本を読んでいて、一瞬意識が遠退いたような気がした。
「もうこんな時間かぁ…」
いつの間にか夜の闇が深くなっていた事を、眠気によって気付かされる。
メロにとってはいつもの時間だった。
そろそろ寝ようと机の上の電気を消すと、いきなり暗闇に覆われて少しハッとする。
そのうちに、窓から差し込む月明かりで再び室内に明るさを取り戻すと、今度は窓際のベッドの白さが目に飛び込んできて、月明かりに反射した白が輪郭を滲ませながら、寝ている同室の少年の姿をぼんやりと浮かび上がらせた。
銀色の髪がきらめきを含んで、不思議な光景だった。
いつも勉強したり本を読んだりしていて寝るのが遅いメロより先に、静かな寝息を立てるニア。
横向きに丸まって寝ている為、体はちょうどメロの方を向いていた。
そこから視線を逸らせずに、そのままゆっくり歩み寄ってニアの傍に腰を下ろすと、その顔に見入ってしまった。
その顔をもっとよく見ようと、向き合う状態で隣に寝転がると、真正面にはうっすらと口を開け目を瞑るニアの顔。
薄く赤みを差した白い頬。色鮮やかな薄桃色の唇。緩やかにうねる銀の毛先。
メロは、銀色の髪…白い頬、と指を滑らせ、ぷっくりと柔らかい唇の上でそっと停止させた。
(ホント…女の子みたいだよな…)
そう思うと急にドキドキし始めた。
目を閉じた状態だと、普段の倍以上も美しさが増している気がする。
長さのあるふさふさの睫毛も、陶器のように滑らかな肌も、ふっくらとした顔の輪郭も…
(だって…普段は屁理屈ばかりで可愛くないし…表情だってあまり変わらないし…)
そんな言い訳めいた言葉を頭の中で泳がせながら、無意識のうちにそのやわらかな唇にもう一度、自分の指を押し当てていた。
しっとりとした感触に触れたかと思えば、弾力で押し返される。初めて触れた訳ではないけれど…。
その感触と口元から零れる寝息に、メロは愛しさを感じていた。
今に始まったことじゃない。
何度も何度も…
この存在全てが愛しいと、もう何度感じたか分からないくらいだ。
同じ男なのに…なんでこんなに柔らかくて、可愛くて、いい香りがするんだろう?
そんな事を考えながら、しばらくその心地良さに浸ってニアの小さな口を見つめていると…
(口が少し開いてる……って事は…歯も閉じてないって事だよな…)
口元への興味から急に湧き上がる好奇心。
ニアの柔らかい唇へ押し当てていた自分の人さし指を、さらにその奥…口内へと挿し入れてみる。
前歯はあっさりと開かれ、暖かい舌へとたどり着いた。
(ニアの口の中…あったかい…)
ねっとりと暖かい口の中の感触があまりにも気持ち良くて、メロはそのままうっとりとその様子に見惚れていた。
瞼を閉じて指をくわえる姿は、なんだか赤ちゃんみたいだと思って笑いがこみ上げてくるが、それも束の間。
挿し入れた指を少し動かしてみると、その指をちゅぷちゅぷと吸って、前歯がギリリと締め付けてくる。
「イテッ!!」
痛さから逃れようと指を出し入れしようとすると、今度はニアが苦しげに上を向いて口を少しだけ開いたので、メロは歯からの拘束を逃れる事が出来た。
だけどまだ、その指は入れたまま…。
唾液で濡れた指をくわえているニアのその姿は扇情的だった。
メロもドキドキしながら指を動かして、少しだけ眉間にシワを寄せ軽く身をよじるニアに、顔を近づけた。
指に舌が絡み、下腹部をじんじんとさせる何ともいえない感覚に自然と鼓動が早まる。
指をニアの口から抜くと、唾液にまみれた指も気にせずニアの上に覆い被さり、ゆっくりと、目を細めて眺めるようにニアの顔に接近する。
半開きになった色っぽい唇も、長い睫毛のかかった頬も、形のいい鼻も、なにもかも……。
自分だけが独占していたいと思う。この先も、ずっとずっと…
先程までニアの口内に指を入れていた左手は、ニアの手のひらに軽く重ね、右手はふっくらとした頬から顎を撫でて唇をなぞる。
メロの金色の柔らかな髪がサラサラとニアの頬や瞼に掛かり、薄桃色の唇には自分の唇を重ねた。
その柔らかくぷるぷるとした感触にまた、メロはゾクリとする。
舌で唇の輪郭をなぞり、柔らかさを確かめるように啄ばむ。
吸い付きながら、舌で歯列をなぞって、更にその奥にある舌に自分の舌を絡める。
寝ているニアからの反応は薄いが、多少なりとも自分の舌の動きに呼応しているようで、しばらくそれを繰り返していると左手を重ねていたニアの手のひらが、きゅっとメロの手を握り返してきた。
行為に没頭していた為、メロはどきりとした。
「ニア…?」
「勝手に…何…してるんですか…?」
まだうつろな眼差しで不機嫌そうに、でも少しだけ頬を上気させて見つめ返すニア。
「起きた?」
メロはニヤリと口角を上げ、至って普通に返した。
内心少し焦ってはいたけれど。
「そりゃ…そんなに口を塞がれれば誰だって起きるでしょう?」
呆れ顔で言いつつも抵抗する様子がないのをいい事に、メロは言う。
「だって…ニアの唇が柔らかいからさ…」
「理由になってませ…」
ニアが言い終わらないうちにその口を塞いでやると、少し息苦しそうにしたものの
鼻からも重ねた唇からも吐息が零れて、すぐに「もっと」と求めるようなキスを返してきた。
水分を含んだキスの音が部屋中に響きわたり、その音がさらに二人の熱を高めていく。
何度も、重ねては離して、きつく吸い上げたり舌を絡めたり…。
ニアの顔はもう…白い肌が赤く染まっていて、伏せ目がちな表情と相まってとても色っぽかった。
唇を重ねるだけの行為がどうしてこんなに気持ちいいのか…。
「なんでだろ…ニアって甘い味がする…」
「んっ…メロ…も…甘いです…。甘くて…柔らかい…」
僕のは多分、チョコレートだ…と思ったけれど、もうそんな事はどうでもよくなっていて…。
覆い被さっていたメロの背中に、ニアはいつしか両腕をまわして引き寄せていた。
口から瞼、鼻、耳、首筋へとニアにキスを落としてゆく。
ニアの唇から零れるのは甘い吐息。
絶対誰にも渡さない…。
甘くてとろけるような二人の秘密。
僕とニア…二人だけの、あまいあまい秘密の時間。
end.
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デスノートのメロ×ニアで、ワイミーズ時代のお話。甘甘です。