No.101114

名も無い物語

haruさん

たった一人の男の経験を綴った物語。

ノンフィクションです。

超掌編になってます。

2009-10-15 17:06:10 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:551   閲覧ユーザー数:547

名も無い物語

 

 

 

夜によく目が覚める。

気付けばまだ部屋は暗やみに包まれていて、寂寥感(せきりょうかん)が漂っている。

 

 

「……は」

 

 

理由もなく、一言、声を漏らし、素早く自分の腕で目元を覆って、苦しんだ。

 

 

一一突然の、悲しみが襲ってきた。

 

 

ただ一人の真っ暗な部屋で。

 

 

音は時計の針が刻む音だけ。

 

 

かち、かち、かち、

と。

 

 

一人で寝る夜は、寂しい。

わかってる。そんな事、当たり前のことなんだって。だけど、言わせて欲しいんだ。

 

 

誰にも、言えないんだから。

 

 

家族にも

 

 

友達にも

 

 

誰にも

 

 

だから、お願い。

 

 

「……助けて」

 

 

暗い静かな部屋で、自分の声が信じられないぐらい大きく、そして寂しく響いた。誰も返事をしてくれることはない。

 

 

苦しみながらの夜。

 

 

誰も返事をしてくれなくて、また悲しくなった。

 

 

「…なんで」

 

 

孤独

 

 

苦しい

 

 

孤独

 

 

悲しい

 

 

「誰も、助けてくれないの…」

 

 

もし、この世に神様が居るなら、僕は憎みたい。

 

 

あははは、と

 

 

どこかで笑った声が聞こえた気がした。

 

 

ねえ、答えて

 

 

どうして、僕は苦しんでるんだろう?

 

 

一人だから?

 

 

僕が嫌いだから?

 

 

違う。

 

 

自分が、いけないんだ。

 

 

だから、せめて懺悔として、泣かせて下さい。

 

 

「……っ…く…」

 

 

誰も見ていないはずだ。

 

誰もいない部屋だから。

 

それなのに、誰かが見ている気がして。

 

 

 

テレビが

 

 

机が

 

 

いすが

 

 

僕を見ていて。

 

 

それがなんだか、とても憎たらしく思えて、我慢できなくなって、泣いた。

 

 

 

 

かち、かち、かち、と

時計の針が動く。

 

 

夜はまだ明けそうにない。

 

 


 
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