じたようでそれを一気に引き上げる。

手にはバスケットボールサイズのプレゼント箱が握られており、クライシスはそれを迷うことなくディアに手渡した。

 

「ではプレゼントだ」

「あ……ありがとうございます!」

「たしか加湿空気清浄機だったか。君が使いやすそうなものをチョイスしておいたぞ」

「そこまでしてくださる!?」

「ああ。なんせ私はサンタだからな。それと、これは私からのプレゼントだ」

 

と、今度は小さなボールではなくモンスターボールを取り出しディアに手渡す。

 

「……これって?」

「メタモンだ。欲しがっているとokakaから聞いたのでな」

「そこまで……団長、ありがとうございます!」

 

もらった二つのプレゼントに嬉しそうに笑うディアの顔は年齢に反し子どものように無邪気に笑顔を作っており、その顔にクライシスも小さく微笑む。どうやら素直にうれしい者であったようで、笑みと作る彼に「これが理由か」と内心納得するクライシスだった。

 

 

「……ところでディア」

「はい、何でしょう」

「今現在、お前の彼女たちがここに向かってきてるぞ」

「……why?」

 

クライシスが言う通り、現在彼らのいる格納庫、と言うよりもクロガネにラヴァーズを含めたディアの女性関係者が一直線に向かっていた。

それをクライシス及び、艦内に聞こえる声でわかったディアは時折聞こえる彼女らの声に背筋を凍らせビクつかせる。割と頑張って逃げたはずがこうもと、あっさり見つかったことに混乱する。

 

「どうやって!?」

「ああ。私が垂れ込んだ」

「団長!?」

「このままではクロガネのクルーに迷惑がかかるからな。お前も逃げてないでたまには男らしくしてみたらどうだ?」

 

一応男らしくしてるのだが、と言いたくなるがクライシスの男らしくは決断をしろという意味だろう。無論、ディアも決断してなかったわけではないが、それが遅すぎたせいではある。否定できないので何も言い返せず、口ごもることしかできない。

 

「というわけでだ。私はそろそろ次のプレゼントを配達するからな」

「いや、そんなことするだけして!?」

「かもしれんが、私はただ聞かれたから答えただけだぞ」

「え、あ……ううん……それはどうだろ……」

「反応が年上との初めての会話になっているぞ」

 

追い込まれたせいで混乱しているディアの話し方が敬語ではなくなり目も泳いでいるどころか暴れまわっている。思考も停止寸前でどうすればいいかと考えようとしてるのだろう。

が。そんなことなどどこ吹く風とばかりに次の相手にプレゼントを持っていくクライシス。

この後、ディアがどうなったかは想像にかたくないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・okaka プレゼント:まとまった休暇

 

楽園内 調査班部署

 

旅団内に存在する調査班。主に諜報活動を行う部署でもあり、ここは外部との情報収集の起点にもなっており、組織内でも重要な部門の一つである。

今まではナンバーズとは別の系統に分けられ、部署で活動していたが、近年の目まぐるしい状況の変化などにより明確な指揮官が必要になり、現在はokakaがまとめている。

そんな調査班の部署は意外にも普通、悪く言えば「これが?」と思えるほどのオフィスのような部屋だが、これはあくまでも部署の一室。ナンバーズでもわずかな人間しか知らない部屋が奥にはあるのだ。

 

 

「情報の精査完了しました。やはり移動してますね」

「だな。マグダラオスの行先は?」

「今までの通りかと。エネルギーの集束地に向かってますね」

「……わかった。引き続き調査を頼む」

「はい」

 

調査班の部署もクリスマスの飾りがされている。しかし、慌ただしさはクリスマスだからではなく、平常運転のもの。この部署だけがクリスマスなど無縁ともいえる忙しさで働き詰めをしており、その忙しさは年末のそれだった。

 

「おいA子! EFの世界のWシリーズの資料ってどこにあった?」

「えーと、その奥にあるファイル、『EF』の17です!」

「サンキュー!」

「……はぁ」

 

クリスマスというイベントの日にまさかいつも通りにとは思ってもなかったA子は深いため息をつく。一年の中でも特にビッグなイベントだ。組織の在り方からそう簡単に休めないのは分かっていたが、それでもクリスマスはと淡い希望を抱いていた。しかし、そんな彼女の小さな希望も部署の重要性の前では一瞬の小さな光も同然。

儚く消えてくのだろう。と自分の決断を恨んだが

 

 

「ふぅ。当分終わりそうにないな」

「のようだな。クリスマスが犠牲になるぞ」

「それは仕方ないって団長―――――団長!?」

 

突如、okakaの隣に現れしかもしれっと話を始めたことに遅れて驚き、それをさらに他の調査班の面々が驚く。okakaという実力者が気配も察知できずに後ろをとられたことは彼にとっては不覚でしかないが、それが団長でしかもサンタの恰好をしているとそんなことを考える暇もなくただ驚いて椅子で滑り落ちそうになってしまう。

 

「ホホホ。メリークリスマス、諸君。こんな日にもすまないな」

「えっと……何してんの団長」

「見た通りだ。今年は私がサンタをしようとな」

「……あ、そう」

 

