No.1000509

英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

soranoさん

第30話

2019-07-31 00:08:01 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2091   閲覧ユーザー数:1731

1月17日、同日AM9:30――――――

 

翌朝、カレイジャスがベルガード門へと近づくと、そこにはアリサ達にとって驚く光景があった。

 

~カレイジャス・ブリッジ~

 

「な、何あれ…………!?」

「せ、戦艦の軍団…………!?」

「しかもどれも見た所大きさも”パンダグリュエル”とも大して変わらないんじゃないか!?」

モニターに映るベルガード門付近の地上に集結している複数のメンフィル・クロスベル連合軍の戦艦を見たアリサとエリオットは信じられない表情で声を上げ、マキアスは表情を蒼褪めさせ

「あれを見たら幾らメンフィルと連合を組んでいるとはいえクロスベルに侵略したエレボニア帝国軍が軍用飛行艇一機すら帰還できずに殲滅された事も納得ね…………」

「ん。しかも軍用飛行艇も見た事のないタイプ。メンフィルに加えて”未知の敵戦力”であるクロスベルなんて、クロスベルに侵略したエレボニア帝国軍にとっては”最悪の状況”だったんだろうね。」

「おまけに内戦終結に貢献したはずのヴァリマールまで敵として現れたんだから、エレボニア帝国軍はさぞ混乱したでしょうね。」

「…………(兄上…………)」

「これが”メンフィル・クロスベル連合軍”…………」

重々しい様子を纏って呟いたサラの推測にフィーは頷き、セリーヌは疲れた表情で呟き、ユーシスは辛そうな表情で亡き兄を思い浮かべ、ガイウスは真剣な表情でモニターを見つめていた。

 

「あっ!あの銀色の戦艦は…………!」

「クロスベル迎撃戦に敗れたエレボニア帝国軍がメンフィル・クロスベル連合軍によって奪われた”パンダグリュエル”か…………しかも”パンダグリュエル”に刻み込まれている紋章。あの紋章は…………」

「”エレボニア帝国を表す黄金軍馬の紋章”…………――――――恐らくあの”パンダグリュエル”はミルディーヌ公女がメンフィル・クロスベル連合軍と交渉して返還、もしくは貸与されて、”ヴァイスラント決起軍”の拠点兼旗艦として利用しているのだろうな。」

「ええ…………その証拠に”パンダグリュエル”周辺に待機している軍用飛行艇はエレボニア帝国の正規軍もそうですが領邦軍も採用していた軍用飛行艇です。クロスベルに侵略した空挺部隊は”パンダグリュエル”を除けば全て轟沈したとの事ですから、恐らく”パンダグリュエル”周辺に待機している空挺部隊は貴族連合軍の残党が保有している空挺部隊なんでしょうね。」

”パンダグリュエル”を見つけたトワは声を上げ、アンゼリカは重々しい様子を纏って呟き、アルゼイド子爵の推測に頷いたミュラーは真剣な表情でパンダグリュエル周辺に待機している空挺部隊に視線を向けて呟いた。

「リィンはきっとあの戦艦の軍団のどこかにいるのでしょうね…………」

「ええ…………それにセレーネさんやエリスさん、アルフィン殿下達も…………」

一方リィン達がベルガード門付近に駐屯しているメンフィル・クロスベル連合軍の陣地のどこかにいる事を悟ったアリサとエマは辛そうな表情を浮かべた。

 

「…………子爵閣下、そろそろメンフィル・クロスベル連合軍に通信を。」

「御意。」

目を伏せて黙り込んだ後目を見開いたオリヴァルト皇子の指示に頷いたアルゼイド子爵がブリッジのクルーに指示を出そうとしたその時、通信の音が鳴った。

「導力通信がカレイジャスのブリッジに向けられています!相手は…………”ベルガード門”です!」

「すぐに繋いでくれ。」

通信士を務めている士官学院生の報告を聞いたアルゼイド子爵が指示を出して士官学院生が端末を操作するとモニターにはエルミナが映った!

