名も無い物語
夜によく目が覚める。
気付けばまだ部屋は暗やみに包まれていて、寂寥感(せきりょうかん)が漂っている。
「……は」
理由もなく、一言、声を漏らし、素早く自分の腕で目元を覆って、苦しんだ。
一一突然の、悲しみが襲ってきた。
ただ一人の真っ暗な部屋で。
音は時計の針が刻む音だけ。
かち、かち、かち、
と。
一人で寝る夜は、寂しい。
わかってる。そんな事、当たり前のことなんだって。だけど、言わせて欲しいんだ。
誰にも、言えないんだから。
家族にも
友達にも
誰にも
だから、お願い。
「……助けて」
暗い静かな部屋で、自分の声が信じられないぐらい大きく、そして寂しく響いた。誰も返事をしてくれることはない。
苦しみながらの夜。
誰も返事をしてくれなくて、また悲しくなった。
「…なんで」
孤独
苦しい
孤独
悲しい
「誰も、助けてくれないの…」
もし、この世に神様が居るなら、僕は憎みたい。
あははは、と
どこかで笑った声が聞こえた気がした。
ねえ、答えて
どうして、僕は苦しんでるんだろう?
一人だから?
僕が嫌いだから?
違う。
自分が、いけないんだ。
だから、せめて懺悔として、泣かせて下さい。
「……っ…く…」
誰も見ていないはずだ。
誰もいない部屋だから。
それなのに、誰かが見ている気がして。
テレビが
机が
いすが
僕を見ていて。
それがなんだか、とても憎たらしく思えて、我慢できなくなって、泣いた。
かち、かち、かち、と
時計の針が動く。
夜はまだ明けそうにない。
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たった一人の男の経験を綴った物語。
ノンフィクションです。
超掌編になってます。