団長の考えはわからんと呆れるokakaは椅子に座り直し、仕事戻るがそれで団長である彼が消えるわけもなく、仕事の進捗を訪ねてくる。

 

「進み具合はどうだ」

「八割かな。一部はクロガネ隊や支援組織に委託してるが、こっちはその情報の集積と解析をしなきゃならないから、忙しさはいつもと変わらないって感じで」

「それでもこの進み具合は例年以上だ。お前に任せて正解だったな」

「そりゃどうも。けど……この状況じゃ今日一日はかかるな」

「ふむ……」

 

 

それでも一日はかかるという仕事の量にクライシスは小さく唸り、何かを考え込む。すると、何を思いついたのかこんなことを言い出す。

 

「okaka。いったん作業を中断させるんだ」

「え?」

 

唐突に今の作業を止めろという指示が出されたので、okakaはどういう意味かと目の前の作業を止めずに聞き返す。

 

「一応聞くけど、なんで?」

「単純にオーバーワークであるということ。それにその手のことは現状の把握とで十分だ。今のところ、奴の動きは把握できているからな」

「だけどなぁ……」

 

そうとは言うがと、言い返したいokakaだが正論でもあるクライシスの言い分を言い返すことができない。と言うのも、ここ最近は旅団の活動もひと段落して、現在はモンスターの世界(モンスターハンター)の生態調査に精力的に行っている程度。その生態調査も着実だがゆったりとしているのでそこまで急ぐことでもない。

最近オーバーワークだったのは古龍の動きが活発だったからだが、対処が完了し今は安定している。

 

「まぁ見逃さん程度に見張っておくぐらいでいいだろう。それにあちらばかりを見ていたら、他所からの不意打ちを食らう」

「……ああ。その辺は問題ない。つい先日のことだが、すぐにシンギュラリティってことには成らないし。AIの方も博士連中のおかげで何とかなったらしいからな」

「そちらの調査は?」

「ウチが裏で手を組んでる連中に任せてる。信用には足るはずだから当面はアイツら任せだな」

「彼らか。確かに彼らなら信用に足るから問題はあるまいが、あまり信用しすぎるなよ。特に彼女にはな」

「気を付けます」

 

軽く報告をするokakaに忠告をしたクライシスは、話を切り上げて「さて」と話題を切り替える。

 

「そんなokaka、お前に私からのプレゼントだ」

「プレゼント? もうそんなのもらう歳でもないんですがね」

「嫌いではないだろ?」

「……否定はしない」

 

とはいえクライシスがプレゼントをくれると言っているのだ。悪意のない事は間違いなく、プレゼントしてくれるのだから悪い気になるはずがなく、okakaは少し、どんなプレゼントかと期待した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「有給休暇~」(某青狸のBGM)

「すっごい生々しいもん出てきたな」

 

まさか有休の届出用紙を取り出されるとは思ってもなかったokakaはどう反応していいかわからず、ただ手渡された届出の文面を見ていた。

間違いなく有給休暇の届出の紙で以前メンバーの書くのを手伝ったことを思い出した彼はそんな思い出を四隅において、本気で言っているのかとクライシスに訊ねた。

 

「え、なにコレ、これが本当にプレゼント?」

「そうだが?」

「え……いやさ、もう少しまともなのを……」

「金はやらんぞ」

「誰がせがむか。それとは別で!」

「ああ。一応調査したが、お前も物欲が無いからな。だからこれになった」

「物欲でプレゼントって決まるっけ!?」

 

完全に物欲=プレゼントなチョイスに若干クライシスを恨みたくなったokaka。だが自分がほかには何もいらないと言ったのも事実で、いつの間にかそのことを知られていた彼は何も言えずに紙を見ていた。

 

「……団長。返品じゃないが今からは……」

「来年の予約か?」

「地味に厳しいなアンタ!?」

 

その後。調査班のスタッフにはそれぞれが欲しいものが渡され、ただ一人有休の紙を手渡されたokakaはしばらくの間無言だった。

 

「そりゃそうなりますよね……」

 

ちなみにA子はマフラーだったそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・支配人 プレゼント:食材

 

「プレゼントは食材だったな」

「ああ。ありがとうな、団長」

 

楽園の食堂……の近くの食糧庫で支配人はクライシスから赤子ほどの大きさの箱を受け取り、中を開ける。中には何やら高級そうな食材が一つ入っており、それを見た支配人は上機嫌な顔でクライシスに感謝する。

 

「これが……」

「ああ、君が欲しかった食材だ」

「さすが団長だな。まさか本当に採ってきてくれるとは」

 

中に入っていたのは小さなニンニクで、そのサイズは平均的と言える。しかし、そんなただのニンニクが箱の中でさらに専用の保存容器とカプセルに詰められており、その厳重さは異常ともいえた。

だが、それはただのニンニクであればという話で、容器におさめられていたそれはただのニンニクではなかった。割れた一つを食べれば一か月は寝ずに動けるという食材、メテオガーリックだ。

 