 

「貴女は確か”六銃士”の一人の…………」

「エルミナさん…………」

モニターに映るエルミナを見たオリヴァルト皇子は目を丸くし、ガイウスは複雑そうな表情を浮かべた。

「”西ゼムリア通商会議”以来になりますね、オリヴァルト皇子、ミュラー少佐。それとガイウスとは約2年ぶりくらいになりますね。初対面の方々には自己紹介を…………――――――ヴァイスハイト皇帝が正妃の一人にしてクロスベル帝国軍の”総参謀”も兼ねているエルミナ・エクスです。以後見知りおきを。」

「あの女性が話にあった”六銃士”の一人…………」

「しかもクロスベル側の”総参謀”って事はメンフィル側のセシリア将軍と協力してエレボニア帝国征伐の具体的な内容を決める人物でもあるという事だね。」

「それに”正妃”という事はエルミナさんはいつの間にか結婚もしていたのか…………」

エルミナの自己紹介を聞いたアリサ達がそれぞれ驚いている中ラウラとフィーは真剣な表情で、ガイウスは呆けた表情でエルミナを見つめた。

 

「さて…………我々も貴方達のような”小物”に構っているような暇はあまりありませんので、早速要件を聞かせてもらいます。――――――クロスベル帝国とエレボニア帝国が戦争状態に陥っている今の状況で、何の為にクロスベルに近づいたのですか?」

(ぼ、僕達が”小物”って………!)

(まあ、エレボニア帝国軍とぶつかり合って、勝利するつもりでいる彼女達からすれば士官学院生の私達なんて”小物”なんだろうね。)

(くっ…………俺達だけならまだしも、オリヴァルト殿下まで”小物”扱いするとは、幾ら正妃とはいえ、不敬が過ぎるぞ…………!)

エルミナが自分達を”小物”扱いした事に仲間達と共に血相を変えたエリオットは不安そうな表情をし、アンゼリカは疲れた表情で呟き、ユーシスは唇を噛み締めて厳しい表情でエルミナを睨んでいた。そしてオリヴァルト皇子はエルミナにクロスベル来訪の理由を説明した。

 

「…………なるほど。”やはり予想通り、アルスターの件でクロスベルを訪れたのですか。”予想していたとはいえ、今の状況でよくそんな悠長な事ができますね…………」

オリヴァルト皇子の説明を聞き終えたエルミナは静かな表情で呟いた後呆れた表情で溜息を吐き

「ぼ、僕達が”アルスターの件でクロスベルを訪れる事を予想できていた”って、どういう事なんですか!?」

エルミナの言葉を聞いたその場にいる多くの者達が驚いている中、マキアスは信じられない表情で訊ねた。

「メンフィルから提供された貴方達”Ⅶ組”の情報で貴方達の行動パターン等を分析しただけの事です。――――――話を戻しますが、貴方方の目的は”太陽の砦への訪問並びにアルスター襲撃に関連する調査”という事ですね?」

「は、はい。あの…………できれば、クロスベル領内への入国許可並びに”太陽の砦”への離陸・滞在許可に加えてクロスベル皇帝であられるヴァイスハイト陛下かギュランドロス陛下との謁見の許可を頂きたいのですが…………」

エルミナの確認の言葉に対してトワが遠慮気味な様子で答えた。

 

「何の為にあの二人のどちらかとの謁見を望んでいるのですか?」

「それは勿論、メンフィル・クロスベル連合とエレボニア帝国との戦争を和解に方法を見つける為の謁見です。」

「――――――却下です。そもそも今回の戦争、先に仕掛けてきたのはエレボニア帝国(そちら)の上エレボニア帝国政府はクロスベルに侵略行為を行ったエレボニア帝国軍をメンフィル・クロスベル連合軍が殲滅した事を強く批難し続け、メンフィルにもそうですがクロスベルにも賠償や降伏を要求し続けています。そんな状況で、幾らエレボニア皇族とはいえ、”帝位継承権”が存在しないオリヴァルト皇子が会談した所で何の進展もしない事は目に見えています。あの二人のどちらかと謁見したければ、エレボニア皇家の場合はユーゲント皇帝本人か”帝位継承権”があるエレボニア皇家の人物――――――アルフィン皇女がメンフィル帝国の処罰を受けた関係で身分を捨てた事で唯一”帝位継承権”があるエレボニア皇族となったセドリック皇太子、エレボニア帝国政府の場合はオズボーン宰相か上層部クラス――――――最低でもレーグニッツ知事を連れて来なければ、話になりません。」

「そ、そんな…………」

「…………ここでもオリヴァルト殿下の”帝位継承権”の有無が関係してくるのか…………」

「ハハ…………自分の出生を恥じるつもりは毛頭ないが、例えセドリックやアルフィンよりも低くても”帝位継承権”を私には与えなかった父上や帝国政府に恨み言を言いたくなってきたよ…………」

「オリビエ…………」

トワの頼みを考える様子も見せずに断ったエルミナの冷たい答えにエマは暗い表情を浮かべ、ガイウスは複雑そうな表情をし、疲れた表情で肩を落としたオリヴァルト皇子の様子をミュラーは辛そうな表情で見つめていた。

