あれは、俺が部隊を率いて基地外縁の警備任務をしてたときだ。ちっせえ基地の警備任務。FAも使わずに装甲車といくつかの戦車だけで周辺警戒してた。そして、丘向こうでなんかいざこざがあったってんでたまたま外にいた俺たちが向かわされた。そんで丘を超えて下ろうかって、そん時だ。ズン、と足の下が震えたかと思うと轟音とともに空気が震えた。それが丘向こうの俺たちの基地の弾薬庫が爆発した音だ、というのは全部終わった後に知ったことだが、だがそれでものっぴきならないヤバイ事態なのはすぐに理解できた。
「総員、戦闘配置だ!FAを起動(おこ)して索敵させろ!」
そう通信機に向かって怒鳴った時には遅かった。俺が乗りかけてた装甲車の至近に着弾して俺は部下と装甲車ともども吹っ飛ばされた。
気がついたら二人の部下の死体の上でね。あいつらのお陰で着地の衝撃が和らげられたんで、死にぞこなったらしかった。骨が折れたらしい足をひきずって基地に戻ろうと丘の上に上がって呆然とした。
全部なくなってやがったんだ。部下の乗ってたはずのFA、バカどもと賭け事のいざこざで殴り合った食堂、クソ野郎の駐屯基地司令のいる士官棟……。全部燃えて、なくなってた。そしたらジェットの轟音が聞こえたんで空を見たんだ。そこにいたのが、アイツさ。グレーの二色迷彩に赤線のマーキング……。確かあの型は“ツェンダオ”とかいうんだったか?アイツが空をかっとんでいったんだ。それでわかった。ああこいつにやられたのか、ってな。
そしたら今度はそいつの後から3機の友軍の“スーパースティレット”がぶっ飛んできてそいつにむかって、ぶっぱなした。だけど、赤線の野郎。そんな3機がかりの弾幕を悠々と交わしやがった。おれは、そこでそいつを見て、不謹慎かもしれないが、見惚れたよ。アイツはダンスでも踊るみてえに飛ぶんだ。こっちの弾はどれだけばらまこうが当たらない。そして気づいた時には3機が、それぞれ各個にケツをとられて3つだか4つだかついたマシンガンで蜂の巣さ。あんな空戦をFAでみたのはあれっきりだ。俺も部隊長なんて肩書きもらっってFAに乗ったりしてたが、あのあとはそんなことは恐ろしくてできなくなっちまった。あんな化け物がこの世にはいるんだっておもったら、なあ?そのあとはまあ大したこともないさ。3機がやられて、そこに立ち尽くしてた。あの赤線の野郎は、3機目を墜としたそのあと、一瞬俺を見た。死ぬ、と思った。だけどあいつはそのままかっとんでどっかにいっちまった。そんだけさ。アイツがどこの機だったのかも、なんで俺たち辺境の寂れた駐屯基地が狙われたのかも、結局よくわからなかった。だが、まあ基地司令のクソ野郎は、マフィアと金のつながりがあって、人身売買にも通じてたとかって噂もあったから、もしかしたらその報い、だったのかもな。俺たちとしちゃいい迷惑だったが。まあそれで病院からでた後は戦闘部隊から外してもらえることになって、配置転換になって輜重局さ。経理だ折衝だとかをするようになったから、二度とアイツを見たことはなかったが、それでも時々夢に見るよ。日が落ちかけた赤焼けの空を踊るように飛ぶ、あの“赤線野郎”を。
防衛軍第八管区総合輜重局第三装備部長 マルセル・コナー大尉(事件当時は准尉)
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