「しかし、よかったのか。メテオガーリックとはいえコレを使えば……」

「わかってるさ。だから調理で細かくして使う。メテオガーリックの効果は知ってるから後はそれをうまく調理すれば、薬にも健康料理にもなるからな」

「それもそうだな。ただプレゼントであることは忘れるな。管理しなければZEROかkaitoあたりに食われるぞ」

「だな。厳重に保管しておくよ」

 

箱を閉じた支配人はそう言って食糧庫の奥へと向かう。食糧庫には奥に貴重食材を保管する区画があり、彼はそこにメテオガーリックの入った箱をしまいこんだのだ。そこなら竜神丸が構築した特殊な防壁術式で守られるので容易に突破することはできないという防犯性の高さがあるのでZEROなどのつまみ食い常習犯に食われる心配はそうそうない。

しかも無理にでも開けたら最後、術式の機能として食材は全て虚数空間に移される。

 

「これで良し。団長、なにか食うか? ちょうど食堂の方もひと段落したし、軽くつまめるものなら―――」

「好意だけ受け取っておこう。だが、まだ次の仕事があるのでな」

「そうか……にしても、団長がサンタとはな」

 

クリスマスパーティーの用意を終えた支配人の好意を受けつつもまだ配送が残っているということで断るクライシスはそう言ってプレゼントの入った袋を背負い、次のところへと向かおうとする。しかし、そこで彼は何を思い出したのかそういえば、と別の話題を切り出す。

 

「お前のところに預けた少女、様子はどうだ?」

「少女……ああ。あの子か。元気にしてるぜ。今みたいに俺が居ない時はユイとフレイアに面倒見させてるけど」

「そうか。彼女らであれば……問題はないか」

「フレイアはともかく、ユイとは仲がいいからな」

 

詳細は省くが、ある事情から少女を一人預かっている支配人。しかし、旅団での仕事があるだけに中々面倒を見ることができず、こうした日は自身の仲間であるフレイアらに任せていた。とはいえ、ずっとまかせっきりと言うのも彼女らに悪いと思うこともあるので支配人も時間があれば彼女の顔を見に行っていた。

つい最近にも彼は少女の様子を見に行くのと、ついでにユイらをクリスマスパーティーに誘いに行ってきたばかりで、その時に少女の様子は確認していた。

 

「そうか。お前に一人を預けて正解だったな」

「かもな、俺も他の子もって言われたら拒否してたけど……他の連中は良かったのか?」

「問題はない。ガルムは幻想郷で、げんぶは白蓮が預かっているが全員元気そうだと報告されている。本当は刃にも預ける予定だったが事情があったからな。消去法で後の二人は朱雀とBlazに振り分けた」

「朱雀かぁ……アイツの周りにはシンフォギアっていうのを扱う子たちがいるんだろ。大丈夫なのか?」

「そこは蒼崎とともに対処させている。今のところは皆無だ」

 

というのも大体は朱雀とBlazのおかげだが、と言いたいクライシスだがそれでは文字通り粉骨した蒼崎が報われないということであえて深くは言わなかった。

 

「話が脱線したな。では私はそろそろ行くとする」

「ああ。団長も後で来てくれよ。いいのを作ったからな」

「もちろんだとも」

 

 短く答えたクライシスはそう言って乗ってきたトナカイ(バフバロ)に乗ろうとするが、またしても何かを思い出したのか、顔だけを振り向いて同じくその場を後にしようとしていた支配人に問いを投げた。

 

「そういえば支配人。お前が周りから父親呼ばわりされているようだが、あれは何か意味があるのか?」

「ぶっ!?」

 

 唐突に何を言い出すのかと思い振り返る支配人。確かにクライシスの言う通り彼は一部の旅団メンバーから父親扱いされ、言われることもあるが、それがまさか団長の耳に入るとは思わなかったので、慌てる彼はその情報の出どころを尋ねる。

 

「その呼び名、どこで!?」

「ん? 他の団員が偶に言っているので、なぜお前がそう言われているか不思議でならんかったのでな」

「ああ……そう」

 

どうやらそこら中で言われている自分のあだ名に突っ込む気にもなれない支配人。以前から言われてはいたが、それがまさかここまでとは思ってもなく、広がる彼のあだ名はついにはクライシスの耳にも及んでいた。別にマズいというわけではないが、彼にも及んでいることには驚くしかなく、支配人は答えると深いため息をついた。

 

「……一種のいじめというやつか?」

「いや、そうじゃないって。単に俺が父親くさいことをやるからそういうあだ名になったってだけ」

「なるほどな、確かにお前は少し親のようなことをしたり言ったりするからな。そう思われても不思議ではないか」

「ああ……ったくやめろって言ってるんだがな」

「……団長命令でやめさせるか?」

「それ本当にいじめにあってたみたいだからやめてくれ」

 

とはいえ、そのあだ名も一種敬意があってのことと言うのも支配人の耳には入っているので、彼もそれをやめさせるというよりは自重してほしいというのが本音だった。

が。それがまさかクライシスの耳に入ったという事実に、彼のテンションは天秤の如く揺れるが、それがどちらに傾くかとなったときは早く、そしてあっけないもので、斯くして支配人は彼の後ろ姿に深いため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

―――続く!


 
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