 

「それで”アルスター襲撃”の調査の為に貴国に入国して”太陽の砦”を調べる許可の件はどうでしょうか?」

「――――その件に関しては予めヴァイスハイトが許可を出していますので、構いません。」

「ええっ!?クロスベル皇帝の一人が!?」

「何故ヴァイスハイト陛下が予め許可を…………」

「事情はよくわかんないけど、とりあえずクロスベルに入国できるのはラッキーだと思った方がいいんじゃない?」

アルゼイド子爵の問いかけに対して答えたエルミナの意外な答えに仲間達と共に驚いたアリサは驚きの声を上げ、ラウラは目を丸くし、フィーは静かな笑みを浮かべて答えた。

 

「予め言っておきますが、クロスベル領土内で”カレイジャス”の離陸・滞在許可が下りているのは”太陽の砦”と”聖ウルスラ医科大学病院”、その近辺の街道のみです。それ以外の場所――――――特に帝都であるクロスベルの空港や近郊の街道に離陸した場合、その時点で問答無用でクロスベル警備隊・警察に貴方達の拘束に向かわせます。」

エルミナの警告にその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「…………了解しました。これ以上貴国との和解の芽を潰さない為にも、クロスベル領土内では最善の注意を払って行動させていただきます。」

「――――――結構。それでは私はこれで失礼します。」

オリヴァルト皇子の答えを聞いたエルミナは通信を切った。

 

「何はともあれ、”太陽の砦”まで特に交渉等もせず向かえる事は幸いだったな。」

「そうだね…………まあ、エルミナさん――――――いや、エルミナ皇妃陛下も幾ら顔見知りの私やガイウス君がいても、一切態度を軟化させるような事はないという事もわかったけどね…………」

エルミナがモニターから消えた後に呟いたミュラーの言葉にオリヴァルト皇子は頷いた後疲れた表情で溜息を吐き

「仕事――――――軍務に私情(プライベート)は一切挟まない主義に見えましたから、多分エルミナ皇妃陛下は母様みたいに冷酷な判断を平気でできるような人かもしれませんね…………」

「アリサさん…………」

複雑そうな表情で呟いたアリサの推測を聞いたエマは心配そうな表情でアリサを見つめた。

 

「…………しかしヴァイスハイト皇帝は”太陽の砦”に加えて何故クロスベルの領土内にある病院を訊ねる事も許可を出したのだ?」

「”聖ウルスラ医科大学病院”――――――通称”ウルスラ病院”はクロスベルの市民だけじゃなく、諸外国からの重病人や重傷患者を受け入れている事で西ゼムリア大陸全土でも知られている有名な病院でもあるのよ。病院の経営や医師の配置にレミフェリア公国政府も深く関わっていて、その関係で”ウルスラ病院”は一種の”中立地帯”にもなるから訪問を許可したのだと思うわ。」

「クロスベルの領土内にあるその病院ってそんなに有名なんですか…………」

ユーシスの疑問に答えたサラの答えを聞いたエリオットは驚きの表情を浮かべ

「ひょっとしたら”アルスター襲撃”でケガをした”アルスター”の人達もウルスラ病院で治療を受けているかもしれませんから、時間があったら後で訊ねるのもいいかもしれませんね。」

「そうだね…………まあ、まずは”太陽の砦”に急ぐとしよう。」

トワの提案に頷いたオリヴァルト皇子は先に進むように促した。その後クロスベルの領空に入ってベルガード門や帝都となったクロスベルを通過したカレイジャスは”古戦場”に離陸し、カレイジャスから降りたオリヴァルト皇子達が”太陽の砦”に向かい、到着するとそこには太陽の砦に出入りしたり、その近辺で生活している様子の”アルスター”の民達がいた。

 

 

同日、AM9:55―――――

 

 

~太陽の砦~

 

 

「あ……………………」

「”アルスター”の人達…………!」

「よかった…………皆さん、無事の様子ですね…………」

アルスターの民達の無事な様子を見たアリサは呆け、エリオットとエマは明るい表情を浮かべ

「どうやら”アルスター”の民達はエステル君達に守られた後何らかの方法によってここまで護送されたようだな。」

「ああ…………彼らが”第二のハーメル”の犠牲者にならなくて本当によかったよ…………ハハ…………彼らはエステル君達によって守られた上エステル君は”空の女神”の子孫でもあるから、まさに言葉通り”女神の御慈悲”かもしれいないね…………」

「…………けど、何で”アルスター”の人達がクロスベルまで連れて来られたんだろう?」

ミュラーとオリヴァルト皇子は安堵の表情を浮かべ、フィーは不思議そうな表情で首を傾げた。

 

「あれ?皆さんは…………!」

するとその時カイがティーリアと共にアリサ達に駆け寄った。

「カイ。それにティーリアも無事だったのだな。」

二人の無事な様子を見たラウラは静かな笑みを浮かべ

「はい。エステルさん達を含めた多くの人達の協力によって、僕達は九死に一生を得る事ができたんです。」

「えっと………Ⅶ組の皆さんはどうしてこちらに?確か今エレボニアとクロスベルは戦争状態に陥っていると聞いていますけど…………」

ラウラの言葉にカイは頷き、ティーリアは不思議そうな表情でアリサ達を見つめた。そしてアリサ達は”アルスター襲撃”の調査の為に”太陽の砦”を訪れた事を説明した。

 

「そうだったんですか…………昨夜の襲撃の調査の件でここに…………」

「エステル達が襲撃から貴方達アルスターの民達を守った事は聞いているけど、その後一体どうやって貴方達はアルスターから離れてクロスベルに移動したのかしら?」

「えっと………エステルさん達が私達を守ってくれた後、領邦軍が来てくれて、飛行艇で私達をエレボニアとクロスベルの国境まで運んでくれたんです。」

「領邦軍だって!?」

「アルスターはラマール地方だから、アルスターの民達を移送したのは恐らくラマール領邦軍――――――”黄金の羅刹”達だろうな。」

「ああ…………それを考えるとカシウス卿のご息女達は”アルスター襲撃”の情報を手に入れた後、前もってオーレリア達もそうだが、クロスベル帝国政府にも連絡してアルスターの民達をクロスベルに匿う為の移送の手配や交渉をしたと思われるが…………」

サラの質問に答えたティーリアの答えに仲間達がそれぞれ驚いている中マキアスは信じられない表情で声を上げ、ユーシスとアルゼイド子爵は考え込んだ。

 

「フム…………クロスベル帝国政府はクロスベル皇帝の一人であるヴァイスがエステル君達の知り合いだからわかるのだが、私が知る限りエステル君達にラマールの領邦軍もそうだが貴族達の伝手はないはずだよ。」

「ラマール方面の伝手…………ヴァイスハイト皇帝…………あの、ひょっとしたら、そのエステルさん達から”アルスター襲撃”の件を知らされたヴァイスハイト皇帝経由でユーディット皇妃陛下にも知らされたんじゃないでしょうか?」

「あ……………………っ!」

「確かにそれならオーレリア将軍達まで護送に協力した経緯の辻褄もあうね。」

オリヴァルト皇子が考え込んでいる中ある仮説に気づいたトワの推測を聞いたエリオットは声を上げ、アンゼリカは納得した様子で呟いた。

 

「えっと…………領邦軍は貴方達をエレボニアとクロスベルの国境まで送ったって言っていたけど、その後はクロスベル帝国軍にここまで護送されたのかしら?」

「はい。ただ、護送の最中にも襲撃があって、その時もエステルさん達もそうですけど、メンフィル・クロスベル連合軍やリィンさん達にも守ってもらえたんです。」

「護送の最中にも襲撃があっただって!?」

「しかもその時は”空の女神”の子孫達だけじゃなく、リィン達まで襲撃者を撃退したなんて、一体どうなっているのよ…………」

アリサの質問に答えたカイの答えに仲間達がそれぞれ血相を変えている中マキアスは驚きの声を上げ、セリーヌは困惑の表情で呟いた。

 

「あ、リィンさん達の件で思い出しましたけどⅦ組の皆さんはアルティナさんって名前の銀髪の女の子は知っていますよね?」

(名前が”アルティナ”でそれも銀髪の少女という事は間違いなく…………)

(貴族連合軍に協力していた”裏の協力者”の一人で”黒の工房”のエージェントの一人でもあるね。)

(そしてミリアムとも何らかの関係があるガキでもあるな。)

「え、ええ。というかティーリアちゃんがアルティナさんと知り合いだった事には驚きましたけど…………もしかして知り合ったのは内戦の頃、私達がアルスターに支援物資を届けに来た時ですか?あの時もアルティナさんはご自身の用事でアルスターに滞在していたようですし…………」

ティーリアの質問内容を聞いた仲間達がそれぞれ声に出さず驚いている中ガイウスとフィー、ユーシスは真剣な表情で小声で呟き、エマは一瞬戸惑いの表情を浮かべた後すぐにティーリアとアルティナが知り合う心当たりを思い出してティーリアに確認した。

 

「はい。それで護送の最中に襲撃された時、アルティナさんもリィンさん達と一緒に襲撃した猟兵の人達と戦って撃退してくれたんです。後でリィンさん達やアルティナさんに話に聞いたら、アルティナさんもリィンさん達の仲間になったとの事です。」

「なっ!?それじゃあ”黒兎(ブラックラビット)”までメンフィル軍――――――リィン達と一緒にいるのか!?」

「”黒の工房”のエージェントの一人である彼女が何故リィン達の仲間に…………」

「やれやれ…………アルスター襲撃の”真実”を知る為に来たのに、次から次へと新たなる謎ばかりが増えていくね。」

ティーリアの口から出た驚愕の事実に仲間達が血相を変えている中マキアスは驚きの声を上げ、ラウラは真剣な表情で呟き、アンゼリカは疲れた表情で溜息を吐いた。

 

「…………二人とも、エステル達は今どうしているか、知らないかしら?できればあの娘達から色々と詳しい事情を聞きたいんだけど…………」

「エステルさん達は故郷のリベールに戻って確認しなければならない事があると言っていましたから、多分今頃はリベールなんじゃないかと…………」

「運悪くエステル君達とは入れ違いになったようだな…………」

「そのようだね…………フム、ロイド君達――――――”特務支援課”ならば何か知っているかもしれないが、彼らの拠点は帝都クロスベルだから、こちらから彼らを訊ねる訳にもいかないしね…………そういえば、ここを訪れた時から気になっていたが、メンフィル帝国軍がこの場所を護っているのはもしかしてエステル君達の手配によるものかい?」

サラの質問に答えたカイの話を聞いたミュラーは複雑そうな表情をし、オリヴァルト皇子は疲れた表情で呟いた後”太陽の砦”の出入口を守っていたり、砦周辺を守っている様子のメンフィル兵達に視線を向けた後カイ達に訊ねた。

「はい、エステルさん達からも、自分達の代わりに後でメンフィル帝国の兵士達をここで過ごす事になる僕達の護衛に向かわせる手配をするって言っていましたから、多分そうだと思います。」

「そうか…………色々と教えてくれてありがとう。町長にも後で事情を聞きに行くことを伝えてもらえないかな?」

「はい、お安い御用です!それじゃあ僕達は失礼します。行こう、ティーリア。」

「うん。えっと………調査、頑張ってください!」

そしてカイとティーリアはアリサ達から離れていった。

 

「殿下、先程の二人はカシウス卿のご息女――――――エステル殿達がメンフィル帝国軍にアルスターの民達の護衛を手配するような事を口にしていましたが、メンフィル帝国は幾ら爵位を与えたとはいえ、遊撃士のエステル殿達の要請に応えて”軍”を動かす程エステル殿達の存在を重視しているのでしょうか?」

「…………実はメンフィル帝国から爵位を貰っているエステル君とミント君には”名目上”はそれぞれを護る為のメンフィル帝国兵によって結成されている親衛隊が存在しているとの事なんだ。だから彼女達はいざとなったら、自分達を護る為に存在している数百人規模のメンフィル兵達への指揮権が存在しているから、アルスターの民達を守ってくれているメンフィル兵達は二人の指示によるものだと思うよ。」

「ハアッ!?あの二人がメンフィル帝国から貴族の爵位をもらっている話は知っていましたけど、メンフィル軍の指揮権まで貰っていたんですか!?」

「しかもエレボニアよりも精強なメンフィル帝国軍を数百人規模も動かせるんだから、冗談抜きで”戦争”に介入できるじゃん。」

アルゼイド子爵の質問に答えたオリヴァルト皇子の驚愕の答えに仲間達と共に驚いたサラは信じられない表情で声を上げ、フィーは真剣な表情で呟いた。

「ハハ、遊撃士である事を誇りにしている彼女達が戦争に介入する為にメンフィル軍を動かすような事は決してないよ。――――――それよりも手分けして”アルスター襲撃”の情報収集を始めようか。」

フィーの言葉に苦笑しながら否定したオリヴァルト皇子が提案しかけたその時

「――――――それなら俺達の話を聞いた方が色々と手間が省けると思うぞ?」

男の声がオリヴァルト皇子達の背後から聞こえ、オリヴァルト皇子達が振り向くと背後にクロスベル帝国軍の兵士達を控えさせたヴァイスがリセル、マルギレッタ、リ・アネスと共にオリヴァルト皇子達に近づき、オリヴァルト皇子達と対峙した――――――

 

 

今回の話の最後のヴァイス達登場のBGMは魔導攻殻の”志を胸にして”だと思ってください♪


 
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